軍事から介護まで!人の限界を超える「パワードスーツ」の最前線【最新ハイテク講座】


近未来を描いたSF映画やアニメの世界には、人間の身体能力を増強させる「パワードスーツ」と呼ばれるアイテムがよく登場する。まるで夢のような話だが、今、そんなパワードスーツが現実ものとなってきている。

本田技研工業は階段の上り下りをアシストするスーツ「体重支持型歩行アシスト」の試作機を発表しているほか、筑波大学大学院システム情報工学研究科の山海教授は、人間と機械の融合複合分野として「サイバニクス(Cybernics)」の領域を研究しており、その成果のひとつとしてロボットスーツ「HAL」を発表している。
Honda、「体重支持型歩行アシスト」の試作機を公開 - 本田技研工業
ロボットスーツHAL - 筑波大学大学院 山海研究室

今回は、軍事から介護まで人間をサポートする「パワードスーツ」の最前線に迫ってみよう。

■パワードスーツの歴史とテクノロジーの進化
パワードスーツとは、どういうものなのか。パワードスーツはどのようにして誕生したのだろうか。これまでの歴史をみてみよう。

●パワードスーツとは?
「パワードスーツ」とは、文字通りに人間の能力を強化するためのスーツ。人体に装着することで驚異的な力を得たり、戦闘能力を高めたりすることができる。


●小説の世界から生まれたパワードスーツ
世界初のパワードスーツには諸説あるが、アメリカのSF小説家 ロバート・A・ハインライン氏が1959年に発表したSF小説「宇宙の戦士」に登場する架空の強化防護服の呼称が「パワードスーツ」だった。歩兵に戦車並みの装甲、ゴリラも容易に倒せる力などを持たせることを目的として開発された装備という設定だ。


●現実世界ではじめてのパワードスーツ
現実世界で初のパワードスーツは、ジェネラル・エレクトリック社が1961年に開発した「ビートル(Beetle)」とされている。ただし、「ビートル」は人間が乗り込むタイプなので、厳密には「パワーアシスト機器」というものとなる。
日本では、同様の機器としてテムザックの実用型レスキューロボット「援竜」がある。

実用型レスキューロボット「援竜」 - テムザック


■パワードスーツの種類とその技術
パワードスーツにはどのような種類があるのだろうか。代表的なプリンターとその技術を簡単にまとめてみた。

●軍事用パワードスーツ
米国防総省高等研究計画局(Defense Advanced Research Project Agency)は、兵士の身体能力を向上させるパワードスーツ「Exoskeleton」の開発を進めている。「Exoskeleton」を装着した兵士は100kgの荷物を運びながら、マラソン選手よりも速く移動ができるという
ヒトの限界を超えろ!! 脚力・腕力・持久力 3拍子揃った米軍パワードスーツ - マイコミジャーナル
Defense Advanced Research Project Agency(英文)

また、同局はマサチューセッツ工科大学に資金提供を行い、下肢外骨格を開発するプロジェクト「BLEEX」を進行させている。「BLEEX」は運動能力を支援するためのパワードスーツで、兵士が重たい荷物を運ぶ作業をアシストしてくれる。
BLEEX Project(英文) - UC Berkeley Human Engineering Laboratory


●介護の世界にロボットスーツ
HALとは、Hybrid Assistive Limbを略した造語であり、人の身体能力を拡張・増幅することを目的として開発されたロボットスーツだ。HALは身体の側面に装着する外骨格タイプのスーツで、人間の各関節部分にパワードユニットが取り付けられている。

人間が筋肉を動かそうとするときに発生する微弱な生体電位信号を皮膚の表面から読み取り、HALに内蔵されたコンピューターにより、パワードユニットが人間の動作をアシストして動く仕組みだ。これにより、重たい荷物でも無理なく運ぶことが可能となる。

HALの応用分野としては、医療福祉分野におけるリハビリテーション支援。具体的には、身体が思うように動かない人への自律動作の支援や介護に使用する。また工場などでの重作業支援や、災害現場でのレスキュー活動などへの応用が期待されている。

ロボットスーツHAL - 筑波大学大学院 山海研究室


SF小説の中の話として登場したパワードスーツは、軍事利用への開発から始まり、介護への応用が期待される分野へと発展してきた。今後、パワードスーツが身近になれば、我々の生活もより暮らしやすくなるであろう。


■こちらもオススメ!最新ハイテク講座 最新ニュース
「娯楽の王様」から「情報の王様」へ 地デジで進化するテレビの最新事情
パソコンの大掃除 どうすればいいの?「PCお掃除グッズ」最前線
メイドロボットも夢ではない!ここまできた「家庭用ロボット」最前線
ネットだけで終わらない!メインマシンへと進化し続ける「ネットブック」最前線
データ転送が現在の10倍に!未来の次世代インターフェイス「USB3.0」
【最新ハイテク講座】記事バックナンバー

共有する

関連記事

【気になるPC】快適ケータイ&パソコン!最新のBluetooth製品 一挙紹介

Bluetoothとは、東芝、エリクソン、インテル、IBM、ノキアが中心となり策定した短距離無線接続の規格。無線LANは文字通りにネットワークへの接続を前提としているのに対して、Bluetoothは様々な機器を無線で接続できる点が大きな魅力と…

【ケータイラボ】出先で利用するのはどれがオススメ? 最新の″カード型通信端末″をチェック

筆者は、出先で仕事をすることが多くあるので、ノートパソコンを持ち歩くことが多い。特に最近はモバイルタイプのノートパソコンが軽量化したことで、持ち運びに苦痛を感じなくなったから持ち歩くことが多くなった。また、無線LANに対応…

【最新ハイテク講座】冬ボーナスの一番人気「薄型テレビ」技術の最前線

2007年の冬のボーナスで購入したい機器のトップは、ITデジタル家電購入意向調査(07年冬ボーナス商戦編)によると「薄型テレビ」だという。「薄型テレビ」が昨年トップの「パソコン」を抑えて1位を獲得した背景には、地上アナログ放送…

【最新ハイテク講座】次世代DVDでハイビジョン放送を残そう!ブルーレイ vs HD DVD

NHKデジタル衛星ハイビジョンから始まったハイビジョン放送だが、2006年12月1日から関東・近畿・中京の3大広域圏で地上デジタル放送が開始され、ハイビジョン放送が一般家庭にも急速に浸透する下地が整いつつある。ハイビジョン放送の…

【最新ハイテク講座】なぜワンセグは移動しながらテレビが見られるのか

「ワンセグ」は、通勤や通学など、いつでもどこでもテレビ番組を楽しめることから、ケータイからパソコン、カーナビ、ゲーム機まで搭載されるほど人気のサービスに育っている。身近になったワンセグだが、家庭で見ているテレビとは違う…