スマホを10年利用できることをめざすAlpine Linuxベースの新しいプラットフォーム「postmarketOS」が登場!まだ実用にはならないものの、こうした取り組みは増えそう



スマホを10年利用できることをめざすAlpine Linuxベースの「postmarketOS」が登場!

10年前に発売されたパソコン(PC)であっても軽量なOSをインストールさえすれば、今でも十分に利用できることをみなさんはご存じでしょうか。10年前以上前の2006年に発売されたPC向けのCPUにIntel Core2シリーズがあります。

Intel Core2シリーズであれば、むしろ今でもWindows 7を搭載して使ってるという人もいるかもしれません。そう考えると、特に普及価格帯におけるPCの性能は最近ではかなり頭打ちとなり、発売から10年経ってもいまだに十分利用できるようになっています。

では、スマートフォン(スマホ)はどうでしょうか?ここ数年で機種変更のサイクルは2年以上と徐々に長くなっていますが、さすがにまだ10年というスパンで使えるようにはなっていません。そういった中で、今年5月にスマホを10年使えることを目的とした新しいプラットフォーム「postmarketOS(pmOS)」が登場しました。


スマホはPCと比べると登場してから日も浅いため、つい最近までは進化の途中にあり、そのため、快適に利用できる期間が非常に短く、おおよそ2〜3年が限度となっていました。

もちろん、一部機種ではそれ以上の期間利用できている製品もありますし、使い方次第ではありますが、OSのサポート期間やセキュリティーの問題などを考えてもPCと比べて製品寿命が短いと言えるでしょう。

また一方で、スマホの価格がまだ安ければ、この現状について我慢できるのですが、今ではハイエンドモデルなら10万円を超える製品も出てきており、中価格帯PCとほとんど価格差がありません。安価なモデルを頻繁に買い換えるという手もありますが、買い替えごとに環境設定をしたりするのも煩わしいという人もいることでしょう。

さらに10万円を超えるようなハイエンドスマホでも2〜3年経てば、新しいサービスなども出てきて快適に利用できるとは言いがたい状況に陥る可能性もあります。


PC向けのOSの例として、Windows 7のサポート期間を見てみると、延長サポートを含めて約8年間も保証されています。さらにPCであれば自分でOSを好きにインストールすることができるため、さらにOSのサポート期間は延びます。

それに比べてスマホだと、Androidの中でもサポート期間が長い「Nexus」シリーズや「Pixel」シリーズ、「Android One」シリーズでも最長2年となっています。一方、iOSでは特に個別の製品に対するOSのサポート期間は決まっていませんが、2012年に発売された「iPhone 5」や2013年に発売された「iPhone 5c」は今秋リリース予定の次期OSバージョン「iOS 11」は対応しない予定で、この場合5〜6年となります。


そういった現状を打ち破るために、どうやらpostmarketOSが開発されることになったようで、今年5月にその内容が発表されました。postmarketOSはollieparanoid(Oliver Smith)氏が中心となって開発し、超軽量Linuxディストリビューション「Alpine Linux」をベースとなっています。

さらに大きな特長として、デバイス固有のパッケージは「deviceinfo」のみで、その他のパッケージは全デバイスで共有している点にあります。こうすることで、デバイスごとの特別な作業が不要となり、開発しやすくしているようです。


ただし、現在のpostmarketOSはまだまだ常用するには遠く及ばないOSで、開発発展途上にあります。5月の初リリース時には「Galaxy SII」と「Nexus 4」にて限定的な動作が可能となっていましたが、現在(2017年8月23日時点)では動作するデバイスは全部で34機種(リストはこちら)で、そのうち公式で動作を保証しているデバイスが17機種(うち2つはQEMUエミュレーター)、また現在対応途中のデバイス17機種でも精力的に開発が行われています。

さらに対応途中のデバイスにはなんとiPod touch(第1世代)が挙げられており、Androidだけではなく、iOS搭載製品にも対応させようという意力を感じることができます。

なお、公式で動作を保証していると記載があるものの、機種によって使える機能が違っており、現在は「Nokia N900」と「Xperia Z2 Tablet」の対応機能が多く、特にXperia Z2 Tabletでは3Dアクセラレーション機能にも対応しています。postmarketOSで実装されている内容は下記の通り。

・暗号化されたシステム領域(アクセスする際のパスワードはUSB Telnet経由での入力のみ対応)
・SDカードまたは内部ストレージにインストール可能
・ウィンドウプロトコル「Weston」でタッチスクリーンをサポート
・独自の3Dアクセラレーションが無くてもWestonがきちんと動く
・USB経由のSSH接続
・LineageOSソースからコンパイルされたカーネルを実装
・パッケージマネージャーベースのインストールに対応

postmarketOSの公式ページ「postmarketOS: Aiming for a 10 year life-cycle for smartphones ♻」には実際にGalaxy SIIにインストールして、動作させている様子を撮影した写真が掲載されています。




さらにpostmarketOS上で「Weston」が実際に動作している様子やWebブラウザー「Firefox」が起動している様子、ターミナルを起動している様子も確認できます。


postmarketOSがめざすゴールとしては、他の古い製品でも動作させること、電話アプリを実装すること、セキュリティーレベルの向上の3つを掲げています。他の古い製品で動作させることについては、目標に掲げているものの、すでにAndroidやLineageOSカーネルによって無線LAN(Wi-Fi)やオーディオと行ったドライバーが提供されているため、少し構成を行えばすぐに利用できるようになると考えている様子です。

次に電話アプリについてですが、Linuxベースの電話アプリの実装をめざしており、Plasma Mobileプロジェクトや廃止されたUbuntu Touchのフォークプロジェクト、ubportsを利用するか、独自でAndroidのような電話アプリを開発する予定だとされています。

最後にセキュリティーレベルの向上についても開発中も常に気を遣って構築しているようですが、ウィンドウマネージャーであるWestonは今のところroot権限で実行されているようですので、目下の目標はOSの特権分離を実現させることが必要となっています。

確かにスマホの製品寿命は現状ではPCと比べると非常に短いものですが、それを解決するために独自でOSを作るといった行動力には脱帽する限りです。筆者自身もpostmarketOSについて知ったときは「冗談みたいな話だな……」と思っていましたが、postmarketOSの紹介記事について確認していくうちに本気で取り組んでいるプロジェクトなんだと感じました。

極めつけには、WestonがGalaxy SIIで動作しているところを見て感動すら覚えるレベルでした。まだまだ開発途上段階のため、プロジェクトのゴールには時間を要するかとは思いますが、影ながら応援してみたいと思います。

記事執筆:YUKITO KATO


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