メディカル・デザインの現在、近未来、遠未来(4)【テレスコープマガジン】
医療における現場で、医師や科学者、エンジニアとともに、近年では重要な役割を担うのがデザイナーだ。医療器具の形状や色をデザインするだけではなく、その職能はテクノロジーとともに深化して、全体的なシステムを描く存在としての期待が高まっている。いくつかの事例を見ながら、これからの"医療のかたち"をデザインの世界から考察していこう。
■あえて極端な未来を描くのもデザインの使命
建築の分野に建築模型があるように、プロダクトデザインの分野にも「プロトタイプ」と呼ばれる模型が存在する。これらは「将来、このような技術が登場した際に相応しいデザイン」として生み出されるものだ。
日本でソニーやNECなどのデザイン部門で活動し、現在はロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アート(以下、RCA)で教鞭をとるアンソニー・ダン教授。彼はフィオナ・レイビー氏とのユニット「ダン&レイビー」から、遺伝子解析や万能細胞の応用といったバイオテクノロジーの発達を念頭にしたプロトタイプを数多く発表する。
アートとデザインの領域を横断して活動する彼ら(と教え子たち)の作品は、常に挑発的だ。2010年にフランスのサンテティエンヌ・デザイン・ビエンナーレで披露された「Between Reality and the Impossible(現実と不可能の狭間)」展では、テクノロジー、器具、人体の関係性を考察していた。
写真:Between Reality and the Impossible, Saint-Etienne Design Biennale, 2010.Photo by Hirokuni Kanki