NatsuLion for iPhone作者は超人見知りなのにコミュニケーション派【注目クリエイター列伝】


話題のクリエイターを紹介する「注目クリエイター列伝」の第2回は、iPhone用のTwitterアプリケーション「NatsuLion for iPhone」開発者の森琢磨(もりたくま)さんだ。

森さんの代表作「NatsuLion for iPhone」は、今話題のつぶやきコミュニケーションTwitterをiPhoneやiPod touchで簡単にコメント投稿できる人気アプリケーションだ。

■趣味から本業へ! 退職して独立
森さんは、iPhoneアプリの開発にいつごろから取り組んでいるのだろうか。
「iPhoneアプリを作り始めたのは、AppleのAppストアがオープンして、SDKが入手可能になった頃からですから結構初期から取り組んでいますね。もちろん、当初は趣味の延長でした。」と、開発環境が提供されてすぐに飛びついたという。

当時の森さんは、自宅開発の会社で映像・グラフィック関係における構築環境の開発を行っていたそうだが、最近、同社を退社し、フリーとして独立したという。

「すごく最近のことなんですが、先月(7月)に会社を辞めまして、iPhoneアプリの開発とiPhoneアプリ参入のコンサルタント業に専念することにしました。」と、森さんは、現在の近況を語ってくれた。

仕事でのアプリケーション開発とコンサルティングの仕事は、半々ぐらいの割合だそうで、おもに教育関係や映像関係などのコンテンツやウェブサービスを展開している企業からのiPhoneアプリ参入の希望が多いそうだ。
「よくご相談を受けるのが、iPhoneアプリ市場に参入したいけど、どうしていいかわからない、自社のサービスをiPhoneアプリで展開したいけど、どうすればいいかといったものですね。企業のiPhoneアプリでは、当初はビュワー系のアプリケーションの要望が多かったのですが、最近はウェブサービス系の要望もでてきたことで、次の段階に成長しているのかもしれませんね。」と、iPhoneアプリ市場が変化しつつあることを感じているという。

■iPhoneアプリ開発と公開は驚きと楽しさがいっぱい
森さんにとって、iPhoneアプリの開発とアプリの公開は、驚きや新しい発見がいっぱいだったようだ。

●パソコンのような作り方では駄目
森さんは、iPhoneアプリ開発は、やはりパソコンのアプリ開発とは大きく違うという。
「iPhoneのアプリ開発は、Windowsなどのパソコン系アプリ開発のような作り方では駄目なんです。モバイルはメモリが元々少ないので、組み込み型のような開発を心がけないと駄目なんですよ。開発のフレームワークはよくできているのですが、Macのアプリを作るような感覚でつくると、メモリ不足などがおきてうまくいかないんです。いかにアプリを小さく作るかが大事ですね。画像とかの扱いは特に気をつけないといけないです。」と語る。

画像サイズなどは、一番メモリを圧迫する要因となるそうだが、森さんは画像関連の開発を経験していたことがiPhoneアプリ開発でとても役だったという。

●Appストアも大変? いろいろあったアプリ公開
Appストアでのアプリ公開でも、いろいろな驚きがあったとう。
「NatsuLion for iPhone」を2008年8月リリースした際、アップルの審査は通ったはずなのに販売ができない状態が2か月ほども続いたという。2か月後には無事販売が開始されたそうだが、未だに遅れた理由は不明だという。

またアプリの名称に関してもいろいろとあったという。
「『NatsuLion for iPhone』は、元々の名称は『NatsuLiphone』だったんです。一度はこの名称でアップルの審査を通ったのですが、後で『iphone』というワードがはいっているのでガイドライン上は名称を変更しないと駄目といわれて、いまの『NatsuLion for iPhone』になったといった経緯もあります。Appストアには、当初はイライラもありましたが、最近はこれだけ急成長しているのだからアップルも大変なんだろうなという気持ちにもなりました(苦笑)。Appストアには、まだ謎は多いですね。」 と、森さんはトラブルも楽しんでいるようだ。

●ユーザーとのつながりの中で生まれた『NatsuLion for iPhone』
森さんは、iPhoneアプリ開発で、これまでのパソコンアプリの開発とは違ったうれしい体験をされたという。
「『NatsuLion for iPhone』は、開発時点で、ブログ上でオープンにして開発をすすめたんです。β版の公開時もAppストアでなく100人限定の配布を行ったところ、公開すると直ぐにバグフィックスの連絡をいただくなど、ユーザーとやりとりを通してアプリを開発できたのは、凄くうれしい体験でした。ユーザーを身近に感じながら作れたのは大きな収穫でした。」と、ユーザーと繋がるiPhoneアプリケーション開発の楽しさを知ったという。
NatsuLion for iPhone


●ユーザーのために、ここは改善してほしい
iPhoneアプリの開発を十分に堪能している森さんだが、改善してほしいところもあるという。
「現在のAppストアでは、修正プログラムを公開しようとすると1週間ほどかかってしまうんです。もっと早く修正版をお届けしたいんですよね。特に有料のアプリケーションを提供する際は、ユーザーの方にまってもらわないといけないので、申し訳ないと感じています。」

■海外での成功を目差す!
独立した森さんだが、iPhoneアプリのビジネスをどう考えているのだろう。
「まだ、あまり具体的には考えてはいないのですが、有料のアプリケーション販売では、まずは1万本を目標にしたいですね。そのため、独自作成のアプリは、英語版をベースに海外マーケットをターゲットにして開発しています。コンサルティングなどの案件は、国内市場をターゲットにすることが多いのですが、オリジナルアプリは、やはり市場規模の大きな世界マーケットで勝負していきたいですね。ただ、海外市場でどのようにプロモーションしていくかという課題はありますけど。」と、国内と海外市場でのビジネス取り組みについて、抱負を語ってくれた。

また将来、会社法人にする予定などを聞いたところ
「それも考えてないわけではないのですけど、会社を構えるよりプロジェクト毎にクリエイターをつないでいくビジネススタイルにも興味をもっています。組織としての会社という取り組みは、今となっては違和感があるというのが正直な気持ちです。会社という形には良い面もあるのですが、これまでの会社組織優先の日本型開発とは違いフットワークの軽いビジネスができるといいなとも考えていたりします。」
森さんは、クリエイターという単位が繋がる新しいプロジェクトビジネスという形態にも興味津々のようだ。

■森琢磨さんは、こんなエンジニア
さて、1978年生まれ、31歳のiPhoneアプリ開発にどっぷりと浸かっている森さんとは、いったいどんな人物なのだろうか? プライベートな森さんも、探ってみよう。
シャイなのに人好きな森琢磨さん


●楽しい仕事が好き やりたくない仕事は……
「そうですねぇ、趣味と仕事の境目がないというか、あまり意識してないですね。元々、プログラムは趣味から始めたこともあり、楽しんでやっているせいか、たのしい仕事をしようと心がけます。これまでも楽しんでやっているから、成果が出ているとも思っています。」と、楽しい仕事をしているという。

しかし世の中、楽しい仕事ばかりではない。森さんは、楽しくない仕事はどうしているのだろうか。
「そうですね、仕事をしていれば楽しくない仕事というのも出てくるわけですが、やりたくないから断るということはしないです。ただ、その仕事が楽しくなるようにクライアントとコミュニケーションをとって、変えていこうと努力していますね。クライアント自身も要望していることが本当に望んでいる目的と違っていたなんてことも結構あるので、楽しい仕事になるようジタバタコミュニケーションしています。」と、森さんは意外に辛抱強いコミュニケーション派であるという。

●コミュニケーション派なのに超人見知り?
仕事ではコミュニケーションを大事にする森さんだが、プライベートでは超人見知りだそうだ。
「ええ、すごく人見知りです。立食パーティとかも苦手です。知っている人がいれば、その人のそばにいたりして、初対面の方とも話しますけど、知り合いとかがいないと会場の隅っこに一人でいたりします。(苦笑)」

森さん曰く、コミュニケーション能力は、仕事上で必要に迫られて覚えたスキルだそうで、プライベートの森さんは、シャイな人なのだそうだ。ちなみに写真を撮られるのも苦手だそうで、取材中の撮影では終始照れっぱなしだった。

●就寝は朝!きっちり夜型の生活スタイル
森さんの日常生活は、朝方まで作業して、夜明け頃に就寝。午前中は爆睡という、しっかり夜型の生活スタイルなのだそうだ。朝早起きして作業をするスタイルも試したそうだが、結局夜型に落ち着いたそうだ。
「夜型になっているのは、夜のほうが静かで集中できるからです。騒音とかが苦手なこともあり、ついつい夜型になっていまいました。選挙カーとか、苦手ですね。」

夜型の森さんの食生活はどうしているのだろう。
「食事は和食やカレーとかが好きですけど、作業していると食べるのが面倒になっちゃうタイプです。食事は普段でも1日2食くらいですかね。ただ、作業中の甘いもの(=チョコ)は常備しています。時々、ものすごく集中して考えると頭が真っ白になって考えられなくなることがあるので、糖分の補給は必要なんです。一応断っておきますが、チョコは主食ではなく、あくまで補助食です。」と、森さんもプログラマ的な草食系の食生活を送っているという。

●マイブームは夜景?
ちなみに今のマイブームは、仕事で出向いている六本木アカデミーヒルズからの夜景だそうだ。

■一番大切なものは「つながり」! 結果よりプロセスを楽しむ
独立した森さんが、今、一番大切にしているのは、「つながり」だという。
「アプリ開発の時に協力してくれたユーザーさんたちやプログラマ仲間たち、人とのつながりを一番大切に感じています。もちろん道具としてもMacやiPhoneも大切ですけど、今は、人とのつながりが自分の世界や環境を広げてくれると思っているからです。」

最後に森さんのポリシーを聞いてみた。
「ポリシーを持たないころ、ポリシーにこだわらないことですかね。
人にあわせたり、仕事にあわせたりしながら、新しいことや楽しいことにあわせて自分を変えていきたいですね。」

いろいろなことを吸収したいという意欲をみせる森琢磨さん、今後の活躍にも期待だ。

森さんは、ToyCamera開発者の深津貴之さんとともに、10月2日のロクナナワークショップ イベントFlashユーザーのためのiPhoneアプリ開発入門に参加予定とのこと。興味をもたれた方は、イベントに参加してみるのもよいだろう。

FlashユーザーのためのiPhoneアプリ開発入門

森琢磨さんのブログ takuma104.log
森琢磨さんのTwitter:
NatsuLion for iPhone:

■【注目クリエイター列伝】
夢は世界標準へ!フラッシュサイト制作をもっと快適にかえる


共有する

関連記事

【ケータイラボ】ビジネスケータイ「813SH / 813SH for Biz」

「813SH」と「813SH Biz」は、シャープ製のビジネスケータイ。発売時期は、「813SH」が3月中旬以降、「813SH for Biz」が3月上旬以降を予定し、価格はいずれもオープンプライス。「813SH」と「813SH for Biz」は、機密保持の観点から…

【アキバ物欲】″弘法は筆を選ぶ?″できるユーザーこそ、キーボードとマウスにこだわる

パソコンの一番身近な周辺機器といえば、キーボードとマウス。日常的に使うデバイスということもあり、こだわりを持っている人も多い。キーボードやマウスを購入する人は、製品のどこを見て購入を決めているのだろうか。また、キーボー…

【世界のモバイル】売れる海外ケータイの秘密!ユーザーニーズに対応できない日本

携帯電話の全世界マーケットにおける日本メーカーのシェアは「その他」に入れられてしまうほど低く、海外の調査会社によるマーケットシェアの結果に、単独メーカーの数字が出てくることもここ数年は無くなってしまった。SonyEricssonが…

【世界のモバイル番外編】日本登場はあるのか?全世界が浮かれた″iPhone″狂乱騒ぎ

発表から5ヶ月の時間を経て、ようやく6月29日にアメリカで発売されたアップル初のケータイ「iPhone」。全米のアップルストアの前には、1秒でも早く手に入れようとする人たちの行列で埋め尽くされた。なかでも、NY店の前には100時間以…

【世界のモバイル】iPhoneを日本は受け入れられるか? キャリアからメーカー端末へ

Appleの携帯電話「iPhone」は端末の機能や使い勝手のみならず、これまでの携帯電話業界の商習慣とは異なる新しいビジネスモデルとしても注目されている。iPhoneの目新しさの1つが端末の販売方法だ。この新しい販売スタイルは日本でも受…