東京ファッションの現在形|元high fashion副編集長 西谷真理子氏インタビュー
そこでlivedoor HOMMEは、展覧会企画を務めた西谷真理子氏(元high fashion 副編集長/high fashion ONLINE ディレクター)に展覧会の内容はもちろん、「なぜ、“服を着る”だけでなく、”ファッションを考える”必要があるか?」、「ファストファッションの台頭をうけて、日本のファッション業界に必要なことは?」といった、根源的なファッションへの眼差しまで、ロングインタビューを行った。
【西谷真理子(にしたにまりこ)】
編集者。1950年兵庫県生まれ。大学時代に手にした「ハイファッション」の写真に惹かれ、1974年文化出版局入社。「装苑」、「ハイ ファッション」、「元気な食卓」の編集部に所属。1980年から82年にかけてパリ支局勤務。パリコレを見て、ファッションが人を感動させられることを 知る。コム・デ・ギャルソン、ヨウジヤマモトのパリデビューも目撃。1998年から2010年までハイファッション副編集長を務め、雑誌休刊後は、2010年4月1日にスタートした「ハイファッション・オンライン」(http://fashionjp.net/highfashiononline)チーフエディターとなる。2011年、『ファッションは語りはじめた』(フィルムアート社)『感じる服 考える服:東京ファッションの現在形』(以文社)を編集。
「感じる服 考える服:東京ファッションの現在形」とは?
−今回の企画に至った経緯を教えて下さい。
2008年に、ファッション・服飾文化の研究を促進しようと、文化学園大学(当時は文化女子大学)の文化ファッション研究機構に、文科省の支援を受けたかたちで服飾文化共同研究拠点が立ちあがりました。その枠組みのなかで、「現代日本ファッションデザインの研究」チームが結成されたのが、そもそもの始まりでした。私に声をかけてくれたのは同大の高木陽子 教授で、他にメンバーを加えるということで、私は京都造形芸術大学の成実弘至さんを推薦し、高木さんは将来的に展覧会として発表できるように東京オペラシティアートギャラリーのチーフキュレーターの堀元彰さんを推薦。当初はこの4人のメンバーで始まった企画です。最初の仕事は「6+アントワープファッション」のカタログの和訳でしたが、これに始まり、2年間、毎月集まっては、時にゲストを呼んだりしてどういう形の研究にするか?日本のファッションの歴史や現状はどうなっているか?などを話し合ってきました。その後、展覧会のかたちにすることを決めてからは、京都国立近代美術館や神戸ファッション美術館のキュレーターの話を聞きに行ったり、海外のファッション展を視察に行ったりしながら、展覧会の形と参加ブランドを決めて行きました。
−これまでの「ファッションの展覧会」と言うと、所謂“御三家”をはじめとしたベテランブランドなどによる回顧展が多かったですが、そういったブランドを入れなかった理由を教えて下さい。
最初は、「COMME des GARCONS(コム・デ・ギャルソン)」※、「ISSEY MIYAKE(イッセイ・ミヤケ)」、「Yohji Yamamoto(ヨウジヤマモト)」からスタートして、“日本のファッション史を追う”というようなことも考えましたが、あまりに膨大な作業になるのと、いわゆる御三家中心にファッションを見るという視点は、もう散々海外でもやられているむしろ、あまりきちんと語られてこなかった、90年代から現代へとつながる流れを明確にしようという方向で、意見がまとまって行きました。- 1