【気になるトレンド用語】大和より強い!海の要塞イージス艦って、どこが凄いの?


2008年2月19日、海上自衛隊の最新鋭イージス艦「あたご」と漁船の衝突事故がありました。漁船は船首、操舵部、船尾に分断されて沈没しています。乗っていた二人の漁師は、いまだ行方不明です。(3月1日現在)

事故を起こしたイージス艦は海の要塞ともいわれている近代のハイテク兵器ですが、ほかの艦船とどのような違いがあるのでしょうか。

今回はイージス艦がどのような船なのかを探ってみましょう。

■イージス艦とは
イージス艦とは、イージスシステムを搭載している艦の総称です。特定の艦の名前ではありません。イージスの語源は、古代ギリシャ神話に登場する最高神ゼウスが、娘である戦の神アテナに与えた、あらゆる邪悪を払う盾(胸当て)の名称からとられています。

現代の軍用艦は高度な情報処理能力とネットワークを備えた巨大な戦闘コンピュータシステムともいわれています。

イージス艦に装備されている砲やミサイル、魚雷などは、すべてイージスシステムに接続され、制御されています。
イージスシステムで特徴的なのはレーダーで、SPY-1レーダーと呼ばれる8角形をしたフェイズドアレイ・レーダー4枚を4方向に向けて設置されています。探知距離は最大で450キロ以上、200以上の探知目標をとらえることができます。

イージス艦の任務は、主に防空に置かれており同時に多数飛来する航空機やミサイルを早期に察知して艦隊を守ることにあります。まさに、盾のような役割をするわけですね。

現在日本では、こんごう型護衛艦を4隻、あたご型護衛艦を1隻保有しており、あたご型2番艦を建造中です。ちなみに、イージス艦1隻のお値段は、約1400億円、こんごう型護衛艦の1隻あたりの建造価格は1357億円です。

■イージス艦 誕生までの生い立ち
アメリカには空母を主体とする最強の機動部隊が整備されていますが、遠方からのミサイル攻撃に対する危機感があり、防空を専門に担当して艦隊を守るイージス艦が導入されたのです。

最初のイージス艦は、アメリカで建造されたミサイル試験艦ノートン・サウンドです。この艦はフェイズドアレイ・レーダーSPY-1の目標追尾試験とミサイル発射試験が行われ成功しました。
これを受けて1983年にスプールアンス級の船体にイージスシステムを搭載したタイコンデロガが就役されています。しかしタイコンデロガは、イージスシステムを前提とした設計でなかったためレーダー配置などに無駄が多く重量が重くなってしまうという問題がありました。またタイコンデロガ級は建造価格が高くなることも問題であったことから後継のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦では、イージスシステムに特化した設計を採用してコストも抑えられています。

現在ではアメリカ、日本のほかに、スペイン、ノルウェー、韓国がイージス艦を保有しています。

■こんごう型とあたご型
日本では、防空及びシーレーンの確保を目的として、アーレイ・バーク級をベースとした「こんごう」が最初のイージス艦として1993年に就役しています。「こんごう型護衛艦」は、「DDG-173 こんごう」、「DDG-174 きりしま」、「DDG-175 みょうこう」、「DDG-176 ちょうかい」の4隻が現在就役中です。

アーレイ・バーク級からの主な変更点は、主砲がMk45からオート・メラーラ製127mm砲になり、対地攻撃用のトマホーク巡航ミサイルが搭載されていないことです。また対潜ソナーは日本独自開発のものが使用されています。

「あたご型護衛艦」は、耐用年数を迎える「たちかぜ型護衛艦」の代替艦として建造され、2007年に就役した世界最大のイージス艦です。現在就役中の同型艦は「DDG-177 あたご」で、「DDG-178 あしがら」が現在建造中です。

基本的には「こんごう型護衛艦」の強化発展型ですが、従来のヘリコプター着艦甲板に加え、ヘリコプター格納庫も備えたために全長が長くなっています。ちなみに格納庫には常時格納されるヘリコプターはありません。

そのほかの「こんごう型護衛艦」からの主な変更点は以下の通りです。
・イージスシステムのバージョンが、最新のベースライン7.1Jにあがっています。
・フェイズドアレイレーダーが、改良型のSPY1-D(V)に変更され、捜索追尾能力と捕捉能力が上がっています。
・データリンク機能が上がり、システムが高速化しています。
・主砲がイージスシステムと親和性の良い米国製Mk45Mod4・62口径5インチ単装砲に変更されています。
・対艦ミサイルが、国産の90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)に変更されています。

■実は大和より強い
旧日本海軍最大の戦艦といえば「大和」です。排水量は64000トンで、「こんごう」の7250トンに比べるとはるかに巨大です。武装も46センチ砲を筆頭に多くの機銃を備えており、主砲の射程距離は40キロメートルです。一方、「こんごう」に装備されている対艦ミサイルハープーンSSMは、110キロメートル以上の射程を持ちます。

つまり、大和の主砲が届かない位置からイージス艦はミサイルで大和を攻撃できるのです。

■ミサイルからの国土防衛もできる
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の弾道ミサイル「テポドン」、「ノドン」により、北朝鮮から日本への直接攻撃の脅威が増しています。そのため2003年、日本は日本版弾道ミサイル防衛(BMD)システムの導入を閣議決定しました。

そのBMDにおいてイージス艦は重要な役割を担っています。
イージス艦のスタンダードミサイル SM-3を使用して弾道ミサイルが宇宙空間を飛行しているところを打ち落とそうというものです。SM-3が運用できるイージス艦であれば、将来的には理論上1隻で日本全土を弾道ミサイルから防衛することができるといわれています。

■超ハイテク艦の意外な弱点
これだけの性能と重要な任務を担っているイージス艦ですが、専門家によると水上の小型船舶の捕捉では通常の護衛艦と大差はないそうです。また強化プラスチック製の漁船はレーダーで探知しにくいとの指摘もあります。演習では、忍び寄った艦艇が至近距離からイージス艦に攻撃を加えて戦果をあげた例もあるそうです。

民間船との事故防止はもちろんですが、実戦を考えても海上の状況把握と行動に改善が求められるところですね。

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