AndroidがiPhoneを凌ぐ急成長で2010年の主役となった理由【世界のモバイル】


2010年を振り返ると、最も目立った動きはスマートフォン出荷台数の急増だったといえるだろう。調査会社Gartnerの報告によれば2010年第3四半期のスマートフォン出荷台数は約8千500万台となり、昨年同期の約4千1000万台から96%の伸びとなっている。2010年通年では昨年の倍となることは確実で、スマートフォンの携帯電話全出荷台数におけるシェアも20%にまで達している。また日本市場もここに来て各通信事業者がスマートフォン新製品を次々に投入するなど、海外と同じ傾向になりつつあるようだ。

このスマートフォン急増を牽引したのはAndroid端末だ。

Gartnerによれば同年第3四半期のAndroid OS搭載端末の出荷台数は2千500万台で昨年同期の140万台から1440%もの急成長となっている。スマートフォン全体におけるシェアも3.5%から25.5%となり、AppleのiOSを抜いてSymbianに注ぐ第2位にまで上り詰めている。成長が著しいiOS端末の伸びが同期比較で190%であったことと比較すると、Androidがいかに急激に販売台数を増やしたかがわかるだろう。

Androidの急増は、やはり端末の数が大幅に増えたことが大きな要因だ。海外のGSM/W-CDMA端末のカタログサイトともいえるGSMARENA.COMで2010年にアナウンスされたAndroid端末の数を数えると実に70機種で、これは毎週1機種以上の新製品が登場した計算となる。一方スマートフォンでもシェア1位のNokia/Symbianは20機種にすぎず、シェアの伸びはわずかに止まっている。

このように端末の選択肢が多いということはそれだけ消費者の個別のニーズにマッチした製品が存在しているということでもあり、Android端末の急増も新製品の数を見るだけでも大きく理解できるところである。
Android端末の新製品を矢継ぎ早に投入するHTC

またこれまではiPhoneに対抗しうる製品がなかなか現れず、モバイルインターネットに適したスマートフォンはiPhoneの一人勝ちであった。だが2009年後半に北米で発売されたMotorola Droid以降、SamsungのGalaxy SやHTCのDesireなどiPhoneに肉薄する操作性を持った製品が増えている。加えてiPhoneは通信事業者との固定契約が必須であり、事業者以外からの販路が無い国も多い。これに対してAndroid端末はメーカーによる単体販売もされているなど、端末の購入手段や維持費の敷居はiPhoneよりも低いのが事実だ。

もちろんiOS/iPhoneの統合された環境はすばらしく、他社が追いつき追い越すことは今後も難しいだろう。だがそのiPhoneもアンテナの感度問題やホワイトバージョンの遅延など何かしらの問題を抱えている。そして何よりもこれまでは他社の製品がiPhoneに対して満足度でせいぜい半分程度のものしかなかったものが、2010年に登場したAndroid端末のいくつかはおそらく70-80%くらいまでその差を縮めたのではないだろうか。今後その差が縮まらなくとも、そのレベルで十分な消費者は選択肢が多く端末も買いやすいAndroidを選んでいくだろう。

Android OSもいよいよ2.3を搭載した製品が登場し、Tablet製品も2011年は多くのメーカーから登場する予定だ。そして中国のODMメーカーなどからもAndroid端末は多く登場するだろう。中国のチップセットメーカーもAndroidに特化した統合チップセットを開発しており、山寨機と呼ばれる中国の闇製造メーカーや無名メーカーも端末の高機能化を図るためにAndroid OSを選択する機会が増えていくだろう。
中国メーカーもAndroid統合チップセットを開発している

AppleはAndroidの急成長を横目で見ながら、今後は端末の販売台数ではなく利益やアプリケーションの数などを重視し、その結果iOS端末からの収益は今以上に伸びていくだろう。対するAndroidは数は増えるものの複数のOSバージョンやハードウェア規格の混在により消費者に混乱が生じる恐れもある。

だが数の上で覇権を握るということは、業界全体の今後の動向に大きな影響を与えるポジションを握るということでもある。これまではiPhoneの動きに対して各事業者が様々なアクションを起こしてきたが、今後はその役割をAndroidが担うことになりうる可能性も高い。例えばAndroid 2.3はNFCを正式にサポートしたことから、今後海外ではAndroid上でNFCを利用したサービスやアプリケーションが急激に増えるだろう。世界の主要都市では当たり前となった非接触ICカード乗車システムも、来年後半にはAndroid端末が全世界で対応、そんな時代になっているかもしれない。

スマートフォンでも1位の販売数を誇るNokiaも今はシェアの下落食い止めに必死であり、過去の影響力の復活よりも売れる製品造りに翻弄するだろう。iPhoneは6月に次の新製品が発売され、消費者に新しい体験を与える斬新な機能が搭載されることが予想されている。そしてBlackBerryやWindows Phone7も続々と新しい製品が市場に登場するだろう。

このように2011年もスマートフォン市場は大く盛り上がるだろうが、その中心となるのは製品数で圧倒的な数を誇るAndroid端末となるだろう。2011年は各社、各OSのシェアがどのように変動していくのか目が離せない1年になりそうである。

山根康宏
著者サイト「山根康宏WEBサイト」

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