おもちゃは日本人のプライド!動く「北原照久コレクション立体図鑑」の魅力を聞く【インタビュー】


- デジタル時代に「ブリキのおもちゃ」の魅力を伝えていく北原照久氏 -

※このインタビューは2011年2月に行わたものです。

日本のみならず海外においても有名な、北原照久氏のブリキのおもちゃのコレクションを収録したiPadアプリ”北原照久コレクション立体図鑑”が昨年リリースされました。
このアプリに収録されているブリキのおもちゃは、今見ても新しさを感じる不思議な魅力がある。

今回は、TVやラジオ、講演など多忙な北原氏に時間をいただき、ブリキのおもちゃの魅力と、”北原照久コレクション立体図鑑”の今後についてうかがった。

ブリキのおもちゃの魅力

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北原氏は、ブリキのおもちゃの魅力を「子供の頃遊んだ懐かしさ」と語る。
「子供の時は、ロボットであったり、車であったり飛行機であったり、おもちゃを買ってもらってそれで嬉しい、楽しいと思っていた。それから時が経ち、おもちゃに飽きて違う事に興味を持つ様になった。」
成長と共に、おもちゃから離れ、やがてその距離感がおもちゃとの出会いを強く印象づけるきっかけとなったようだ。
「二十歳になって時計、真空管のラジオ、広告の古いポスター、缶の引札、マッチのラベルなどをコレクションし始め、たまたまインテリア雑誌でおもちゃが紹介されていたのを見て”おしゃれだよね”と思ったのがおもちゃをコレクションするきっかけだった」
北原氏は、こうして古くから営んでいるおもちゃ屋、骨董市などを巡っておもちゃを集め始めたという。

コレクションしていくうちに、Maid in Japanではなく、Made in Occupied Japanと明記されている物に出会う。これが何かと調べてみると占領下の日本製品ということを知る。おもちゃとその時代を繋ぐストーリー出会ったことで、さらにおもちゃの収集に拍車がかかったという。


おもちゃは時代のデザイン

続いて、今回リリースしたiPadアプリ「北原照久コレクション立体図鑑」についてお話をうかがってみた。
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「デザイナー、イラストレーター、カメラマンがなぜブリキのおもちゃ、古いおもちゃを好きなのか、それは今見てもデザインが古く感じず、逆に新しいと感じるからなんだと思う。北原照久コレクション立体図鑑に収録されているおもちゃは、色々な角度、細かい部分的なプリント、全体的な形を見ることができ、デザインの勉強や、イラストの勉強にもなるだろう。更に、博物館などでは見ることができない裏側など、前後左右上下、そして拡大して見ることができる点が画期的だ。」
資料的な価値は勿論、そのデザインを学ぶ教材的な面があると言うお話をうかがい、「北原照久コレクション立体図鑑」でインスピレーションを受ける若いデザイナーの登場が楽しみになると同時に、もっとこのすばらしさを伝えていかなければならないと思うのであった。

car
収録されているコレクションの中に「二人乗り車」がある、北原氏はこのおもちゃについてこう語ってくれた。
「運転手とその隣には地図をもったナビゲーターが乗っている。そのナビゲーターが持っている地図を拡大すると、日本の大きさ、樺太など今の地図との違いも楽しめる。」
なるほど、おもちゃはその時代のデザインであると共に、こうして時代を読むことで、もっとおもちゃを楽しめるというヒントを頂けた。



おもちゃは日本人のプライドの証

最後に、今後の「北原照久コレクション立体図鑑」についてうかがった。
「iPadの北原照久コレクション立体図鑑は、DVDと違って、どこにでも持ち出せて、どこでも見れる点が素晴らしい。写真を収録した本は出ているが、本は静止画の世界、おもちゃを動かすことができないので、おもちゃの動きを見せたい。」とiPadならではの物を作りたいと語る北原氏。
更に続けてこう語る。
「今後は1930年以降のおもちゃや、Occupied Japan、車、飛行機、船、汽車、キャラクタージャンル別、年代別で見せたり、動きの面白い物を見せたりしていきたい」
そして本質として伝えていきたいことがあると語ってくれた。
「日本人の作った手業の良さを伝えたい。」
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現タカラトミーの創業者富山栄市郎氏が手がけたブリキのおもちゃを手に取り、このおもちゃにはMaid in Japanでは無くMaid in E.T.co.と書いてある、
「E.T.co.は栄市郎 富山 カンパニーの頭文字。Maid in Japanでも無く、Maid in Tokyoでも無く、富山栄市郎氏個人の名前が書いてある。自分の名前を入れたのは、職人のプライド。かつて日本人は自分の名前を入れるだけの、努力とプライド・誇りがあったという事を伝えて行きたい。」
努力、プライドがあるからこそ色褪せず、いつまでも人の心を打ち続ける製品となる、大量生産の時代に忘れてしまった大事な事がそこに刻まれていた。

「デジタルが進めば進むほど、アナログ的なものに郷愁を覚えたり関心を持ったりと、人間は無い物ねだりだ。北原照久コレクション立体図鑑は、デジタルだけど登場する物がアナログなので、若い人たちが面白い、おしゃれと感じてくれたりするのではないだろうか。若い世代とおもちゃを懐かしむ世代のコミュニケーションツールとして興味を持ってくれたら嬉しい。」と語る。


最後に

北原氏は、インタビュー中「思い描いた夢は全部実現している」、「目標は大きく」と語っていた。小さな目標で超える超えられないと言う壁を作るのではなく、もっと突拍子も無いほどの大きな夢や目標を持つことが大事だと語ってくれた。
「夢は一人では実現できない、誰かの力を借りないとできない。だから自分の夢を熱く情熱的に語らないと夢は実現できない。」
更に、「念と言う字は、”今の心”と書く、今の瞬間瞬間を大切にしていかないとだめだ。明日やります、来週やりますはだめ、今からやらないといけない。」

休みが無く、多忙な日々をおくる北原氏は、今もなお夢を持ち続けそしてそれを実現している。そのバイタリティーには、ただただ驚くばかりだ。
今回のインタビューでブリキのおもちゃの魅力を教わることができた事はもちろんだが、北原氏の生き方に魅了された。こうして素晴らしい時間を頂いたことに感謝したい。

00■北原照久プロフィール

1948年東京生まれ。
ブリキのおもちゃコレクターの第一人者として世界的に知られている。
大学時代にスキー留学したヨーロッパで、ものを大切にする人たちの文化に触れ、古い時計や生活骨董、ポスター等の収集を始める。
その後、知り合いのデザイナーの家で、インテリアとして飾られていたブリキのおもちゃに出会い、興味を持ち収集を始める。地方の玩具店などに眠っていたブリキのおもちゃを精力的に収集し、マスコミにも知られるようになる。
そして、イベントがきっかけで、「多くの人にコレクションを見て楽しんでもらいたい」という思いで、1986年4月、横浜山手に「ブリキのおもちゃ博物館」を開館。
平成15年11月より6年間、フロリダディズニーワールドにて
「Tin Toy Stories Made in Japan」のイベントを開催。
平成18年4月より「横浜人形の家」プロデューサーに就任。
現在、テレビ東京「開運!なんでも鑑定団」に鑑定士として出演、また、ラジオ、CM、各地での講演会等でも活躍中。
第24回「2007年ベストジーニスト」受賞
2007年度「横浜文化賞」受賞

株式会社トーイズ代表取締役
横浜ブリキのおもちゃ博物館館長
平成20年・21年度よこはま教師塾塾長 

主な著書
「横浜ゴールドラッシュ」一季出版
「夢はかなう きっとかなう」一季出版
「勉強がキライな子どもたちへ 勉強がキライだった大人たちへ」ネコ・パブリッシング
「珠玉の日本語・辞世の句」PHP研究所
「昭和アンソロジー」ネコ・パブリッシング
「夢の実現 ツキの10カ条」トイズプランニング
「ちょっといい漢字」評言社
「20世紀広告博覧会 PART1・2」グラフィック社
「出会い」フーガブックス
「みんなおもちゃが好きだった」扶桑社

記事執筆:mi2_303


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