韓国・台湾に続くのは中国!世界に躍り出たZTEの日本侵食は避けられない【世界のモバイル】


スペインで開催されていた世界最大のモバイル・通信関連イベント「Mobile World Congress 2012(MWC2012)」が閉幕した。会期中は各メーカーが連日新製品発表会を開催していたが、圧倒的な製品数で話題となったのが中国のZTEだ。

発表会で紹介されたスマートフォン新製品は8機種。それに加えてタブレットや開発中の製品なども紹介され、同社のブースにはそれらの製品がずらりと展示されていた。

4Gからハイエンドまでスマートフォン新製品で埋め尽くされたMWC2012のZTEブース

ZTEの新製品発表会で、同社端末部門トップの何士友執行副総裁は「2015年までに世界シェア3位になる」と同社の目標を明言。同社の上に位置するAppleとの差はまだ開いているが、1製品だけで勝負するAppleに対し、エントリーフィーチャーフォンから多機能スマートフォンまで手がけ、しかも成長を続ける新興市場にも強いZTEが販売数を抜くチャンスは十分にある。

なお、調査会社ガートナーによれば、2011年通期の端末販売台数はAppleが8926万台、LGが約8637万台、ZTEは5688万台であった。

MWC2012で発表したZTEの新製品は、そのいずれもが明確なターゲットとポジションを持った製品だ。2015年のシェア3位入りを前に、まず2012-13年にシェア4位を目標とする戦略的な製品群を揃えた、と言えるだろう。

同社の新製品発表会は大手メーカーのような派手な演出は行われなかったが、次々と発表される製品ラッシュには会場を埋め尽くした世界中のメディア関係者からも驚嘆の声が飛んでいた。
クアッドコアやLTE対応など、ZTEの新製品は多岐に及ぶ

では、ZTEの新製品はそれぞれどのような戦略を持った製品なのか。

まずは同社が弱いハイエンド製品が3機種も登場する。「ZTE Era」はNVIDIAのTegra3を搭載しながらも厚みは7.8mmと薄い。また「PF200」と「PF910」はLTE対応スマートフォンで、複数の周波数にも対応。そして「PF112 HD」は4.5インチ1280x720ピクセルのフルHDディスプレイを搭載する。いずれも他社の同等スペック品より15%程度安い価格になる見込みだと言う。このスペックと価格は通信事業者が自社ブランドのハイエンドスマートフォンとしてラインナップに加えたくなる魅力も持っているだろう。

そして中核を成す標準ラインナップは4モデルを用意。ZTEには2010年の発売以来、世界中で800万台を売ったヒット商品の「Blade」と、その上位モデルで2011年後半から同じく各国で200万台を販売した「Skate」という2つのコストパフォーマンスに優れた主力製品を持っている。

MWC2012ではそれぞれの後継となる「Blade II」「Skate Aqua」に加え、上位モデルの「Mimoza X」、下位モデルの「Kis」が発表された。これらは隙の無いカルテット・ラインとして同社の端末販売数増を牽引する存在になるだろう。

なお、これら4製品からはZTEが自社開発したUI、「ZTE MiFavor」が標準搭載される。Android OS 4.0の標準UIよりも使いやすく、またアプリケーションプラットフォームとしてウィジェットなどを独自に開発可能だという。

端末のハードウェアスペックだけではなく、ユーザー体験を向上させるためにはソフトウェアの開発も必要と同社は考えているのである。

またOSの複数展開も今後は進めていくようだ。ZTEは昨年ヨーロッパ向けにWindows Phone 7端末「Tania」を発売したが、MWC2012では最新OSを搭載する「Orbit」を発表。普及価格帯のWindows Phoneで、新興市場にも利用者を広げたいマイクロソフトの意向に沿った製品でもある。Windows Phoneは競合製品が少ないことから、このOrbitが販売数を伸ばすことも十分ありうるだろう。
日本市場も重要と語る羅忠生副総裁

このように2012年はスマートフォンのラインナップが一気に充実する同社だが、同社の羅忠生副総裁は「コストパフォーマンスに優れたミッドレンジ製品を増やすだけではなく、市場で人気のあるハイエンド製品にも注力していく」とインタビューで語った。

また同社がこれまでシェアを伸ばしてきたのは価格だけではなく、各国向けのローカライズにも注力してきたとのことで、通信事業者の要望や国ごとの文化の違いを製品に反映させている。


これは日本市場でも同様で、日本メーカー製品が備える機能を搭載していないことが多い海外メーカー製品の中で、ZTEは防水やワンセグに対応した製品も出している。日本はハイエンド製品が好まれる市場であり、日本でヒットすればそれは他の国でも十分通用する製品である証明にもなる。

MWC2012で発表した製品のうち、ハイエンドラインが日本でも販売される可能性もある。ZTEの製品はあらゆる通信方式に対応しているため、日本固有の通信方式への対応も難しくはないはずだ。

市場の規模から言えば中国よりは小さいだろうが、日本は同社にとって重要性のある市場の1つになっているという。ZTEの世界シェア3位入りが実現するころには、日本でも同社のスマートフォンが各事業者から販売されているようになっているだろう。同社の今後の新製品には十分期待したい。

山根康宏
著者サイト「山根康宏WEBサイト」

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