【編集部的映画批評】本格的なパフォーマンスを約束! 新たな聖歌隊が感動を呼ぶ


 MOVIE ENTERの新人編集部員であるマサキが、ビビビ! ときた映画を紹介します。今回は、4月28日より公開となる映画『ジョイフル♪ノイズ』。『天使にラブ・ソングを』から20年、実際に歌手として活躍するキャストが勢揃いし、本格的なパフォーマンスを披露します。

 主演を務めるクイーン・ラティファは、映画『シカゴ』(2002年)でアカデミー賞、英国アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、それぞれ助演女優賞にノミネート。その後、『ヘアスプレー』(2007年)に出演するなど女優として活躍していますが、1994年にアルバム『ブラック・レイン』でグラミー賞を受賞している歌手でもあります。

『ジョイフル♪ノイズ』

 不況により落ち込んでいたジョージア州の小さな町パカショーの人々の唯一の楽しみは、町の教会の聖歌隊が、全米選りすぐりの聖歌隊が競う“ジョイフル・ノイズ”で優勝することだった。しかし、美しいハーモニーで知られるその聖歌隊も、中心的な女性シンガー二人の対立により分裂の危機に陥る。新しく指導者に選ばれたヴァイ・ローズ・ヒルは、伝統的な正統派のゴスペル・スタイルに頑固なまでにこだわっていた。それに対し、極めて先進的なG.G.スパロウは、そんなのはもう時代遅れだと主張する。そこへ、G.G.の孫ランディが現れたことで二人の溝はさらに深まっていくことに。果たして、バラバラになってしまった聖歌隊は“ジョイフル・ノイズ”で優勝することはできるのだろうか。

ゴスペルからポップス、R&Bまで

 本作の1番の見どころは、聖歌隊のパフォーマンス。実力があり、地区大会で優勝するものの、いつも決勝大会で優勝を逃してしまう彼らの原因は、伝統的なスタイルにこだわっていることでした。それでも、冒頭で彼らが歌うのは、マイケル・ジャクソン「Man In The Mirror」です。私たちがイメージしている聖歌隊は、もう古いのかもしれませんね。ここでメインボーカルを務めたのがヴァイの娘オリビア(キキ・パーマー)。彼女の歌声に感動したランディは、聖歌隊に参加。アッシャー「Yeah! (feat. Lil Jon & Ludacris)」、クリス・ブラウン「Forever」、スティービー・ワンダー「Signed Sealed Delivered」をミックスさせ、聖歌をアレンジさせ、幅広いジャンルのアーティストの音楽を融合させます。これらの音楽は、『天使にラブ・ソングを2』やホイットニー・ヒューストン主演の『天使の贈りもの』、『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』などを手掛けたマーヴィン・ウォーレンが監修しており、最高のパフォーマンスを約束してくれます。

散りばめられた“笑い”に注目

 聖歌隊がメインの物語ですが、その中に散りばめられた“笑い”を見逃してはいけません。オリビアとランディの距離が縮まっていく中で、聖歌隊ではアーラとスーが結ばれます。しかし、二人に突然の悲しい別れが訪れてしまうのです。なぜ別れてしまったのか。悲しむアーラの理由には、思わず笑ってしまいます。そして、もうひとつ、笑えるポイントが、ヴァイとG.G.がヴァイの職場で喧嘩をするシーン。「え? そんなこと言っちゃっていいの?」と心配になるほど、ヴァイはG.G.の容姿について突っ込みます。G.G.に対してというよりも、ドリー・パートン自身に言っているとも取れる悪口を連発。このようにストーリーの中に“笑い”を散りばめることで、音楽以外にも楽しめ、飽きずに本作を楽しむことができます。

変わったのは聖歌隊だけじゃない

 ランディの参加により、みるみる変わっていく聖歌隊。それと同時に、ヴァイの息子ウォルターもまた変わっていきます。彼は、アスペルガー症候群という社会性、興味、コミュニケーションについて特異性が認められる広汎性発達障害を患わっています。常に真っ黒なサングラスをしている姿は、まるでビヨンセの夫Jay-Zのよう。そんなウォルターのピアノの才能を引き出したのが、ランディでした。ウォルターの姉オリビアとの距離を縮めるために、ピアノを教えようとしていたのかと思いきや……。ランディの音楽に対する気持ちがよく表れるシーンでもあります。ピアノの才能を開花させたウォルターは聖歌隊で演奏することになります。そんな息子の姿に、変化を避けてきたヴァイも次第に変わっていくのです。

 ホイットニー・ヒューストン「I will always love you」は、ホイットニーが『ボディ・ガード』で歌っていたことで有名ですが、この曲のオリジナルを作詞、作曲、歌っていたのがG.G.演じるドリー・パートンです。彼女は、ゴスペル・ナンバーの「Not Enough」「He's Everything」、彼女の実際の夫に捧げたバラード「From Here to the Moon and Back」の3曲を提供しています。第一線で活躍している歌手による本格的な歌は、感動すること間違いなし! 本作を観終わったら、つい口ずさみたくなるでしょう。

映画『ジョイフル♪ノイズ』は、4月28日(土)より全国公開。

映画はビビビ! のマサキの所見評価

音楽っていいなぁ度:★★★★

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