【2011下半期アワードvol.2】故・林由美香さんの生き様をとらえた奇跡の映像


 泣いたり、笑ったり、怒ったり……。2011年、あなたの心に残った映画は何だったろう。2011年7月以降に公開された作品の中から、編集部のメンバーがとっておきの10本を紹介する「2011下半期アワード」。第2回は、「ドラマのサイトー」が、独断と偏見たっぷりに「泣ける映画」をピックアップする。今年のナンバー1に推すのは、奇跡の映像を収めたドキュメンタリー映画だ。

2011上半期アワード

第1位『監督失格』


 奇跡の映像に心が震えた。2005年に34歳で急逝した女優・林由美香さんの奔放な生き様を、元恋人の平野勝之監督がとらえたドキュメンタリー映画。林さんは、ネコのように自由で、ゲロもするし、オシッコもする。でも、その全てがいとおしく思えてくるから不思議。後半のあまりに衝撃的な映像には、不謹慎ながら笑いを禁じ得なかった。笑えて、泣けて、そして生きようと思わせてくれる今年最高の1本だ。人を愛する全ての人にオススメしたい。

第2位『スリーデイズ』

 面白かった。2時間の長さを感じさせなかった。無実の罪で投獄された妻を救い出すために脱獄を計画する大学教授(ラッセル・クロウ)。とにかく、クロウのタフネスぶりが際立つ。計画に狂いが出ても、軌道修正するスピードがハンパない。もっとスマートに妻を救う方法はなかったのだろうか、という疑問があるものの、そんなことは、どうでもよくなるくらいテンポよく物語が進む。あんな夫になれるよう頑張らなければ、と尻を叩かれる作品だ。一人で見てもいいし、息子と見てもいい。

第3位『くまのプーさん』

 CG全盛の中、昔ながらのアニメーションにこだわった作品は、絵本を読んでいた頃の感覚を思い出させてくれる。プーさんの大人びた声に違和感を感じたが、徐々に慣れた。ストーリーテラーとプーさんのやり取りや、絵本の「絵」から飛び出して「文字」と戯れるメタ視点での描写が面白い。エンドロールでも、プーさんが「文字」と戯れ、最後まで観客を退屈させない。子供を楽しませようという工夫が随所になされており、それを懸命に考えた大人(親)の努力を思うと泣ける。

第4位〜10位

 4位は『エンディングノート』⇒これほど感動的な「愛している」というセリフを聞いたことがない。5位は『恋の罪』⇒園子温監督にはいつも驚かされる。6位は『マネーボール』⇒ブラッド・ピットの才能に嫉妬せざるを得ない。7位は『マイティ・ソー』⇒最強のヒーローは「ソー」なのではないか、と思う。8位は『ファイナル・デッドブリッジ』⇒痛すぎるシーンに心から痺れた。9位は『ステキな金縛り』⇒阿部寛のコメディアンぶりに感動。10位は『一命』⇒切腹シーンの描写はトラウマもの。

ドラマのサイトーの2011下半期アワード

 1位 監督失格
 2位 スリーデイズ
 3位 くまのプーさん
 4位 エンディングノート
 5位 恋の罪
 6位 マネーボール
 7位 マイティ・ソー
 8位 ファイナル・デッドブリッジ
 9位 ステキな金縛り
10位 一命

ちょっと残念だった映画『カウボーイ&エイリアン』

 隣人が銃を持ち、いさかいがあれば、生死を賭けた決闘が行われる西部開拓時代。主人公のダニエル・クレイグが、オープニングから、荒くれ者たちを手際よく殺害する。「北斗の拳」のようなハードな世界観に、ワクワクさせられたが、後半、エイリアンが登場した辺りから失速……。エイリアンに対する突っ込みどころが頭から離れず、物語に入り込めなくなってしまった。もっと西部劇が見たかった。もっと謎解きが欲しかった。ハーフ&ハーフで、どちらも中途半端になってしまった印象。映像が素晴らしかっただけに残念だった。

観なかったことが悔やまれる映画『ファイナル・デッドブリッジ』3D版

 『ファイナル・デッドブリッジ』は、2Dの試写会で観たため、3Dを意識して撮影されたシーンの数々を、存分には味わうことが出来なかった。あまりにも痛いシーンの連続に、改めて3Dで観る勇気が沸かなかったのだ。もし、美女と一緒に3Dメガネをかけて観ていたならば、もっと上位にランクインさせる作品だったかも知れない。



 以上、「ドラマのサイトー」のベスト10を紹介してきた。次回は「映画は芸術ハラ」のランキングを紹介する。単館系の意外な作品がランクインしてくるかも。次回、12月19日(月)の配信をお楽しみに。

2011下半期アワード
2011上半期アワード
編集部的映画批評

ドラマのサイトーの2011年総括

今年はド派手な3D作品が目白押し。アトラクションムービーも楽しいが、ドキュメンタリー映画やアニメなど、昔ながらの2D作品が逆に際立って見えた一年だった。また、『アバター』のような革新的な作品の登場が待ち遠しい。

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