人体の器官を人工のチップで再現する【サイエンスニュース】



新しい薬や治療法を開発するには、動物実験が欠かせない。実際の動物実験には時間もコストもかかるが、この開発プロセスを短縮するためのユニークなデバイスが開発されている。それは、人間の器官を再現するチップだ。

ハーバード大学のウィス研究所では、これまでに肺や腸、心臓の機能を再現するチップを開発してきた。

例えば、肺のチップでは、細い管が中央に通っているが、この管は多孔質の膜で上下に仕切られている。この管の片方には人間の毛細血管細胞、もう片方には肺細胞が配置されており、これは細胞壁を回して呼吸ガスと血液内ガスを交換する肺の仕組みを再現している。毛細血管細胞側に培養液を流すと(血液が流れることに相当)、管が膨らんだり縮んだりして、実際の肺と同様の挙動を示すのだ。チップのサイズはメモリカード程度で、透明になっているので、外部から反応を容易に観察できる。

これらのチップを使うことで、新薬や有害物質が器官に取り入れられた時にどのような影響があるのかを、動物実験なしに短時間で低コストにテストできるようになると期待されている。効果がない薬や治療法の開発を早めに中止することができるので、開発スピードが大幅に上がるわけだ。

2012年7月、ウィス研究所は米国のDARPA(国防総省国防高等研究事業局)と3700万ドルの共同契約を締結したことを発表した。この契約では、10の異なる器官を再現するチップの開発を目指す。さらに、チップを統合して、人体全体の生理的反応をより正確に模倣できる装置を開発するという。これらを実現できれば、体内で起こる複雑な生化学反応をリアルタイムに解析できるようになる。


(文/山路達也)

記事提供:テレスコープマガジン

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