クルマ色話 vol.3【トヨタ・プリウスα】日本人のシアワセの限界が垣間見える
小沢コージ
バブル期にソアラ、プレリュードを横目で眺め、トレンディドラマを見、合コンしまくったスーパーカーブームど真ん中イケメン自動車ジャーナリスト。現在『BESTCAR』『ENGINE』『DIME』誌ほか『webCG』『日経TRENDY』『carview』などwebでも大活躍!
吉田由美
当時、ミスコン荒らしとして20コ以上のミスの肩書きを持ち、某専門誌「○×のすべて」に助手席モデルとして君臨。「経歴は編集長より長いかも(笑)」(本人談)という業界きっての謎の美女。今はカーライフエッセイストの名のもと「ブログの女王」として自動車メディアはもちろんファッション誌に無くてはならない存在となっている。
バブル期にソアラ、プレリュードを横目で眺め、トレンディドラマを見、合コンしまくったスーパーカーブームど真ん中イケメン自動車ジャーナリスト。現在『BESTCAR』『ENGINE』『DIME』誌ほか『webCG』『日経TRENDY』『carview』などwebでも大活躍!
吉田由美
当時、ミスコン荒らしとして20コ以上のミスの肩書きを持ち、某専門誌「○×のすべて」に助手席モデルとして君臨。「経歴は編集長より長いかも(笑)」(本人談)という業界きっての謎の美女。今はカーライフエッセイストの名のもと「ブログの女王」として自動車メディアはもちろんファッション誌に無くてはならない存在となっている。
「いつかはクラウン」神話は完璧に終わった?
小沢:遂に出ましたプリウスα! 販売一ヶ月で受注5万2000台、目標の17倍だってさ。この数値ってもしやバブル期のマーク?並みかもしんない。
吉田:そりゃそうなんじゃない? 燃費はいいし、人は乗れるし、荷物も載るし、プリウスブランドだし、言うことナシでしょう。
小沢:言うことナシ……ってまさにその通りだと思うけど、正直、空しさっていうか、今の日本の限界みたいのを感じちゃったんだよね。これが本当にみんなの欲しいクルマなのかという。
吉田:ん? コージ君、ヤケにアンニュイなこというじゃない今日は(笑)。
小沢:だってますますスキないじゃん。特にインパネ。ベースはプリウスで、当然ハイブリッドで、3列シートのミニバン仕様を選べば7人も乗れて、荷物も200リッター積めてボディはデカ過ぎず小さすぎず、それでいてインパネはよりクオリティ高くって凄く実用的。
吉田:どう考えても草食系だけど、なにが問題? どこが嫌いなの?
「プリウス」に比べ、全長は155mm、ホイールベースは
80mm長くなっている。
小沢:別に嫌いじゃないよ。凄く良く出来てるし、文句の付けようなくって今のプリウスで飽き足らない人にはうってつけだと思うけど、さらに遊びっていうか、余裕が無くなった気がする。特にインパネだよね。カップホルダーは置けるわ、インパネとセンターの間にサイフは置けるわ、なんというか家で日曜日に掃除しまくってるお父さんが目に浮かぶ……。
吉田:?? なんか言ってる意味がよくわからないんですけど……。
小沢:それこそさ。昔だったらカローラから始まって、マーク?買って「いつかはクラウン」だったわけじゃない。出世魚みたいな夢があって、クルマはその象徴で、いつしかクラウンがセルシオになって、今じゃ「いつかはメルセデス」になったと思うけど、そういう確実なヒエラルキーがあった。
吉田:そうねぇ。今のメルセデスって確かにサクセス系サラリーマンの夢なのかもねぇ。アタシも結婚したらCクラスワゴンとか乗りたいかもぉぉ〜(夢見がちに)
小沢:ま〜だそんな寝言吐いてんの!? なんてイジワルはさておき、俺今、個人的にはプリウスαとか買っちゃうと、人生の先が見えちゃうような気がしたのよ。ノーマルプリウスじゃ見えなかった自分の将来が。
吉田:それって中年のオジサマが遂に住宅30年ローンを抱えて「オレは一生このままなかぁ」とか嘆くのと同じような感じ?
プリウスαが売れたらモータージャーナリストは要らない?
小沢:近い! 限りなく近いと思う。っていうかさ。プリウスαが売れたら、今の自分の仕事がなくなるような気さえするわけよ。俺たちモータージャーナリストのお仕事って、どちらかっていうとカローラもいいけど、ゴルフもあるし、プジョーもあるし、もっというとフェラーリもありまっせ! って仕事じゃない? クルマでいろんな夢、ちょっとあり得ない夢まで語るんだけど、プリウス、それもプリウスαだとこれで打ち止めだって気がする。それくらいドライに完璧なクルマ。だってこのクルマに乗ったもう先はないじゃん。せいぜいプリウス・プラグイン・ハイブリッドか、電気自動車でしょう。ブランドとか美学ってあまり関係ない気がするのね。吉田:そこまで言わないけど、プリウスαの次に、メルセデス・ベンツとかってちょっとあり得ないかもしれない。
小沢:そうでしょう。っていうか姉さん自身、プリウスα買うような人と結婚したいと思う? いい人だと思うし、大切にしてくれると思うけど、日曜の夕方、夫婦で表参道ディナーってあり得ない世界だと思うよ。イケアでミートボールディナーか、自宅でサザエさん見ながら、でしょ(笑)。
吉田:いいじゃな〜い、シアワセじゃない!
小沢:ホントにそう思う? っていうかそういうマジメな人と付き合ったことある?
吉田:ない!(きっぱり)。っていうか思い直しちゃうと思う。途中まで「いいかな〜」と思って「こういう人と結婚した方が幸せなんだよなぁ〜」って付き合うけど、ふと思い返して「ゴメンなさい」(苦笑)。ってホントにそんな経験ないけどね。
プリウスのイメージを継承したインテリアデザイン。
センター部分に電源スイッチ、シフトレバーなどの駆動
系を操作するパーツを配置した、ごく普通のインパネ
小沢:まあそれが姉さんだよ。モデルの世界で生きてきた人。っていうかプリウスαみたいな世界がOKな人だったら、とっくに独身卒業してるでしょ。
吉田:ぶっ殺す……。
小沢:でもまあ、本当にプリウスαとか乗れる人っていいお父さんだと思う。いま風の普通に新しいモノとか好きで、子供も好きで、アウトドアとかも好きそうな。
吉田:つるの剛史とか乗りそうだよね。
小沢:そうそう。でも姉さんにはアプローチしてこない……。
吉田:お墓、さっき作っといたから(苦笑)
小沢:でもまあ、俺自身、プリウスα買うような人生送ってた方が確実に幸せになれると思うけど、そうじゃないってことだよね。どっちかっていうと古いポルシェ欲しいとか思っちゃうタイプだから。
吉田:同類じゃない。さっすがバラエティ自動車ジャーナリスト!
小沢:だからさ。プリウスαが人気っていうのは、確実に日本の体質の変化を表してると思うわけよ。俺たちの青春時代って、ぶっちゃけソアラにプレリュードだったわけじゃない。無理目なオンナとか夢を追うのが当たり前だったけど、今は現実が軽自動車で、夢はフィットハイブリッドとかプリウスαなわけでしょ。確かにそれは現実的で背伸びしてないわけだけど、なんか物足りなく感じちゃう。
吉田:いまさら草食系にはなれないもんね。私たち。
小沢:っていうか俺としてはなっちゃいけないと思ってて、だって世界は肉食系だからさ。アメリカにヨーロッパに中国行くとバリバリ肉食系なわけよ。実際プリウス、世界で売れてますかって、アメリカじゃ一部売れてるけど、ヨーロッパじゃ今イチだし、クルマはやっぱりその国の体質を表すわけ。プリウスみたいな「優しさ」で攻めればいいって意見もあるけど、それだけじゃダメだと思うんだよね。
吉田:無駄な抵抗な気もするけど……。
小沢:いやいやいつか報われる日が来るって。だからみなさんももっとおバカなクルマも買いましょう!
吉田:“も”ね(笑)
<主要諸元>トヨタ・プリウスα(7人乗り)
■ボディサイズ(全長×全幅×全高):4615×1775×1575(mm)
■総排気量:1797cc
■車両重量:1480kg
■最高出力:99ps / 5200rpm
■最大トルク:14.5kgm / 4000rpm
■モーター出力:82ps / 21.1kgm
■価格:300万円(Gグレード)
■トヨタ自動車「プリウスα」