タブレッド端末元年となる2011年の市場を制するメーカーはどこか【世界のモバイル】


日本でも急激に増えてきたタブレット型端末。2011年は製品数が一気に増加し各社間の競争が激化することが予想されている。タブレット型端末はスマートフォンとネットブックの中間に位置する製品であることから、携帯電話メーカーのみならずパソコンメーカーの参入も相次ぐなどメーカーの顔ぶれは幅広い。

AppleがiPadを市場に投入した2010年4月から遅れること半年、本格的な対抗機種と言えるSamsung電子のGalaxy Tabが登場したことでタブレット型端末の競争がいよいよ始まった。

今後各社が主力とするのはiPadより一回り小型な7インチディスプレイサイズの製品であり、多くがAndroid OSを搭載している。このディスプレイサイズに対してAppleのCEO、Steve Jobs氏が7インチは中途半端であるとの反応を示したが、各社が相次いで製品を投入する背景にはこのサイズでも十分ニーズがあるという判断を下しているからだろう。事実、Galaxy Tabは発売から2ヶ月で100万台を販売しており好調な出だしとなっている。

今後は他社が相次いで類似した製品を出してくることから、7インチのみならずiPadライクな10インチサイズの製品も増えてくるだろう。また2011年はタブレット型端末にも適しているAndroid OS 2.3の普及が始まることから端末製造の敷居が下がり、メーカーの新規参入が容易になる。中でもパソコンメーカーは新たな収益源としてタブレット型端末をラインナップに加える企業が増加するだろう。
2011年はタブレット元年になるだろう

デスクトップパソコンの価格下落後、パソコンメーカー各社は小型化と高性能化により単価の高いノートパソコンに製品シフトを図っていった。だがネットブックの登場以降は価格下落が続く一方であり、もはやパソコン製品だけでは利益を上げることは難しくなっている。またメーカーが単独で販売促進を行わなくてはならないPC製品に対し、3G回線を内蔵したタブレット型端末であれば通信事業者との協業により販売経路やターゲット層を広げることも可能だ。そしてタブレット型端末の普及が広がれば、いずれはネットブックの購入層を大きく奪っていくだろう。タブレット市場への参入はパソコンメーカー各社にとっては必須の動きなのだ。

さらには中国メーカの動きも見逃せない。日本でも"中華Pad"の俗称で秋葉原などで販売されている中国製のタブレット型端末は1万円台とすでに低価格で販売されている。これらの製品は品質は大手メーカー品よりは落ちるものの、価格は半分以下であり手軽に購入できる魅力は大きい。そしてこの中華Padも新しい製品が続々と出てきており、品質も少しずつ向上しているのである。それらに加え中国の大手、インフラベンダーのHuaweiやZTE、スマートフォン/PCメーカーのLenovo、さらにOEM/ODMメーカーからもタブレット型端末が続々と出てくるだろう。

そして忘れてならないのは日本勢である。東芝がヨーロッパ向けに製品を発売したのを皮切りに、シャープのアメリカ進出もアナウンスされている。携帯電話では世界市場への参入を果たせなかった日本メーカーの躍進に期待したいが、タブレット型端末市場はそれ以上に競争が激しくなりそうである。
NECは海外の展示会でタブレット型端末をアピール

ところでタブレット型端末は手軽に持ち運べることからスマートフォンとは違った用途も期待されている。その最大の用途が電子書籍の利用だ。

だが電子書籍先進国のアメリカではAmazonのKindleのシェアが半数以上と高く、鳴り物入りで登場したAppleのiBookstoreの利用は期待したほどにはなっていないという。紙の書籍をそのまま電子化したとも言えるKindleに対し、多機能が売りのiPadは書籍の代わりにはなり得ないということなのだろうか。確かにiPad上で新聞を読むのであれば、電子新聞ではなく各新聞社のWEBサイトやRSS配信を見たほうがiPadらしい使い方と言えるかもしれない。

タブレット型端末は新しいカテゴリの製品であるだけに、ハードウェアだけではなくソフトウェアのユーザーインターフェースや対応コンテンツのレイアウトなどはまだまだ改良していく余地があるだろう。すなわちタブレット型端末はまだまだ未完成の発展途上の製品と言えるのではないだろうか。

スマートフォンを大きくしただけ、あるいはネットブックからキーボードを取り外しただけ、といった中途半端な存在では消費者の飽きも早く一過性のブームで終わってしまうかもしれない。タブレットに最適化されたサービスやアプリケーションの登場ももちろん必要だが、消費者が最も気にするのはやはり端末製品そのものである。

今後新規参入も含めた各社がどんなタブレット型製品を市場に投入していくのか、今から大変楽しみである。

山根康宏
著者サイト「山根康宏WEBサイト」

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