いよいよ日本登場か!成功が期待できるWindows Phone 7スマートフォンの実力【世界のモバイル】


Microsoftの日本法人は7月上旬に経営方針説明会を開催、Windows Phone 7の日本投入が公の場で初めて明言された。果たして日本市場でWindows Phone 7は受けいれられるのだろうか?

Microsoftのスマートフォンは、1998年に投入された通信機能を持たないPalm-size PCが最初としている。その後Pocket PC Phone Editionで携帯電話機能を搭載し、Windows Mobileと名前を変えて本格的なスマートフォン製品が続々と市場に投入されてきた。だがスマートフォンでは一度もNokiaの牙城を崩すことはなく、後発のAppleやAndroidにあっという間に抜き去られてしまっている。

そのNokiaも、現在のスマートフォン市場では苦戦を強いられているが、Windows Mobileは苦戦だけではなく市場からの撤退直前まで追い込まれてしまった。ビジネス向け端末としてオフィスアプリとの親和性や企業のプッシュメールが利用できるなどの利点があったものの、ペンを中心としたユーザーインターフェースは、iPhoneやAndroidが出てくるや一般消費者からの興味を一気に無くしてしまったのだ。

MicrosoftはそこでこれまでのWindows Mobileの流れを全て断ち切り、過去OSとの互換性を一切なくした新OSを開発、それがWindows Phone 7である。同じ「Windows」の名称を名乗っているものの、中身は全く違う新しい製品なのだ。使いやすさはこれまでのWindows Mobileとは比べ物にならないほど進化しており、「ハブ」と呼ばれるトップ画面や大きいタイル上のアイコンを並べたUIはかなり斬新である。
Windows Phoneという名称は新しいOSというイメージを与えている

だがそのWindows Phone 7も2010年の発売から年内で150万台を販売したものの、市場では完全に出遅れた状況となり、Microsoftのスマートフォン全体の販売マーケットシェアはわずか3.6%にとどまっているにすぎない(2011年第1四半期、ガートナー調査)。その後、海外市場ではNokiaと提携したことによる販売ルート拡大に大きな期待がされている。

またOSも開発コード名「Mango」と呼ばれるアップデート版が登場することで使いやすさが向上することから今後シェアは少しずつ上向いていくことが予想されている。しかし他OSのスマートフォンも当然のように機能アップや販売拡大を強化していくだろうから、Windows Phone 7の将来が明るいといえるかどうかは、現時点では全く読めない状態だ。

では日本市場での勝算はあるのだろうか?

海外市場で苦戦している今の状況を見る限り、日本への参入明言はよほど自信がなければ出来ないことだろう。

だが現状だけで判断するのは早計だ。まずWindows Phone 7は決して使いにくいスマートフォンでは無い。コピー&ペーストの対応が遅れるなど他OSより劣る部分も多かったが、OSの進化により機能アップされている。また多言語対応もMangoにより大きく広がり、販売可能な国の数も増える。SNSサービスとの融合は早くから行われており、ブラウザもIE9エンジンベースの最新版が搭載されるなど、使いやすさは確実に進歩しているのだ。
斬新なUIは使いやすい。オフィスやXboxなど同社資産との連携も強みだ

全く新しいOSの製品であることからまだまだ改善の余地が残っているという機能面もあるものの、Windows Phone 7が売れないのは各国での販売ルートが先行するiPhoneやAndroidに追いついていない、という面も大きい。だからこそ、Nokiaとの連携も世界中の通信事業者の店舗にあるNokiaの販売スペースを確保できる、という点は大きなポイントととらえられているのだ。

そのためOSが改善され販路も広げられる今年後半こそが、Microsoftにとってようやく訪れたスタートラインになるのだろう。そしてその販売先には日本市場もしっかりと含まれているのである。

その日本市場はこれまでスマートフォンが売りにくいと言われてきたものの、iPhoneが風穴を開けることに成功。さらにはこの1年で市場の構造は大きく変化している。すでに携帯電話の販売ランキングではスマートフォンが上位に入っており、しかもSamsungやHTCといった海外メーカーの製品を日本の一般消費者が普通に買うようにまでなっている。

これは海外メーカーのスマートフォンが機能やデザイン面で日本メーカーの製品を超える製品が出てきたこともあるが、通信事業者のビジネスモデルがフィーチャーフォンからスマートフォンへ中心へと大きく変化した結果が大きく影響している。

もはや通信事業者が自社でサービスや端末を開発し、それを日本のメーカーに製造してもらい販売、サービスを使う消費者から利益を得るという日本独自の収益構造は完全に過去のものとなったのだ。

このように日本のビジネスモデルが大きく変化した今の状況は、MicrosoftにとってようやくWindows Phone 7で市場に再参入する機会が訪れたとも言える。例えば各自業者が分割払いを本格的に導入したことにより、ハイエンド製品の多いWindows Phone 7端末であっても毎月の負担金は実質低く抑えられ、消費者への販売がしやすいだろう。

なによりも日本の一般消費者は毎月のように新製品が投入されるスマートフォンに大きな興味を持ち始めており、iPhoneだから、Androidだから、ではなく「フィーチャーフォンからスマートフォンへの買い替え意欲」が旺盛になっているのだ。

Windows Phone 7の日本への投入は、Microsoftのこれまでのスマートフォン戦略や現状の製品の出来からネガティブに捕らえる意見も聞かれる。だが一般消費者にとっては「購入して便利で楽しい製品」であればOSの種類などは気にならないものだ。それにiPhoneにせよAndroidにせよ、販売開始前は「日本では成功しない」という声が大多数だったことを忘れてはならない。

一方で、通信事業者が自社サービスを構築しやすいプラットフォームとしてWindows Phone 7を提供できなければ、事業者が販売に消極的になってしまう。だがMicrosoft日本法人の樋口代表執行役社長が「事業者やメーカー、コンテンツ企業とも協業を行っている」と話しており、その心配ないようだ。

スマートフォンはCPUやメモリといったスペックだけで良し悪しを語る時代は終わりになり、これから一般消費者の誰もが普通に使う製品になっていく。日本の消費者に使いやすく、また通信事業者が売りたいと思える製品を投入できればWindows Phone 7も日本で成功する可能性は十分にある。

2012年には最初の製品が日本で登場する予定で、それがどんなメーカーのどんな製品になるのか、今から楽しみである。

山根康宏
著者サイト「山根康宏WEBサイト」

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