少年のように明るい世界一の写真家集団で活躍する71歳の日本人写真家【新-写真空間】


世界一の報道写真家の集団として知られているマグナム・フォト所属の写真家たちによるマグナム・フォト東京支社創設20周年記念写真展「50 の情熱」が銀座リコーフォトギャラリーRING CUBE において2010 年12月15 日(水)より開催している。

マグナムフォトは、ロバート・キャパの発案で創設され、写真家の著作権の確保や地位向上を実現した。また、マグナム・フォトの正会員になるには、非常に難しいことでも知られている。

マグナム・フォト所属の正会員全員(50名)の最新作品が一堂に会する写真展は世界初となる。
© Steve McCurry/Magnum Photos

今回、1960年代からマグナム・フォトに所属して活動を続ける久保田博二氏にお話を伺うことができた。

■少年のようにおおらかで明るい71歳
久保田博二氏

久保田氏は、1988年からマグナム・フォトの正会員となったが、当時は現在より会員になる規則も複雑でなく、世界の写真家との交流から会員となっていたという。

マグナム・フォトというと創設者であるキャパらのイメージから報道写真家の集団という印象が強いが、久保田氏によると、必ずしも社会理念をもった貴重な社会活動をしている写真家ばかりではないという。

先輩の会員は数名しかいないとう久保田氏は「写真を専門に勉強してきた人は多くなくよ。普通に学校を卒業して、一般知識を持つ人のほうが、いいと僕はおもっているんだ。」いう。

それにしても久保田氏は、現在71歳。とても71歳にはみえないほど、元気で明るい。
写真は歩くから元気だというが、それ以上に快活で少年のような明るさは、心の健康を強く感じた。

なぜ、これほど明るい精神を維持しているのを伺ってみると。
「自分が好きなことをやる。それが一番」と、好きな写真を撮り続けていることをあげた。
© Jonas Bendiksen/Magnum Photos

■マグナム・フォトの伝説
少々下世話だが、世界一の写真家集団マグナムフォトの正会員になる経済的なメリットについて伺ってみた。

「個人個人は、豊かな生活してるよ。どうしているかはわからないけど。お金がなくても堂々としてる人は多いね。元々金持ちという人もいるけど、そういう人ばかりではない。」

「創設者や初期の人はインテリだったから、社会的な撮影活動のために生活で苦労した人もいるみたいだけど。ロバート・キャパの逸話に、お金がなくなると金庫からお金をだして。競馬で資金調達したなんて話もあるよ。」と、おおらかなグナム・フォトの世界を伝えてくれた。
© Harry Gruyaert/Magnum Photos

■零下25までなら平気?
久保田氏の最近の活動をお聞きした。
「きてくれといわれたんで、内モンゴルにいく予定なんで、トレーニング始めたよ。マイナス25度くらいらしのと、レアアースがあるんだそうだ。」と、楽しそうに語る久保田氏は、少年のようだった。

実は、久保田氏は今回の取材に遅刻したのだが、その理由が、ハッセルブラッドの出物があったそうで、その取り置きなどの交渉をしていたのだそうだ。そのハッセルでソニーの大賀 典雄を軽井沢大賀ホールで撮影したいという。どこまでも天真爛漫な写真家である。
© Jim Goldberg/Magnum Photos

■マグナム・フォトとは
1947年、ロバート・キャパ(ハンガリー生)の発案で、アンリ・カルティエ= ブレッソン(フランス人)、ジョージ・ロジャー(イギリス人)、デビッド・シーモア(“シム”・ポーランド人)らが創設した写真家の集団。写真家の権利と自由を守り、主張することが目的とされ、以降、様々な国籍の優秀な写真家たちが集まり、会員自らが出資して運営を続けている。

MAGNUM PHOTOS


久保田博二
早稲田大学政経学部を卒業後、写真家を志し渡米。65年よリマグナムに参画。ニューヨーク、シカゴに6年間滞在し、68年に帰国。
1969年復帰前の沖縄を集中取材。1975年にほサイゴン陥落を取材。これを機に、ビルマ、朝鮮民主主義人民共和国、中国の長期取材を始める奄ど「アジア」の撮影を本格的にほしめる。1985年には、7年間の中国取材を終了。中国全省を撮影ずる。これらを写真集として世界中で出版。写真展も米国、ヨーロッパ諸国、中国など世界の代表的な美術館で開催され極めて高い評価を得た。
1983年度、毎日芸術賞を受賞。
1988年末よリ92年にかけてアメリカ合衆国全州を取材。写真集「アメリカの肖像」として全世界で出版。この写真展は、アメリカを皮切リに、日本、アジア、ヨーロッパなど世界各地で開催。1997年よリ写真展「Out。fthe East」が世界規楳で巡回。同写真集も出版される。
1999年写真集及び写真展「アジアと食料」を完成。写真展ほ、ニューヨーク国連本部、フィレンツェのベッキオ宮殿など数力国で開催された。2000年から4年の歳月をかけ日本各地を取材。2005年2月、写真集「JAPAN」出版。
マグナム・フォト東京支社代表。在小田原。


リコーフォトギャラリー「RING CUBE」

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