「成長への期待」と「警戒」日本の中堅企業が描く2020年とは




アメリカン・エキスプレス・インターナショナルが日本の中堅企業(年間売上規模が約 5 億円以上 250 億円未満)を対象とする「中堅企業調査レポート 2016」を発表した。調査の結果、中堅企業にとって、東京オリンピック・パラリンピックの開催年である 2020 年への見通しは、期待と警戒の間で大きな幅があることが分かった。

■「改善」の実感は少数派
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現在に至る景況感について、「以前より改善」(35%)との回答は「以前より悪化」(24%)より多い。その一方で、「以前と変わらない」(41%)が最も多く、景気改善の実感が強くはないことがうかがえる。今後 3-5 年間の見通しについても「現状と変わらない」(44%)、「現状より悪化」(29%)となり、楽観視していないことが分かった。つまり、多くの中堅企業は経営環境を厳しく捉えていることが分かる。

■2020年に向け、新たな戦略の必要性
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東京オリンピック・パラリンピックの開催年である 2020 年。開催までの間、さまざまな事業が見込まれるが中堅企業の 2020 年への見通しは、成長への期待と警戒が入り混じっていることが分かる。オリンピック・パラリンピックの影響は「非常にある・多少ある」(40%)と半数に満たなかったものの、2020 年に向けて具体的に「事業戦略・事業計画がある」(60%)と回答した企業は半数以上となり、外部要因と自社の状況を踏まえて戦略を立てている様子がうかがえる。

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2020 年への優先度の高い取り組みとしては、「新規顧客の獲得」(43%)、「スタッフの能力向上、新しい技術のある人材確保」(40%)、「費用削減」(37%)が多く挙げられた。さらに個別インタビューでは、「インターネットにはない付加価値のある商品展開で差別化を図る」(サービス業)や、「中国への発注単価の値上がりにより、ベトナムを中心に東南アジアを開拓中」(ソフトウェア業)など、新たなビジネスチャンスを模索する様子が見られた。

■海外展開への意識の高まり
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中堅企業にとってグローバル経済や中国経済の動向がビジネスに影響を与える度合いは、ほぼ半数という結果になった。「国内だけでは需要が少なく、もう限界。中国には今は怖くて出られないが、チャンスがあったらすぐに展開したい」(商社)など、中国の巨大マーケットに魅力を感じつつも固有の難しさを考慮して、チャンスを待って準備を進めているといった慎重な声も聞かれた。

■次世代継承への対応は後手に回る
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53%の企業が、現在、事業継承のための具体的な計画がないと回答し、多くの中堅企業にとって「継承プラン」はまだ一般的ではないことが分かった。これは、オーナー社長の親族継承が決まっている場合や、規模の小ささから新規人材確保が難しいこと、また、子会社・グループ会社の場合は親会社からの天下りがあるなど、継承を計画することが困難なそれぞれの事情があり、必要性は感じているが後手に回っているケースが多く見受けられた。新たな取り組みの実現を含めた事業継承のため、「次のリーダー」の人材確保と育成は、多くの中堅企業にとっての課題であるといえる。

今回の調査結果について、アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc. 法人事業部門-日本 副社長/ジェネラル・マネージャーの須藤靖洋氏は、「調査結果から、中堅企業の 2020 年に向けた事業戦略や優先事項など、今後 4 年間の取り組みが明らかになりました。『2020 年への見通しに期待と警戒が交錯』、 『縮小する国内市場による、海外展開の必要性』、『次世代継承への対応の難しさ』という中堅企業が直面している 3 つの状況をふまえて、今後経営陣は、自社のさらなるビジネス成長のための将来を見据えた戦略の立案・遂行が求められています」と話した。

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