したいコトを、できるコトに!新型ゲーム機「Xbox One S」の発表も行われた日本マイクロソフトの年末商戦戦略発表会「Windows Innovation day」を写真と動画で紹介【レポート】
日本マイクロソフトは10日、年末商戦を見据えた「Windows 10」搭載デバイスを紹介する記者発表会「Windows Innovation day」を都内にて開催しました。発表会では国内外のハードウェアメーカー14社やソフトウェアソリューションを展開する企業などが多数登壇し、Windowsの具体的なビジネス活用や同社の新型ゲーム機「Xbox One S」を用いたプレイデモなどが紹介されました。
2015年7月末に登場したWindows 10は導入前の強引なアップデート予約への批判やその後のアップデートトラブルなどが若干足を引っ張ったものの、可及的な修正アップデートや累積した問題点をまとめて改善した大型アップデート「Anniversary Update」などを経て、ようやく安定したプラットフォームOSとして市場に認知されるようになってきた雰囲気があります。
今回はそういった「ビジネスツールとしてのWindows 10」から「より身近なプラットフォームとしてのWindows 10」を前面に押し出した発表会の内容から、ソフトウェアソリューションやビジネス展開の方向性について語った点について写真とともに解説したいと思います。
■したいコトを、できるコトに。すべての人をクリエイターにするOSへ
「クリエイターとは、それを職業とするプロのみをターゲットとした言葉ではありません」。発表会冒頭に登壇し、そう切り出したのは日本マイクロソフト社長の平野拓也氏。キーワードとして「したいコトを、できるコトに」を掲げてWindowsがこれからサポートすべき方向性について語り、ビジネスの世界だけではなく一般の人々にもWindows PCを使ってもらいたいという熱意を見せていました。
実際、Windowsというと日本ではビジネス用OSというイメージが根強く、過去20年以上も続くWindows OSの販売とその圧倒的なPC向けOSとしてのシェアの割には一般家庭での利用という点でいまだに浸透していないジレンマがあります。
特にここ数年はスマホやタブレットの人気に押され、モバイル市場におけるシェアの縮小に留まらず「デジタルネイティブ」と呼ばれる10代を中心に「PCよりもタブレットのほうが使いやすい」や「PCは使ったことがない」とまで言われるほどにPCという存在そのものが一般層の生活から切り離されつつあります。
そのような現状に対し、日本マイクロソフトが打ち出してきたのが年末商戦に向けた「My ヒーロー PC」キャンペーンです。Windows 10搭載PCを活用することで写真や料理、音楽といった趣味や生活の分野においてクラウドサービスやSNSを簡単に利用する方法などを具体的なデモンストレーションとともに紹介し、全国27店舗で展開しているWindows エリアにおいても同様の施策を行うとしています。
デモンストレーションの様子は以下の動画からもご覧いただけます。
【「Windows Innovation Day」デモンストレーション】
動画リンク:https://youtu.be/Qs_-sNyeERQ
■日本マイクロソフトが掲げる「3つの柱」
プレゼンの多くの時間を割いて紹介していたのが、「クリエイティブ(ペンコンピューティング)」、「ゲーム/エンターテイメント」、「セキュリティー」の3つのキーワードに関するゲスト登壇です。それぞれのキーワードは日本マイクロソフトが年末商戦に向けて掲げた重要なカテゴリーとなっています。
「クリエイティブ(ペンコンピューティング)」では画像投稿サイト「pixiv(ピクシブ)」執行役員の伊藤浩樹氏やアニメーション監督の神山健治氏が登壇。イラストアプリ「pixiv Sketch(ピクシブスケッチ)」を用いたイラスト制作やWindows 10搭載 2-in-1 PCを用いたアニメーション制作現場の現状などを語り、Windows 10がクリエイターにどのような環境を提供しているのかを解説しました。
「ゲーム/エンターテイメント」では兼ねてより噂が上がっていたコンソールゲーム機「Xbox One」の上位モデル「Xbox One S」を日本国内向けにも正式に発表。
本体体積を40%縮小しスリム化。処理性能も向上し4K出力やHDR映像出力に対応したほか、動画再生でも4K動画を記録したUltra HD Blu-Rayの再生に対応するなど、次世代コンテンツを見据えた性能強化が施されています。発売日は11月24日、参考価格は34,980円(税抜)を予定しています。
壇上にはロールプレイングゲーム「FINAL FANTASY XV(ファイナルファンタジー15)」(以下FF15)のプロデューサーを務めるスクウェア・エニックス・ホールディングス執行役員の橋本真司氏が登壇。FF15のプレイアブルデモを実況しつつXbox One Sの性能の高さをアピールしていました。
またWindows 10においてもWindows ストアよりSNKがかつてNEOGEOで提供していたゲームを復刻させた「アケアカNEOGEO」の展開が決定。カプコンもサバイバルホラーゲーム「バイオハザード」の新作「BIOHAZARD 7 resident evil」をWindows 10向けに発表するなど、Windows 10搭載PCがゲームコンソールとしても優秀である点をアピールしていました。
■生体認証をオンライン決済のスタンダードに
3つ目の柱となる「セキュリティー」ではヤフージャパンのIDソリューション本部本部長/ユニットマネージャーの森健氏とIDログインサービスマネージャーの伊藤雄哉氏が登壇。同社サイトへ月間1億5000万回ものログインが行われている点を挙げ、「1人あたり平均月3回以上もログイン試行している計算。そのログインに掛かるストレスを軽減しより高いセキュリティーを得られる」として、Windows 10標準の「Windows Hello」を用いた顔認証や指紋認証といった「生体認証」システムを導入すると発表しました。
これまでも生体認証によるセキュリティーシステムはPCやスマホなどで実用化されすでに端末単体のロック解除やログインなどでは普及しつつありますが、オンラインでの決済システムやウェブサービスのログインキーとしての利用はプロトコルの標準化作業の遅れなどからなかなか普及段階に至りませんでした(AppleのiPhoneシリーズなどは端末とOS、そこで利用されるエコシステムがすべて自社内で完結しているため早くから決済システムにも生体認証を導入できていた)。
ヤフージャパンはFIDO Alianceによる生体認証プロトコルの標準化に参画しこの課題を解消。W3Cによるブラウザでのウェブサービス認証の仕様策定とともに実用化に動き出しました。
イベント後半では年末商戦に向けて発表されたWindows 10搭載PCが紹介され、壇上にはASUS JAPAN、NECパーソナルコンピュータ、NECレノボ・ジャパン、エプソンダイレクト、サードウェーブデジノス、デル、東芝、日本エイサー、日本HP、VAIO、パナソニック、ファーウェイ・ジャパン、富士通、マウスコンピュータのPCメーカー14社がゲストとして招待されました。
■Windows 10は飽くまでも「道具」。それを使う人々を支えるためのツール
発表会ではこれまでの「Windows=ビジネスOS」といった印象が薄らぎ、カジュアルさや簡便さを強く押し出してWindows 10というOSがよりクリエイティブで知的な活動に利用できる点をアピールしてきたと感じました。
プレゼン冒頭で平野氏はマイクロソフト最高経営責任者(CEO)であるサティア・ナデラ氏の言葉を引用して「テクノロジーは人の手の中にある道具であり私達の発明の才能と創造性を拡大させるものである。しかし新しいコンピューティング環境、ユーザーの新たな体験というものはテクノロジーだけで創られるものではない。クリエイトする人々自身が現実のものにできるかどうか、それに掛かっている」と述べ、クリエイターの想いや才能をどれだけ引き出せるかという部分を強く主張し、そこにWindows 10というOSがどう役割を持つのかという部分について、今回の発表会では具体例を示してきたように思われます。
一方で「Windows エリア」といった、よりライトなカジュアルユースを取り込むための販売戦略や店頭施策もアピールし、カメラの画像を付属アプリで編集しクラウドストレージにバックアップするといったようなごく基本的なPC活用方法から丁寧にレクチャーするなど、PCを十分に利用していない潜在顧客の発掘に力を入れている点も大きなポイントです。
教育に関する展示をしているコーナーでは説明員が「子供のPC離れが加速している今、どれだけ簡単にPCに接してもらうのかも大きな課題だ」と語り、その入口として個人認証やログイン作業を簡易化し高い安全性を確保できるWindows Helloが担う役割は決して小さくないとも説明していました。
PCという「道具」の1部品でしかなかったOSは、どこまで人々の生活や創造的な活動を支援できるのか。また支援のあり方とはどういった姿が正しいのか。日本マイクロソフトは年末商戦のみならず、遠い未来さえ見据えているように感じました。
記事執筆:あるかでぃあ
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