写真こそ、我が人生!アレックス・マヨーリ氏が語る写真展「ONE JUMP!」


株式会社リコーは、都内 銀座のフォトギャラリー「RING CUBE」において、マグナム・フォト所属の写真家 Alex Majoli(アレックス・マヨーリ)氏の写真展「ONE JUMP!」を開催している。

2009年9月14日、マヨーリ氏の来日に合わせ、RING CUBEにて記者会見が行われた。当日はカンヌ映画祭で撮影された「ONE JUMP!」展の作品の撮影秘話や、展示作品を中心とした作品に対する世界観をマヨーリ氏にお話しいただいた。


■独占取材!マヨーリ氏と写真家としての人生
記者会見場の別室にて、マグナム・フォト所属の写真家 アレックス・マヨーリ氏に独占取材をさせていただいた。
マグナム・フォト所属の写真家 アレックス・マヨーリ氏

編集部:写真を撮るうえで心掛けていることは何ですか。
マヨーリ氏:良い質問です。誤解のないように答えないと。当たり前ですが、集中すること。そこでとらえる一瞬が永遠のものになります。

必ずその瞬間をとらえるときに、その中に自分が飛び込むが、すぐにその中から出てきて客観的に人に伝えられるようにしています。客観的な主観です。

編集部:深いですね。では、一般の人が良い写真を撮るためのコツを教えてください。
マヨーリ氏:良い写真というのが、まず定義が難しいですね。誠実である写真は、必ず良い写真ですし、永遠のものであると思います。逆に、誠実でない写真は短命であると思います。

たぶん、皆さんが家族の写真を机の上に飾られるときも、本当の家族が現れている写真であると思うんですね。それと同じことです。

編集部:今、一番撮りたい写真は何でしょうか。
マヨーリ氏:ブラジルの写真を始めているので、まずはそれを終わらせることです。

編集部:写真以外で、一番やってみたいことは何でしょうか。
マヨーリ氏:料理です。良い料理を作ることは、非常にメディテイションにも通じるところです。

編集部:ブラジルの写真のあとは、何かテーマを決めてますか。
マヨーリ氏:ブラジルの写真のあとは、希望なのですが、「ルワンダの虐殺」「モノクロのポートレート」「ラトビアの白い風景」の三部作の写真集を作ることです。
写真を撮ることに関しては、そのほかのことは未定です。

編集部:あなたにとって写真とは何でしょうか。
マヨーリ氏:この時点においては、私の人生です。

編集部:最後に、写真展「ONE JUMP!」に来る人にメッセージを頂戴できますか。
マヨーリ氏:非常に美しい会場となっているので、そのまま写真を見て楽しんで欲しいと思います。また、「ONE JUMP!」以外の作品も見て頂きたいです。

編集部:本日はお忙しいなか、ありがとうございました。


■北野武監督は自由な魂を持った人
記者会見は、マヨーリ氏があらかじめ作成したビデオの上映から始まった。マヨーリ氏の写真界としてのキャリアは20年以上あるので、そのすべてを紹介することはできないが、主だった作品や作風がわかるものをランダムに選んできたという。
マグナム・フォト所属の写真家 アレックス・マヨーリ氏

マヨーリ氏が写真をはじめたのは、彼が15歳のときからだ。ビデオでは、その頃の作品から報道写真家として紛争地帯をまわったときの写真「BANG BANG」までを紹介し、コンセプチュアルな作品も流された。
マヨーリ氏によると、写真家として企業や広告関係の仕事もしているが、今回は必要ないとの判断から、ビデオではあえて紹介しなかったそうだ。

現在、RING CUBEにて開催中の写真展「ONE JUMP!」は、カンヌ映画祭の会場の一部に小さなスタジオを設置し、映画祭を2回に渡って撮影を行った。約250人を撮影したが、その中から55人の写真を選定し、RING CUBEのギャラリーに展示したという。
初回はカンヌ映画祭のお膝元となるパリで展示したが、そのときはパリでしか知られていない人も展示写真に入れていたが、今回は日本で展示するにあたり、一部の写真を差し替えたとのこと。

「『ONE JUMP!』で撮影した人たちの中で、とくに印象的だった人は?」との記者からの質問に対し、マヨーリ氏は、
「ひとりはシドニー・ポラック監督で、本当に穏やかな老紳士でした。レッドカーペットに行くはずでしたが、自分の仮設スタジオに来てくれました。

もうひとりはヴィム・ヴェンダース氏です。同氏はフィリップ・ハルスマン氏の『Jump!』をご存じであり、空港に向かっている途中でしたが、スーツケースを持って撮影に駆けつけてくれました。」と、2人の人物をあげた。

全体的な印象についてマヨーリ氏は、「私のキャリアの中でのひとつの作品の通過点になるのではないかと思います。完成したのは2年前で、それから2年の間で多様な写真を撮っています。東京で展覧会を開いて嬉しいと同時に、少し不思議な気持ちがするのも否めません。と、現在の正直な話を打ち明けた。

一番印象に残ったジャンプについてマヨーリ氏は、「それぞれの人がそれぞれのスタイルでジャンプしてもらったので、どれがいい、どれが悪いとは言えないですが、私の好みでいえばアル・ゴア 元米国副大統領のジャンプは非常に美しかったと思います。」と語った。

また、北野武監督については、「ほかの監督と似ていて、俳優さんや女優さんに比べて、映画監督のほうがこの企画を気に入ってくれて、非常に自由に飛んでジャンプを楽しんでくれました。

俳優さんや女優さんは、ジャンプをしているときも自分自身をコントロールしてしまって、自分をつくろってしまいがちでした。
北野武監督に関しても、非常に楽しんでジャンプをしていただいて、自由な魂を持った人だとわかりました。」と、撮影時の印象を語った。


■「ONE JUMP!」の第二弾はない
ビデオの中には、いろいろなジャンルの作品があったが、マヨーリ氏によると、15歳のときに撮った作品(1986年)と、最近の作品(2003年)は非常に似ていているという。一貫性のあるものがそこにあって、それが自分のスタイルだというのだ。
「ONE JUMP!」について語る、アレックス・マヨーリ氏

最近はグルジアの紛争を撮影したが、それを見ると、モノクロの非常に伝統的な報道写真に見えるので、やはり一貫性のあるドキュメンタリー写真を撮っているという。一番興味があるのは、ニュース性のあるドキュメンタリー写真であるそうだ。

「ONE JUMP!」の全体的な感想に対してマヨーリ氏は、
「今回、彼らに飛んでもらって、如何に本当の自分を出していないかを垣間見ることができて良かったのではないかと思います。

飛んでいるときのほうが、すごく自然に見えました。飛んでいる瞬間は、セレブではなく、現実の自分に戻せたことは非常に良かったのではないかと思います。

カンヌ映画祭は、非常にきらびやかで華やかな世界なので、こういうかたちで飛んでもらったのは、非常に対照的で良かったと思います。」と、素直な感想を語った。

今回の撮影はハルスマン氏のかたちで撮影しているが、自分自身のスタイルで撮影するときは、どういうスタイルで撮るかについて記者から聞かれたマヨーリ氏は、

「有名人のポートレートを撮ることには、あまり興味がありません。ハルスマン氏がいたおかげで、自分が絶対やらなかったであろうスタイルで写真を撮ることができました。」と語り、「ONE JUMP」第二弾は、現在のところ考えていないことを明らかにした。

引き続き、「写真家は、本当にエゴが強い職業であることは重々に承知しているが、俳優さんや女優さんたちを撮って、それが写真家どころでないことがわかりました。」との裏話に、記者会見場には自然に笑いが立ちこめた。
アレックス・マヨーリ氏の写真展「ONE JUMP!」「ONE JUMP!」のジャンプ台でジャンプ!

●「ONE JUMP!」とは?
「ONE JUMP!」は、マヨーリ氏のマグナム・フォトの先輩フィリップ・ハルスマン氏(1906-1979)の名作「Jump」へのオマージュ。ハルスマン氏は、各界の著名人がジャンプする姿を撮影することで、その人の名声の背後に隠されている本当の人となりをあらわにしたいと考えていた。

「ONE JUMP!」では、カンヌ映画祭に出席した映画人が、マヨーリ氏のためにジャンプをした。アメリカ元副大統領アル・ゴア氏や、女優のモニカ・ベルッチ氏、映画監督の北野武氏など、モデルになった人物それぞれのジャンプの仕方や表情に、思いがけない一面を発見することができる。

開催期間:2009年9月2日(水)〜2009年10月4日(日)
     11:00〜20:00(最終日17:00まで)
     入場無料。火曜日休館

アレックス・マヨーリ氏のプロフィール
1971年イタリアのラベンナ生まれ。小学生の頃から写真を撮り始め、1996年から世界屈指の写真エージェンシー、マグナム・フォトに参加し、2001年には正会員になる。 マヨーリの仕事はドキュメンタリー写真、戦争報道、ポートレート写真など多岐に渡り、写真以外にも映像作品や短編映画の制作も手がけている。


RING CUBE
東京都中央区銀座5-7-2 三愛ドリームセンター(9F受付)地図
RING CUBEの連絡先: 03-3289-1521

「RING CUBE」 - 公式サイト
株式会社リコー

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