格安SIMのサービスはメイン使いできるか?「OCN モバイル ONE」「050 plus」「マイポケット プラス」を使い込んでみた結果【吉川英一の「スマホのちょっと深いとこ」】


格安SIMはメイン使いに耐えられる?

NTTレゾナントがgoo SimSellerで販売した「ZTE Blade Vec 4G」と「OCN モバイル ONE」のセットは、税込19,800円という価格で話題となりました(※現在は販売終了しています)。本連載「スマホのちょっと深いとこ」では、この格安スマホと格安SIMのセットが1台目のスマホとしてメイン使いできるかどうかという観点から、セットの内容を紹介してきました(過去記事1過去記事2)。

今回はセット付属の格安SIM「OCN モバイル ONE」のサービスを紹介します。セットに付属しているSIMにはIP電話サービス「050 plus」、オンラインストレージとサポートサービス「マイポケット プラス」が付属しているため、併せて内容を紹介していきます。また連続レビューの最終回として、格安スマホと格安SIMが1台目になりうるか、筆者なりの見解を示したいと思います。

【70MB/日を有効に活用するには】

OCN モバイル ONEはNTTドコモの回線を利用したモバイル通信サービスで、以下の料金プランが提供されています。1日単位の容量制限が提供されているのが他社にはない特徴と言えます。いずれのプランでも通信容量を超えた場合は200kbpsに速度制限されます。

・70MB/日: 900円
・100MB/日: 1,380円
・2GB/月: 1,100円
・4GB/月: 1,450円
・500kbps(7GB/月): 1,800円
(価格はいずれも月額・税別)

ここで70MB/日のプランを選択した筆者の利用実績を紹介します。概ね以下のような条件で1ヶ月ほどメインスマホとして利用しました。

・主な利用目的は通勤時間(30分〜1時間)のWeb、Twitter、Facebook
・自宅にいる時はWi-Fiに接続
・非Wi-Fi時のアプリダウンロードや動画再生は意識して避ける

この結果、OCN モバイル ONEの専用アプリに表示される1ヶ月の通信量は665MBでした。またこの利用条件の場合、概ね70MB/日の通信量で収まっていました(*1)。

*1: この評価を行った2014年9月時点では通信容量は50MB/日でした。2014年10月1日に通信容量が増量されています。

ocn_mobileone_001
専用アプリで通信量を確認

もちろん通信量は利用環境によって大きく変わりますので、万人にとって70MB/日が必要十分とは限りません。専用アプリで通信量を確認しながら、適切なプランに変更するとよいでしょう。

通信量を節約するため、以下のような工夫が考えられます。
・動画やアプリ更新などはWi-Fiを利用する
・高速通信が必要ないときには高速通信(「ターボ」)をOFFにする
・Chromeブラウザの「データ使用量を節約」機能を利用する

高速通信(「ターボ」)はOCN モバイル ONEの専用アプリでON/OFFでき、OFFになっている時の通信は70MB/日にカウントされません。またChromeの「データ使用量を節約」機能は通信の最適化により最大50%程度通信量を減らすことができるとうたわれています。筆者の場合36%の通信量削減が認められました。

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ターボOFF(写真=左)やChromeのデータ圧縮(写真=右)で通信量を節約

【IP電話「050 plus」は携帯電話の代わりになるか】

OCN モバイル ONEでは現在のところ携帯電話機能(090/080/070から始まる電話番号)を提供しておらず、今回評価しているセットでは代わりにNTTコミュニケーションが提供するIP電話サービス「050 plus」が提供されています。050から始まる電話番号が割り当てられ、モバイルデータ通信やWi-Fi経由で固定電話や携帯電話との通話を行うことができるサービスです。

通話料は固定電話宛が3分8円、携帯電話宛が1分16円。050 plus同士やOCN・提携プロバイダのIP電話宛は無料です。月額使用料は300円ですが、OCN モバイル ONEとセットで利用すると150円に割り引かれます(価格はいずれも税別)。

さて050 plusはデータ通信を利用して音声通話を行うため、OCN モバイル ONEのような通信量容量制限のある環境で利用する場合、通話時の通信量が気になるところです。実際に計測したところ通話中の通信は常に35kbps程度でした。

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050 plus通話中のデータ通信(Wi-Fi環境、Wiresharkにて測定)

この程度の通信であれば、通信量をあまり気にする必要はなさそうです。またターボOFFや速度制限により通信速度が200kbpsに制限されている場合でも速度不足になることはなく、通話音質に大きな違いはありませんでした。

ただしあくまでデータ通信を用いたIP電話なので、通信状態の悪化により音の途切れや音質低下が発生するほか、音声の遅延も大きめで、携帯電話と同じく意識せずに使えるかというとちょっと厳しいところです。

なおデータ通信が利用できない場合は音声着信できませんが、050 plusでは留守番電話機能が無料で利用できます。メッセージが録音された時に指定メールアドレスにメッセージを音声ファイルで送信する機能もあるので、必要に応じて活用するとよいでしょう。

ocn_mobileone_004無料の留守番電話サービスでメッセージの音声ファイルをメール受信

【マイポケット プラスはオンラインストレージ+サポート】

もう一つのセットサービス「マイポケット プラス」は、64GBのオンラインストレージサービス「マイポケット」と、電話・リモートサポートを組み合わせたサービスで、月額500円(税別)です。追加オプションでスマートフォンセキュリティ対策を行う「セキュリティパック」、PCまでサポートする「マルチデバイスパック」も利用可能です。

オンラインストレージとしてはスマートフォン用、パソコン用のクライアントアプリが用意され、ファイルのアップロード、スマートフォンのバックアップを行うことができます。

ocn_mobileone_005マイポケットのスマホアプリで画像やアドレス帳をアップロード

【サービス利用に「縛り」なし】

今回紹介した「OCN モバイル ONE」「050 plus」「マイポケット プラス」のサービスには最低利用期間の制限(いわゆる「縛り」)がありません。また050 plusは申込み後2ヶ月、OCN モバイル ONEとマイポケット プラスは1ヶ月(初月)は無料で利用できます。不必要ならいつでも解約できるという気楽さで、まずは試してみて、自分に合うサービスを取捨選択すると良いのではないでしょうか。

【今回特集のまとめ〜有望な「もう一つの選択肢」】

さて本連載では3回にわたり格安スマホと格安SIMの組み合わせを「1台目のメイン使い」として評価してきました。格安スマホ=ZTE Blade Vec 4Gについては筆者の使い方の範囲で大きな不満はなく、1台目にできると感じました。

格安SIM=OCN モバイル ONEについては、データ通信については不満を感じませんでしたが、1台目ならばやはり携帯電話(090/080/070)を使いたいなと感じたのもの事実です。代替手段として提供されている050 plusはIP電話としての完成度は十分ですが、仕事に使うことを含めてこれ1本に委ねるのはまだ不安を感じます。他社からは携帯電話機能を備えた格安SIMも発売されてきていますので、そちらと組み合わせるのもよいかもしれません。

ともあれ安い=使えないということでは全くなく、格安スマホ+格安SIMがここまで使えるようになったことに驚きを隠せません。携帯電話事業者のスマホが端末代金・使用料ともに値上がり傾向にあるなか、格安スマホや格安SIMはもうひとつの選択肢として存在感を増していきそうです。

記事執筆:えど(吉川英一)

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