iPadで銀座の「壁」と出会う 新陳代謝が見る街【新-写真空間】


地上8階から銀座の景色を眺めながらiPadを操作する。横では撮影の動画放映がモニタから流れる。そんな楽しげな杉浦貴美子写真展 「壁-地球に垂直な平面-」が開催中だ。

リコーフォトギャラリー「RING CUBE」のサポートスタッフDoughnutsは、ワークショップやイベントサポート、オリジナルグッズ提案、そして同ギャラリー8Fでの企画展プロデュースも行うボランティアグループだ。

今回の杉浦貴美子写真展 「壁-地球に垂直な平面-」は、doughnutsのメンバーが作家の選択から展示企画コンセプトを作成しただけでなく、展示物の一部制作(動画撮影)まで協力している。

■3つのゾーンで銀座の壁と街を表現する空間
「壁-地球に垂直な平面-」が、通常の写真展と一線を画しているのが、3つのゾーンからなる展示だ。

両側にプリントされた壁のエントランスを抜けて写真展に入ると、中空につられた壁の写真に迎えられる。写真は杉浦貴美子氏が、自らの足で歩き目にした「壁」たちの写真だ。あたかも杉浦氏が歩いた道程を再現するかのように、ランダムに通路をイメージして配置されている。
壁は、地球に垂直な平面

目の前の浮き上がる「壁」たち

■ムービーで見る壁の撮影
杉浦氏は、写真を撮ること以上に、「壁」と出会うために街を歩くことが好きだという。そうした彼女の「壁」や「街」とのかかわり方が、撮影風景のムービーによって知ることができる。
ムービーで見る壁を撮り歩く杉浦氏の撮影風景

■iPadで自分の写真撮影場所も見られる
今回の写真展で、もっとも斬新な試みがiPadを利用した展示だ。
ここでは、杉浦氏が撮影された写真が、iPad上のマップに表示されている。そのアイコンをタップすると、写真が拡大され、どこで撮影されたかを知ることができる。
3台のiPadで撮影場所と写真が繋がっていく

また、このiPadのマップ上には、会場に訪れた人も参加できるのだ。
同ギャラリーのデジタルカメラ無料貸し出しサービスでカメラを借りて、杉浦氏が自身で歩き作成した銀座の壁マップを手に撮影した画像をこちらのページから投稿すれば、掲載されるのだ。また、あらかじめ写真を投稿し、会場のiPadで探すという楽しみ方もできそうだ。

【投稿方法】
1.あなたの視点で壁写真を撮影
2.杉浦貴美子氏のウェブサイトにアクセスしトップページにあるバナーをクリック
3.お名前を記入、撮影場所を地図上で選んで、写真をアップロード*するだけ。
※アップロードしていただいた作品は、一旦お預かりし、スタッフのチェックを経て会場のiPadおよびGoogle Picasa上で公開させていただきます。内容により一部編集させていただく場合や、公序良俗に反するなど展示にそぐわないと判断した場合、非公開とさせていただく場合がございます。あらかじめご了承ください。
銀座の景色を眺めながらiPadで写真を見る

■doughnutsスタッフの熱意に
この企画の依頼が杉浦氏に舞い込んだのは、2010年の4月だったという。当初は、写真家として活動はしていたわけではないので断ろうと思っていたという。しかし、doughnutsスタッフの熱意と企画内容を聞き、既存の写真展でではない面白さを感じ引き受けたという。杉浦氏の撮影風景を追ったムービーは、doughnutsスタッフが本格的な撮影チームを組んで撮影したという。当初は、展示されている3案以外にも、様々な案があったが、この3案に絞りこんだそうだ。

■銀座は新陳代謝が見る街 「壁」を目的に歩く
杉浦氏に、なぜ銀座の「壁」なのか、伺ってみた。
「最初に気になった壁のひとつが銀座だった。それから3年後に銀座を歩くと、街の移り変わりが新陳代謝のようの見てとれたんです。銀座は人の身の丈で感じられる変化が起きている街なんです。」と、教えてくれた。

杉浦氏が「壁」を撮りはじめたのは、5年くらい前からで、「壁」には、絵画や抽象画のような美しさがあると杉浦氏はいう。
「経年変化の美しさ、不特定多数の人がかかわった営みの美しさがあると思っています。実は『壁』を歩いて見るのが目的で、写真を撮るために『壁』と向き合ってないんです。」

■銀座の壁マップを自身で歩いて作成
doughnutsメンバーとで決めたiPadとマップを使った展示は、杉浦氏がやりたかった企画だ。
「実際の銀座の景色を見ながら、iPadマップ上にある壁写真の場所をリンクさせたくて、銀座の街が見るように、オープンにしていただきました。」また、実際の銀座の壁マップまで作成し、観客が参加できるようにもした。

また、会場では杉浦氏が自分の足で銀座を歩き回って作成された「銀座の壁マップ」が無料配布されている。
「銀座を4ー5日歩いて、最後は自転車を借りて走って、作成しました。スタッフにもやり過ぎといわれました。」と、杉浦氏は、「壁」との出会いを心底楽しんでいるようだ。

杉浦氏は、「会場で配布しているマップを片手にカメラを持って「壁」と「街」を歩いてみてほしい」そうだ。

【作家プロフィール】
杉浦 貴美子(すぎうら きみこ)
1974年愛知県生まれ。
武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程中退。テキスタイル作家活動を経て、壁の写真を撮るように。2008年、CET08(セントラルイースト東京)にて作品展示&撮影ワークショップを開催。2009年、写真集『壁の本』を洋泉社より刊行。現在、東京在住。

Doughnuts企画 杉浦貴美子写真展 「壁-地球に垂直な平面-」

リコーフォトギャラリー「RING CUBE」

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