うまいビールが飲みたい!【livedoorHOMME“酒特集” | vol.01】
ところで、ビール党も納得の、そうでない人も飲みたくなる、本当に「うまいビール」ってどんなものだろうか。ここでは誰もがつばを飲む究極の一杯とはどんなものかを追求していく。
第1回「うまいビール」の条件とは?
大ジョッキでググっと一気に、いやいや風呂上がりの缶ビールが……誰もがもつビールへのこだわりは千差万別、十人十色。しかし、誰もがうまいと感じるビールには、何か条件があるのでは……。
やはり疑問をぶつけるにはプロが一番。ということで今回はキリンビール広報部の山本武司氏にお話を伺った。
―――単刀直入にお伺いしますが、「うまいビール」の条件はなんですか?
山本武司(以下、山本)「私は3つの条件が必要だと思っています。『泡』『器』『温度』の3つです。」
―――『泡』にうまさの秘訣がある?
山本「おいしいビールに泡は欠かせませんね。ビールの泡には2つの役割があるのです。空気に触れて酸化するのを防ぐ、炭酸ガスが抜けるのを防ぐ、この2つです。こんないい働きをしてくれる泡ですが、すぐに潰れてしまっては台無しですよね。つまり、最後の一口までおいしく飲むには、きめの細かい泡が最後まで残っていること。これがおいしいビールの第一条件です。ちなみにお店で出されるビールは、ビアサーバーで泡を作ってビールにふたをしているのです」
―――たしかにお店で飲むビールには必ず泡がありますが、家庭で飲むビールでは難しいのでは?
山本「家庭で缶ビールを飲むとき、直接飲むと泡はありませんね。そこで第二の条件、『器』が必要となるのです。ぜひとも直接飲むのではなく、器に注いで楽しんでいただきたいのです。その時、ビールをそ〜っと注ぐのではなく、泡を作っていただきたい。私たちが提唱する『三度注ぎ』なら、クリーミーでしっかりとした泡が作れますよ」
―――その際の器はなんでもいいのですか?
山本「そこには好みがあるのですが、おすすめは『背の高いガラス製グラス』です。なぜ背の高いものがいいかというと、ビールは喉ごしを楽しみたい飲み物です。背の高いものでビールを飲むと、必ずあごが上がるのです。すると喉にダイレクトに入ってくるので、喉ごしをより楽しめるというわけです。試しに平べったい器でビールを飲んでみてください。違いがわかるはずです」
―――ガラス製グラスがいい理由は?
山本「それはぜひとも、目でも味わっていただきたいからです。あの黄金色がとてもおいしそうに思いませんか?(笑)もちろん他の器にもいいところがあります。例えば、近年陶器でビールを飲む方も多いと聞きます。内側の表面がざらざらとしているので、それによってよりきめの細かい泡を作ることができるので、好評のようですね。金属製の器は熱伝導率が高いので、冷たいビールを注ぐと器自体も冷たくなり、口を付けた瞬間によりヒヤッと感じます。その反面、ぬるくなりやすいという欠点もありますね。おもしろいのが木の器です。木は熱伝導率が悪いので、口当たりは金属製やグラスに対してはあまり好まれないかもしれませんが、ぬるくなりにくい特性があるのです。冬場に鍋を囲んで、なんて時にはおすすめです。このようにいろんなグラスで楽しんでもらいたいですね」
―――グラスによって温度が変わってしまうのですね。
山本「そう、おいしいビールの第三の条件、温度は非常に重要です。好みもあるので一概にはいえませんが、一般的には6〜8℃といわれています。冷たくしすぎるとビールの香りが感じられなくなり、ぬるいと喉ごしの爽快感が得られなくなってしまうのです。さらには外気温とも関係があります。夏の暑い時期にはやや低め、冬場はやや高めの温度がおいしく感じられる、という研究発表もあるんですよ。具体的には外気温35℃のときには6℃前後、25℃では10℃、15℃のときには10〜15℃が適温と言われています。つまり今の時期なら、より冷えたビールがおいしいはずです。近年では氷を入れて飲むビールや氷点下のビールなんてのも好評ですから」
―――ところで最後に、一番うまいと感じるビールは?
山本「仕事終わりの1杯はもちろん、読書をしながら黒ビールをゆっくり飲むのも捨てがたいですが……この時期なら麻婆豆腐のような熱々の辛い食べ物とキンキンに冷えたビールの組み合わせが最高ですね!」
うまいビール三か条
一、きめ細かいしっかりとした泡で、うまさをしっかりとキープすべし
二、背の高いグラスで喉ごしと美しい色を堪能すべし
三、季節に合わせて丁度良い温度で楽しむべし
一、きめ細かいしっかりとした泡で、うまさをしっかりとキープすべし
二、背の高いグラスで喉ごしと美しい色を堪能すべし
三、季節に合わせて丁度良い温度で楽しむべし
■キリンビール広報部 山本武司■
工場勤務、営業を経て2004年より、ビールの奥深さを伝えるビールセミナー講師を務めている。 2007年からは広報部ビール文化担当として、ビールセミナーとともにインターネット上の仮想大学「キリンビール大学」や、年間70万人以上のお客様が来場される「工場見学」も担当、多くの人にビールの楽しさや文化を伝えている。著書に「うまいビールの科学~注ぎ方によって味が変わるって本当?黒ビールとふつうのビールの違いはなに?~」(サイエンス・アイ新書)
【text=八木悠太 / photo=五十嵐鉱太郎】