【特集/JOURNEY】 刺激的で優しいアラブの国へ (5/8)
労働者の6割を占めるドバイのマジョリティ「インド系」
ドバイではよく「ローカル」という言葉を耳にするが、これはドバイ国籍を持っているアラブ人のこと。古くからこの土地に住んできた地元の人達を指す。現在のドバイにおいて「ローカル」はとても少ない。今では全人口のじつに9割が海外から働きにきているの労働者なのだ。
その中でも特に目立つのがインドからきた人達。スークを歩いていても、テキスタイルやゴールドはもちろんのことドバイの数少ない特産品であるナツメヤシを売っている人までインド人だったりするから驚かされる。なんと海外からの労働者のうち6割がインド人だというからそれも当然なのかもしれない。そこで今回はそんな彼らが暮らす街を散策してみることにした。
場所はクリークに沿って広がるデイラ地区。ゴールドスークやスパイススークから5分ほど歩くと観光客相手の店が減り、少しずつ景色が変わってくる。衣料品や雑貨、家電などを扱う店が増え、足早に歩く人たちが多くなる。メインストリートから一歩細道に入れば簡単な食事が取れるレストランやカフェ、さらにタコスやシュラスコなどのファーストフード店があり、仕事の合間に食事を取る人たちで多いに賑わっている。面白いところでは、洗いたてのデニムを軒先に吊るして乾かすクリーニング店なども、とても繁盛しているようだった。海外から仕事を求めて、単身(あるいは家族で)ドバイへ乗り込んできた逞しい人たちの街だけに、さすがに街全体から活気が感じられる。
様々な店が立ち並ぶ中で、ひときわ目立っていたのが携帯電話の販売店。多いところだと1ブロック全てが携帯電話の販売店なんてこともあるのだから、その数はちょっと普通じゃない。携帯電話本体やアクセサリーだけではなく携帯電話のパーツ単体でも売っている店もあった。秋葉原も顔負けの携帯電話街をクリークに荷揚げされたばかりの携帯電話をいっぱいに詰め込んだリヤカーが走りまわっている。ちょっとシュールな景色だが、やはりこの商売も盛況なのだろう。
それにしても、この街では労働者街にありがちな暗さをあまり感じなかった。もちろん誰もが裕福というわけではないだろうが、極端に暮らしぶりの貧しそうな人も見かけないし、ホームレスもいない。ある意味、誰もが前向きなパワーを発している街だった。その理由はドバイのイミグレーションの厳格さにあるのかもしれない。基本的にドバイ(UAE)に住むためには居住ビザが必要で、ビザの発給には就労証明書が不可欠。職を失った時点でドバイに住めなくなるシステムがとられている。それゆえ原則的にドバイにいる誰もが職を持ち、社会の一員として、機能している。するべき仕事をし、安定した暮らしができていることが、街全体の明るさにもつながっているのだろう。
華々しい発展を続けるドバイを裏で支えているのは、この街の力強さなのかもしれない。
【Text=日比崇幸 / Photo=小林邦寿】
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『刺激的で優しいアラブの国へ 〜ドバイ〜』(全8回)