【編集部的映画批評】新キャラが天才的にウザい


 公開から1ヶ月半経った「ナルニア国物語」の新作。現在の観客動員数ランキング(4月13日現在)は、7位まで落ちているがトップ10に入っている中で、アカデミー賞作品賞に輝いた『英国王のスピーチ』以外は3月以降の公開のものなので、それと比べると爆発力はないものの息の長さはうかがえる。今回、いささか時期外れではあるが、まだ劇場で観ていない人のためにこの作品を紹介しよう。

『ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島』

 7人のナルニア王を探す航海の旅が始まる!C.S.ルイスの名作を基にした冒険ファンタジーの第3章は、『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』のマイケル・アプテッドが監督に就任。ペヴェンシー家の次男エドマンドと末の妹ルーシー、いとこのユースチスはナルニア国へ戻り、今や王となったカスピアンと共に、行方不明の7人のナルニアの王を見つけるため航海に乗り出していく。

こういう映画こそ3Dで観なくちゃ!

最近、3D作品がたくさん上映されているが、“とりあえず3D”というかんじで、「いらない3D」「中途半端な3D」の映画が増えている。アクションやCGが特にすごいわけでもない作品をわざわざ3Dにしてしまったり、一部分だけが3Dになっていて「あれ?3Dあったっけ?」と上映後の思ってしまうものだったりと、高い料金を払って3Dでわざわざ観てがっかりと思ってしまうことが多かった。しかし、今回の『ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島』は待ってましたという感じであった。今までの第1章、第2章も勿論スケールが大きかったが、今回の3章は別格。人対人(もしくはそのサイズの生物)だった前作までと違い、今回はドラゴンが出るわ、海蛇のような怪物が出るわと、いわゆる“巨大生物”の登場があった。やはり巨大なものの迫力を伝えるのに3Dは打ってつけ。今まで以上の壮大さを感じることができた。やっぱりこういう映画の方が3Dにあっているのだろう。3Dを楽しめたのは『アバター』以来。

新キャラ“ユースチス”がウザすぎて笑える

第3章は、前2章と異なりペベンシー兄妹は、4人全員が冒険するのではなく、次男のエドマンド(スキャンダー・ケインズ)と末娘のルーシー(ジョージー・ヘンリー)の2人となっている。そして、存在感が大きかった長男・長女の穴埋めをする新キャラクターが、いとこのユースチス(ウィル・ポールター)である。このユースチスは、意地悪な性格という設定なのだが、本当に神がかり的にウザい。いたずらをして兄妹を困らせたり、弱い癖に強がりをいったり、ナルニアの世界での冒険でも戦いから逃げ出そうとして敵に逆に捕まったりと、本当にこんなウザい奴がいるのかと思うぐらいのウザさである。また、吾輩はこの映画を吹き替えで観たのだが、このユースチスの吹き替えをした「鋼の錬金術師」で主人公のエドワード・エルリックの声をやっているパク・ロミさんの吹き替えが本当に天才的だった。例えば「OK、知ってたさ。勿論知ってたとも。」とか強がる場面など、様々な場面で見せるユースチスのウザさを完璧な声の調子で表現している。この“ウザさの谷”が深いので、後に来る“改心後の山”が一層高く見える。ウザさを極めるとそのギャップで後の結末が何倍も輝いてくる。

カスピアン王が良い人だった

第2章に引き続き、今作は“王”に成長して登場したカスピアン。そのカスピアン王を演じたベン・バーンズが陽気な人物で非常に“良い人”だった。吾輩は“インタビュー:ベン・バーンズ「自分にとって人生の冒険だと思います」こちらのインタビューのために彼に会った。すらりとしたイケメンスターなので、ちょっと性格がきついのかなと思っていたのだが、全くそうなことがなかった。インタビュー中も「本当は筋力トレーニングが嫌いなんだよね」と包み隠さず本音を話してくれたり、テーブルに置き忘れたカメラを手に取り、持ち主のカメラマンを逆に写しておどけて見せたりと本当に陽気な人物だった。カスピアン王のクールさも良いが、ベン自身の陽気さも魅力的。今後の活躍も応援していきたい。

 全体評価である。やはり国という単位から世界に出航したので、その冒険度はかなり増している。そして、今作を観る前は、勿論前作を観たくなるが、観た後でも復習の意味で観たくなる。実際に3章を観た後に1章を観たところ「うわー、ルーシーってこんなに幼かったんだ」と驚く。ルーシー役のジョージー・ヘンリーの成長ぶりはすごい。しかし、この映画の中で一番は、何と言っても“ユースチス”。憎たらしい時も、改心した後も、どちらも良い感じ。何やら次回作に出てくることも匂わしているので、今後も期待。

ヒーロー妄想のカンタの所見評価

壮大な冒険度:★★★★

共有する

関連記事

【カオス通信】自腹ガチ評価!春のB級映画まつり

映画の醍醐味はB級作品にあり! ということで、大作の影に隠れてひっそりと上映されている「面白いかどうか疑わしい」作品を緊急レポート。全部自腹での鑑賞なので、配給会社やスポンサー絡みのしがらみは一切ナシ。劇場のリアルな雰囲…

【気になるトレンド用語】誰のためのデジタル著作権!″DRM″は本当に必要なのか?

アップルの世界最大の音楽配信サービス"iTunes Store"が、DRMを適用していないEMIの音楽コンテンツ販売を開始するといったニュースが報じられるなど、"DRM"という用語がにわかに話題となっています。DRMは、デジタルデータ化した音楽や…

【コスプレ天国】艶姿!コスプレ・イベント「COSMODEギャザリンク」フォトレポート

秋葉原UDXにおいて開催された、COSMODE&COSMODE.NET主催のコスプレイベント「COSMODEギャザリンク」をレポートしましょう。イベント会場は、明るく開放的で綺麗。しかも秋葉原の駅からも近いのでアクセスはバッチリ。イベント内容も、…

【ケータイの疑問】ソフトバンクのホワイトプランは本当に安いのか? 店頭お持ち帰り価格″0円″の秘密とは?

はじめまして、memn0ckといいます。今回から、日本のケータイ市場について、あれやこれと探っていくことになりました。よろしくお願いします。さて、今週は月曜日にNTTドコモが同社のフラッグシップモデルとなる「FOMA 904i」シリーズを…

【モバイル通信の実力チェック】高速・低コスト!ブロードバンド端末 ″EM・ONE″は、本当に高速か?

イー・アクセスが提供する"EM モバイルブロードバンド"は、最大3.6Mbps※のHSDPA通信サービスを月額基本料金5,980円の定額で利用できる高速な通信サービスだ。ほかにも最大3.6MbpsのHSDPA通信サービスを提供している通信事業者は存在する…