古代の赤い染料が、エコフレンドリーな電池になる【サイエンスニュース】




電子機器から電気自動車まで、リチウムイオン電池の用途は急速に広がっている。軽量で大容量のリチウムイオン電池だが、問題は少なくない。その1つが、環境負荷だ。

リチウムイオン電池の正極には、コバルト酸リチウムが使われている。コバルトは希少元素であり、またコバルト酸リチウムの生産、リサイクルには多くのエネルギーを必要とする。リチウムイオン電池の製造には、容量1kWh当たり72kgの二酸化炭素が排出されるという試算もある。

こうしたリチウムイオン電池の問題点を改善するために、さまざまな電極材料の研究が行われている。ニューヨーク市立大学シティカレッジ、ライス大学、米陸軍研究所の共同チームが研究を進めているのは、プルプリンを電池材料に使ったリチウムイオン電池だ。プルプリンは、セイヨウアカネの根から作られる赤いアカネ染料に含まれている物質である。3500年以上前から、アジアや中東ではアカネ染料が広く使われてきた。

プルプリンはリチウムとうまく結びつき、従来の電極材料と同様に電子を出し入れすることができる。また、プルプリンを使った電極は製造が容易という利点もある。プルプリンをアルコールに溶かし、リチウム塩を加えるだけでよく、製造・貯蔵とも室温で可能だ。

さらに、環境面でも利点が多い。プルプリンには毒性がないため廃棄時の環境負荷が低く、植物であるセイヨウアカネは成長する際に二酸化炭素を吸収する。

現在の研究課題としては、電池材料としての性能向上や、プルプリンに似た分子の合成手法開発などが挙げられる。しかし、研究チームによれば、こうした課題を含めても、商用「グリーン」リチウムイオン電池は数年程度で実現できそうだという。

(文/山路達也)

記事提供:テレスコープマガジン

共有する

関連記事

【デジカメ調査室】乾電池対応!光学6倍ズームのコンパクトデジカメ「LZ7」

「LZ7」は、720万画素CCDを搭載した乾電池対応のコンパクトデジタルカメラで、2月9日より発売を開始する。カラーバリエーションは、シルバーのみ。価格は、オープンプライス。市場想定価格は、3万3,000円前後の見込み。外出先でも手…

【デジカメ調査室】光学3倍ズーム搭載で乾電池駆動のコンパクトデジカメ「LS75」

「LS75」は、720万画素CCDと「トリプルブレ補正」を搭載し、乾電池駆動のコンパクトデジタルカメラ。2月9日より発売を開始し、カラーバリエーションはシルバーのみ。価格は、オープンプライス。市場想定価格は、2万5,000円前後の見込…

【アキバ物欲】連休も安心!ケータイの電池切れもその場で解決するバッテリー特集

世間では、年に一度のゴールデンウィーク。9連休という長期休暇を満喫する人もいるだろう。長い休日を利用して海や山、川へレジャーを楽しむ人も多いこの時期に、旅行や遊行などで困るのが、携帯電話やゲーム機のバッテリー切れだ。宿…

【最新ハイテク講座】今や必需品の「リチウムイオン電池」 どうして爆発事故が起こるのか

最近の携帯電話やノートパソコン、デジカメ、iPod、DSやPSPのようなゲーム機など、携帯機器には充電池が利用されている。そのほとんどが、リチウムイオン電池といってもいいだろう。普段当たり前のように利用しているリチウムイオン電池…

業界初 半導体製造装置へのセキュリティ導入! カスペルスキーが新サービスを発表

2008年10月21日、カスペルスキーはアンチウイルスをSaaS型で提供する新サービス「Kaspersky as a Service」の開始と半導体の製造装置にセキュリティを組み込む業界初のユーザー事例の記者発表会を開催した。発表会では、来日したKaspers…