“最凶”の教育映画『先生を流産させる会』の劇場公開が実現


 「生まれる前に死んだんでしょ。いなかったのと同じじゃん」

 公開を前にネットで話題騒然となっている映画『先生を流産させる会』(5月26日公開)。2011年のカナザワ映画祭、ドイツ・ニッポンコネクション、そして2012年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭に出品され、絶賛を受けるも、タイトルや過激な題材を扱っているため、なかなか表に出ることがなかった。しかし、作品本来の魅力が伝わるにつれ各方面から公開を希望する声があがり、劇場公開が実現した。

 本作は、2009年に愛知県半田市のごく普通の中学校で起こった出来事を基にした作品。ある郊外の女子中学校教員・サワコ(宮田亜紀)は、難しい年頃の生徒たちや子供に過剰な愛情を注ぐ父兄らに手をこまねながらも、時に厳しく教え子たちを指導していた。ある日、退屈な毎日に刺激が欲しい生徒たちにとって、ひとつの事件が起きる。それはサワコの妊娠だった。「サワコ、セックスしたんだよ。気持ち悪くない?」このことに過度に反応したのは、複雑な家庭環境に育ったミヅキ。思春期の少女にとって、それは汚らわしい行為にしか思えなかった。そこで“先生を流産させる会”を結成する。サワコの給食に理科室で盗んだ薬品を混入するなどの嫌がらせを始める。異変に気付いたサワコは、ホームルームで、心当たりのある生徒の名前を紙に書かせ、犯人を割り出す。放課後、ミヅキたちを教室に残し「私は赤ちゃんを殺した人間を殺す。先生である前に女なんだよ」と告げる。しかし、罪の意識が希薄なミヅキたちには、その訴えは通じず、さらに嫌がらせはエスカレートしていく。サワコは、あからさまな対決姿勢をとるミヅキたちに、大人として、母親として毅然として立ち向かう。

 本作の題材となった事件は、日本中を戦慄させた。1年生の男子生徒たちが“先生を流産させる会”を結成。妊娠中だった担任の女性教諭の車に糊やチョークなどを混合して精液を模した液体をかける、理科の実験で出てきた薬品(ミョウバン)を給食に混入させる、椅子のねじを緩めて尻もちをつかせようと画策するなどの悪質な悪戯をしたのだ。この事件は、メディアの注目を集めたものの、教育委員会は「あくまで稚拙な悪戯」という見解に終わり、誤った実名報道やブログ炎上でさらにネットで話題となった。

 今回の公開決定に関しても様々な意見がある。キニ速などの2chまとめサイトには、「こんなもん映画にする価値無いだろ 」「こんなんつくったってマネするやつがでてくるだけ 」など批判的な意見が目立つが、NAVERまとめの「『先生を流産させる会』映画化…実際に起きた悲惨な事件の概要」には、以下のような意見がある。

「先生を流産させる会」ヒットするねー、これは。こんなに話題にしてもらえるのだから。にしてもだ、現実の事件の設定のまま映画化したほうが映画の設定よりも面白くなったはずなのに、という以外の現実との差異を言う批判は意味ないのだけどな。そんなわけでそういう批判は観てから言おう!w

ちょっと、映画の先生を流産させる会に対する女性たちの拒否反応が理解できていない。なぜ犯人が女子になった事でそこまで怒っているんだろう。「事実を映画的に再構築した物語」はいくらでもある。怒ってるポイントが複数あって、どれが一番の本質かイマイチ解ってないのだけど、それはなんだろ。

 ネット上で過激な処罰を求める声もある中「どれも安全な立場から発せられた無責任な発言ではないか」という疑問から、本作は誕生した。映画化にあたり、男子生徒から女子生徒へと設定を変え、あくまでもフィクションとして描かれているが、閉塞的な学校社会、モンスターペアレンツの問題など現代の教育がはらむ病巣をしっかり捉えながら、少女たちと教師との“いのち”をめぐる葛藤にしっかり向かい合った作品といえる。松たか子主演映画『告白』と同じく、学校における犯罪をモチーフにした作品だと思えば、また見方も変わるかもしれない。

 公開されている予告映像がこちら。


 “先生を流産させる会”のリーダー・ミヅキを演じる小林香織をはじめ、出演する少女たちは全員が映画初出演。撮影当時はほとんどが演技未経験だった彼女たちの圧倒的な存在感と、思春期特有の危うさを漂わせた演技に注目したい。

 映画『先生を流産させる会』は、5月26日より渋谷ユーロスペースにて公開。

映画『先生を流産させる会』 - 公式サイト

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