写真家になるのに遅すぎることはない!愛機GXRで別世界を目指す【NEXT GENERATION】


写真は子供から大人まで楽しめる趣味であるとともに、絵画や彫刻のようにアートとしても存在する。写真家とよばれるアーティストも多くの人と同じように写真好きから第一歩を踏み出す。
人は、いつから写真を撮れば、写真家になれるのだろうか?

我々は、写真家は子供の頃から写真を撮り続けて・・・といったストーリーを思い浮かべがちだ。もちろん、幼少から写真を撮り続けて写真家となる人もいるが、すべてでは無い。

2010年12月1日より銀座リコーフォトギャラリー「RING CUBE」にて"Beyond"展を開催中の江口敬氏も、遅くスタートした写真家である。

■社会に出てから写真家を目指す
江口氏は、少年時代を九州で、高校時代を仙台で過ごした。十代の頃は鉄道やスナップ写真に熱中もしたが、その後しばらく写真から遠ざかっていた。
大学を卒業し、社会人となった江口氏は、デジタル一眼レフが手頃な価格となった6年ほど前から再び身近な日常を写真に撮り始めたという。

「趣味の範囲でブログに掲載したり、コンテストに応募したりして写真を楽しんでいました。」と、江口氏。

作家活動に傾斜していったきっかけを次のように語ってくれた。
「そんなとき、ブログを通じて知り合った北海道在住の写真家飯塚達央さんから、『写真をもっと深めたいなら、意識して人に見せることが大事だ』とアドバイスされて、東川町国際写真フェスティバルに出展したんです。」


初めて人に見せるために身の回りの風景をモノクロの作品にまとめて出展した江口氏だが、結果は、うれしいことばかりでは無かったという。


「人に見せることの厳しさと難しさを教えられました。辛らつな意見をいただきへこむこともありましたが、人に何かを伝えることの楽しさも同時に知ることができました。

そのときはとにかく、自分自身のことだけで精一杯で、人に見せるところまで気持ちが行き届きませんでしたね。」と、当時の自分を振り返ってくれた。



■見る人を意識して撮った写真を見せる
今、江口氏は、見る人を意識して、その人の心の中に沸き立つような感情を呼び覚ましたいと考えながら写真を撮り、展示しているという。


今回のテーマ“Beyond”では、日常生活のそばにありながら普段は見えてこないもの、合理的な価値観ではとらえきれない、美しさというものの非合理なありようや景色を写真に収めたかったと江口氏はいう。

特に苦労したのは“Beyond”"のテーマ構成だそうで、とりわけ展示する写真のセレクトでは、どの写真を選び、どれを落とすかで悩んだとのことだ。


“Beyond”"展は、12/18から1/16まで仙台でも全20点に作品を増やして開催されるのだが、「RING CUBE」の橋本氏や仙台のギャラリーのスタッフにアドバイスを仰ぎながら、それぞれの会場にそった写真選びをしたことで、テーマをより深く掘り下げることができたという。


「RING CUBE」の橋本氏も
「見る人の側にたって、写真を選ぶことは、撮影や作品制作にも大切」だと語る。


■写真は制約された表現だからこそ輝く
機材のデジタル化が進展し、静止画と動画の間の垣根が低くなるなど、旧来の写真の枠組みが揺らぎつつある中で、江口氏は、写真のいう枠(フレーム)にこだわっていきたいともいう。

「写真という限定された二次元のフレームの中に、思いを押し込めて作品を作りたいんです。制約された表現だからこそ見せることのできる輝きがある。凝縮した色と形を使って、見る人のインスピレーションを喚起したいんです。」と、語ってくれた。

この写真が撮れたところで、今回の“Beyond”のテーマでの作品をイメージできた。

■愛機GXRで、別世界を撮りたい
江口氏は、最近1年は、リコーGXRに50mmレンズの構成で写真を撮影しているそうだ。
「GXRは、レンズの癖がなく、自分の意図が思ったようにでるので、気に入っています。」という。

“Beyond”"展を来年1月まで展開中の時期ではあるが、今後の抱負を伺ってみた。

「まだ『向こう側』の世界を完全には見せられていなくて、入り口に入ったばかりなんだと感じています。今後は、見る人の意識を丸ごと別世界に連れていってしまうような写真を撮りたいと思っています。」



写真展“Beyond“について
“Beyond“という単語には、「〜の向こう側へ」、「〜を越えて」という意味とともに、「彼方」あるいは「超経験的世界」という意味があります。
わたしは、日常生活のすぐとなりに存在しながら、敢えて見ようとしなければ感受することのできない非日常の陰影と色彩を写真に捉えたいと考え、撮影を続けています。
そのことを言葉を換えて表現するなら、「行って、帰る」ことだと言えます。
すなわち、心を奪われた被写体にカメラを向けるたびに、いま自分が居るこの場所から別の価値基準が支配する世界へほんの一瞬だけ越境し、そしてまた、帰って来るのです。
撮影した写真と一緒に。

思うに、わたしにとってカメラとは、意識を覚醒させてくれる「旅のチケット」のような存在です。
旅のさなかに写し撮られた幻想は、現実の世界で生まれ変わり、"Beyond"の記憶として定着され、再び「向こう側」の世界へとわたしを誘います。
その繰り返しこそが、わたしが写真を撮り続ける原動力であり、また、写真が多くの人々を魅了する根源ではないかと思うのです。


江口 敬 EGUCHI Takashi
1972年 東京都生まれ。少年時代を九州で、高校を仙台で過ごし、カメラに出会う。
十代の一時期、鉄道やスナップ写真に熱中したが、大学卒業後しばらくは写真から離れていた。
2004年頃より再び写真を始め、内面の表現としての写真の撮影及び発表に力を注ぐ。
現在、福島県福島市在住。

公式ウェブサイト「LIGHT AND BREEZE」

主な出展、展覧会
2008年
北海道東川町国際写真フェスティバル
「インディペンデンス展」及び「ストリートフォト・ギャラリー」に出展
2009年
早坂智也氏と「十月の共謀/絵と写真の二人展」を開催 福島テルサ(福島市)
2010年
公募写真展"Sha-gaku"に出展 Kalos Gallery(仙台市)
「銀座鉄道」展(写真家広田泉氏主宰)に出展 銀座リコーフォトギャラリー RING CUBE(東京)
NEXT GENERATION 江口敬写真展 "Beyond" 銀座リコーフォトギャラリー RING CUBE(東京)
江口敬写真展 “Beyond” Kalos Gallery(仙台市)


リコーフォトギャラリー「RING CUBE」

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