話題の電脳フィギュアの「拡張現実」は、仮想現実とは似て非なる未来の技術?【気になるトレンド用語】


芸者東京エンターテインメントの開発した、触れる電脳フィギュア「ARis」が話題を集めています。

電脳フィギュアという名前の通り「ARis」には、フィギュアとしての実体がありません。実際の物体として存在しているのは「電脳キューブ」と呼ばれる立方体だけですが、パソコンに接続するとキューブの上に女の子が乗っているようにモニターには映ります。付属の「電脳スティック」で女の子に触ると、女の子が反応したり、服を着せ替えたりすることができます。

電脳フィギュア「ARis」は、「拡張現実」という耳慣れない技術を使っているそうです。この不思議な女の子を存在させている拡張現実とは、いったいどのような技術なのでしょう。


■「拡張現実」と「仮想現実(バーチャル・リアリティ)」
電脳フィギュアと聞くと、連想されるのがセカンドライフや自分の分身アバターなどの「仮想現実」ですが、この電脳フィギュアは「拡張現実」なる技術が使われているそうです。

●現実に仮想情報を「上書き」
「拡張現実」という技術の原理を簡単に説明すると、五感でとらえる現実の世界の情報に別の情報を「上書き」する技術です。たとえば現実世界で目の前に映るものに対して説明文をつけ加えたり、電脳フィギュアのように現実にはいないものを目の前に出現させたりすることを指します。

それでは、拡張現実を使った映像を実際に見てみましょう。
Parallel Tracking and Mapping for Small AR Worspaces - extra
初音ミクをAR TOOL KITで立体にしてみた - YouTube

将来的には、視覚情報だけではなく、聴覚・触覚・嗅覚・味覚といったほかの五感情報を拡張することも考えられていますが、現在では視覚情報に対する拡張現実の研究が先行して進められているようです。

●「仮想現実(バーチャル・リアリティ)」との違い
「拡張現実」という言葉を聞いたことがなくても、セカンドライフなどで使われている「仮想現実(バーチャル・リアリティ)」という似たような言葉は聞いたことがあるかもしれません。

「仮想現実(バーチャルリアリティ)」は、利用者の感覚を刺激することで現実と同じような感覚を作り出す技術の総称です。一般に知られているセカンドライフのようなサービスも、あたかも現実と同じような体験をできるということからバーチャル・リアリティの一種とみなされることがあります。それに対して拡張現実は、現実の世界に別の世界を作りあげる技術となります。広くとらえた場合、両者は正反対のアプローチと言えるでしょう。

株式会社ユビキタスエンターテインメント社長の清水亮氏は、拡張現実について、「現実そのものを変えてしまう力がある」と発言しています。

出典:広告媒体としてのAR(拡張現実感)−ユビキタスエンターテインメント清水亮氏 - 湯川鶴章のIT潮流


■「拡張現実」は、どうやって実現するの?
拡張現実を実現するためには、ハードウェアはなくてはならないものです。
たとえば、電脳フィギュア「ARis」では、現実世界でのキューブ、各種アイテム、そしてそれらの位置をモニターに反映するためのWebカメラ、表示するためのディスプレイが必要になります。
基本的なのは、以下の2つです。

●ディスプレイ
情報を現実の世界に上書きするとはいっても現実世界に情報を直接つけ加えるわけにはいきません。したがって現実世界を反映したディスプレイ上で拡張現実を体験できるようにします。ディスプレイには携帯電話の画面や、装着型のゴーグルが使われることもあります。

●位置を測定するもの
三次元である現実世界に付加情報をなじませるためには、正確な位置の特定が不可欠です。位置情報の手がかりを得るため、Google ストリートビューと携帯電話のGPSを応用すればいいという話もあります。

【AR】 Google Android × ストリートビューは最強の拡張現実アプリ - ドグマ、水平思考、並列化

■拡張現実の可能性は?
「拡張現実」は、どのような可能性をもっているのでしょうか。
また、どのような用途で私たちの遊びや生活を変えることができるのでしょうか。

●ゲームへの応用で、モンスターが現実世界に?
コンピューターゲームに拡張現実を応用すると、これまでにないダイナミックな遊び方ができるのではと期待されています。

現実空間の中に敵キャラクターやアイテムを合成すれば、新しい操作感のゲームが生まれ、ゴーグルやヘルメットといったハードウェアを利用して屋外でもゲームを楽しむことが可能となるかもしれません。

ウェアラブルと拡張現実感で「シューティングゲーム」 - ITmedia

●「中身が飛び出す」百科事典や通販カタログ
拡張現実を使うと、百科事典の内容も飛び出してくるかもしれません。
以下には、そのような未来の百科事典のイメージが提示されています。

Augmented Reality Encyclopedia - YouTube

また、通信販売のカタログなどに応用すれば、「実際の商品を把握できない」という通販のデメリットから解放された新しいビジネスが誕生するかもしれません。


●その他の応用範囲
教育では、再現するのが難しい自然現象を疑似体験できるため理解を深めることができます。また、医学では、診察中や手術中に必要な情報をその場で提供することもできます。

拡張現実感は何ですか? - TechFAQ


「拡張現実」のように現実に干渉する技術に対しては「現実と混同して危ない」という危惧がありましたが、現実を補助するものとして登場した「拡張現実」が、そうした危惧を乗り越えていけるのか、今後が注目されるところです。

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