緊張高まる南シナ海 「ポスト・ウクライナ」の焦点はアジアか?【ビジネス塾】


南シナ海情勢が緊張している。

中国が南シナ海のパラセル(西沙)諸島近海で石油掘削を始めたことに対し、同諸島の領有を中国と争うベトナムが抗議、作業を阻止しようとした。これに対し、中国船がベトナム船に体当たりし、負傷者が出た。その後、パラセル近海には両国艦船が出動し、にらみ合いが続いている。中国は作業を止めず、滑走路状の施設も建設している。

また、フィリピンはスプラトリー(南沙)諸島で中国漁船を拿捕(だほ)。理由は、中国船が「絶滅危ぐ種を積んでいた」ことで、フィリピンは乗組員を拘束している。

とくに緊張しているのが、中国とベトナムとの間だ。中国はベトナムの抗議に譲る気配はなく、逆に、対空ミサイルを搭載したフリゲート艦を配備した。ベトナム国内では反中デモが起き、日本企業も「とばっちり」を受けている。

アジアの地政学的リスクはどうなるのか。

■かつて砲火を交えた中越
両国とも「戦争がしたい」わけではないが、互いに譲る構えはない。とくに中国は、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の「自制」要求も「どこふく風」という状況だ。

パラセルをめぐっては、中国とベトナムは過去、砲火を交えたことがある。陸上でも、1970年代末に中越紛争があった。いずれも中国側が優位であった。今回もベトナムが掘削を止めようと思えば、戦争に近いことに踏み切らない限り難しいだろう。その意味で、戦争の危険性を含んで推移しそうだ。

■中国の国内不安は強い
どの国でもそうだが、国内事情が厳しいときに、外国に対して強気の態度に出る。国民の不満をそらそうというインセンティブが働くからだ。

ベトナムの抗議は当然予測できたろうに、掘削に踏み切った中国も同様だ。購買力平価の国内総生産(GDP)ではすでに世界一になったといわれるが、今年の成長率は7.5%と予想されているが、これは1990年以来もっとも低いものだ。7.5%に達しないという予測さえある。

2〜3年前まで、中国の指導部は「保八」と言い、「8%成長を守れないと雇用が維持できない」と言ってきたが、それも難しくなっているわけだ。しかも、日本とは比べものにならないほどの経済格差、民族問題なども抱えている。とくにウイグル問題はテロ事件が頻発、紛争形態が従来とは変わってきた。

■米国の出方を探る中国
編集部は、ちまたにあふれる「中国崩壊論」には与しないが、少なくても、経済成長の鈍化と国民の政府への批判が高まること、政府はそれをそらそうと強硬姿勢に出ること、これらは間違いないと思う。

ただ、尖閣諸島に対して強硬な手段をとる可能性は、当面は低いだろう。中国としてはベトナムのほかにも「敵」を増やしたくないだろうし、日本やフィリピンを相手にすれば米国の存在が直ちに問題になる(ベトナムは米国の同盟国ではない)。現在のところ、中国はベトナムを相手に、「米国の出方をうかがっている」というところか。

ウクライナをめぐる「地政学的リスク」が日本の株式市場にも影を投げかけていたが、すぐ近くのアジアもきな臭くなってきた。香港市場ではベトナム関連銘柄が下落しており、日本への影響を注視したい。

(編集部)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

■電子書籍好評発売中(AmazonよりKindle版)
あのファーストリテイリング(ユニクロ)を真っ先に推奨したこ
とで知られる“銘柄発掘のカリスマ”小沼正則の投資・ビジネ
ス塾が電子書籍になりました。第一弾は、最新情報と投資へ
のノウハウを読みやすくまとめ、初心者にもわかりやすくな
っています。スマホやタブレットでいつでも手軽に読めます。
まもなく第二弾、第三弾が登場しますのでご期待ください。

■ITライフハック
■ITライフハック Twitter
■ITライフハック Facebook

ビジネス塾に関連した記事を読む
・業績上方修正した割安銘柄を探す 注目銘柄を斬る
・米株式は「第2のITバブル崩壊」? 先行き不安はどうなる
・日米首脳会談 TPPで合意できなかったことの意味
・世界中で注目される日本の食品メーカー 注目銘柄を斬る
・メーデーと安倍首相 賃上げはうまくいったのか?

共有する

関連記事

【世界のモバイル】モバイルブロードバンド天国へ!海外で進む高速サービスにみる日本との格差

日本の携帯電話は世界でも最も進んだサービスを提供しているといわれている。ところが海外に目を向けてみれば、日本にはない便利なサービスが多く存在している。特に2006年から各国で開始されている「モバイルブロードバンド」は日本に…

【ケータイラボ】内線電話にもなる!ビジネスケータイ「WX220J」

「WX220J」は、高度化通信規格「W-OAM」に対応した京セラ製の音声端末。発売時期は2007年1月25日を予定。価格はオープンプライスで、ウィルコムストアでの販売価格は、1万1,000円前後の見込み。「WX220J」は、ビジネスシーンで長期に…

【ケータイラボ】無線LAN内蔵!フルキーボード搭載ビジネスケータイ「X01NK/Nokia E61」

「X01NK/Nokia E61」は、無線LAN内蔵でフルキーボードを搭載したノキア製の法人専用ビジネスケータイ。発売時期は3月下旬以降を予定し、価格はオープンプライス。「X01NK/Nokia E61」は、ストレートタイプの本体に、無線LAN機能を内蔵…

【ケータイラボ】ビジネスケータイ「813SH / 813SH for Biz」

「813SH」と「813SH Biz」は、シャープ製のビジネスケータイ。発売時期は、「813SH」が3月中旬以降、「813SH for Biz」が3月上旬以降を予定し、価格はいずれもオープンプライス。「813SH」と「813SH for Biz」は、機密保持の観点から…

【世界のモバイル】SIMロック販売の真実 - こんなに違う海外と日本の実情

最近、日本ではSIMロックやインセンティブ販売についての議論を多く見られるようになった。総務省が「モバイルビジネス研究会」でSIMロック制限について検討をはじめるなど、携帯電話の販売方法についてユーザーに選択肢を与えようとい…