【気になるトレンド用語】黄砂は公害になった? 黄砂の汚染と健康被害


気候が暖かくなり、だんだんと過ごしやすくなってきましたが、花粉症の人にはつらい時期ですね。花粉症のような症状の原因は花粉だけが原因ではないようです。春が近づくと、花粉とともに飛んでくるのが“黄砂”です。黄砂は中国大陸の砂ですが、アレルギー反応の原因にもなるといわれています。

今回は、隠れた花粉症の原因“黄砂”についてみていきましょう。

■黄砂とは
黄砂は中国大陸内陸部のタクラマカン砂漠、ゴビ砂漠や黄土高原など、乾燥・半乾燥地域からやってくる土壌・鉱物粒子です。風によって数千メートルの高度にまで巻き上げられた黄砂は偏西風に乗って日本に飛来し、大気中に浮遊したり降ってきます。

風によって大気中に舞い上げられた黄砂は農業生産や生活環境にしばしば重大な被害を与えます。大気中に浮遊した黄砂は、黄砂粒子を核とした雲の発生・降水をもたらして地球全体の気候にも影響を及ぼしています。 また、大陸を越えて海へ落下した黄砂は、海洋表層のプランクトンにミネラルを供給しており、海洋の生態系にも大きな影響を与えていると考えられています。

黄砂現象は従来、自然現象であると理解されてきました。しかし、近年ではその頻度と被害の大きさから、急速に広がっている過放牧や農地転換による土地劣化などとの関連性も指摘されているようです。

黄砂が起きる原因は自然現象だけではなく、森林減少、土地の劣化、砂漠化といった人為的な要因も問題視されはじめているのです。

■黄砂の観測
日本における黄砂現象は、春に観測されることが多く、時には空が黄褐色に煙ることさえあります。
全国の気象台等では、空中に浮遊した黄砂で大気が混濁した状態を観測者が目視で確認した時を黄砂として観測しています。黄砂の観測では、黄砂の観測を開始した時間と終了した時間、決められた観測時間の視程などを記録しています。

観測方法ですが、気象庁ではサンフォトメータ(※1)、エーロゾルライダー(※2)、気象衛星などのリモートセンシング技術による観測装置を用いて、黄砂などのエーロゾルの観測を行っています。
サンフォトメータは、黄砂のエーロゾル光学的厚さと粒径分布を観測することができます。エーロゾルライダーは、黄砂の鉛直構造やその時間的な変化の様子を観測できます。また、人工衛星の画像を解析することにより、黄砂の分布状況を観測することができます。

※1:サンフォトメータ
太陽を自動追尾し、その光強度変化を測定する機器です。
※2:エーロゾルライダー
レーザー光線を上空に発射し、返ってくる光を測定・解析することにより、上空に浮遊する粒子状物質の鉛直分布を観測する装置です。

■黄砂は汚染されているか
黄砂は中国大陸の砂漠地帯で巻き上げられる砂で、それ自体は有害物質ではありません。しかし、偏西風により中国の工業地帯に運ばれるとスモッグを通過する際に、大気汚染物質(硫黄酸化物、窒素酸化物、水銀などの重金属など)を吸着し、健康に悪影響を与える汚染物質になります。

小さな子供ほど汚染物質の影響を受けやすく、硫黄酸化物などの影響で病弱になる場合があります。黄砂は21世紀になってから有害物質になったといわれており、従来のような洗濯や洗車を邪魔するだけではなく、健康被害を引き起こす元となっているのです。現在では深刻な越境汚染による公害とも言われています。

日本には中国国内よりも粒子が細かい黄砂が到達します。時期的に花粉症の時期と重なるため、単なる花粉症だと思い込んでいる人も多く、潜在的な患者はもっと多いと予想されています。

中国の工業地帯を通過する際に有害な化学物質が付着した黄砂により、アレルギー症状が悪化する人が増えています。症状としては、咳喘息や気管支炎を発症し、熱中症にもなりやすくなります。花粉症が、花粉単体よりも窒素酸化物などの大気汚染物質と混合されることで発症しやすくなるのと同じです。

アレルギー体質の人は、花粉症と同様にマスクなどで自衛した方がよいでしょう。

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