【ケータイラボ】よりケータイらしく!ドコモのスマートフォン開発者に聞く「F1100」の魅力とその戦略


株式会社ドコモが2008年3月17日に発売したスマートフォン「F1100」は、最大3.6MbpsのHSDPA通信サービスに対応した個人向けのWindowsケータイ(スマートフォン)だ。ドコモの端末としては初めてOSにWindows Mobile 6 Standardを採用している。

モバイル好きの人の中には、ほかのキャリアのようにパソコンと同じQWERTY配列のキーボードを採用しなかったことや他社のスマートフォンとの差別化など、ドコモの戦略が気になっている人も多いだろう。

そこで今回は、F1100の開発担当者であるNTTドコモ 鍋谷大介氏に開発までの経緯と同社のスマートフォン戦略についてうかがってみた。

■ケータイの使いやすさにWindowsのパワーをプラス
編集部:最初に開発の経緯からお聞かせいただけますでしょうか?
鍋谷氏:F1100は、どちらかというと法人向けの端末として企画がはじまりました。法人向けの機能がどこにあるのかというと、ひとつは弊社で無線LANを利用した内線システム「PASSAGE DUPLE(パッセージ・デュプレ)」を提供しておりますが、このシステムに対応する端末を開発しようという話から企画が持ち上がりました。

一般のコンシューマー向けには出荷しておりませんが、PASSAGE DUPLE対応の端末としてはNEC社製「N900iL」「N902iL」を出しております。これらの端末はiモードベースの端末ですので、(新しい企画の端末は)OSにWindowsベースのWindows Mobile 6 Standardを採用し、アプリケーションのカスタマイズ性を高めた端末にしょうという話が開発の発端でした。

編集部:内線電話というと、スマートフォンに詳しくない人も使うことになるかと思うのですが……。
鍋谷氏:はい。内線で使うFOMAですので、既存のスマートフォンのユーザー層よりも幅広いユーザーが使うことになります。会社に置いてあって普通の人が電話に出なければいけませんから、『いかに使い勝手を普通のFOMA端末に近づけるか』ということをポイントとして開発を進めてまいりました。

編集部:そのポイントはF1100のどういうところに見られますでしょうか。
鍋谷氏:画面を見ていただくとわかると思いますが、「○件の不在着信あり」ですとか、「マナーモード」ですとか、F1100にはFOMAと同じアイコンが並んでいます。Windows Mobileの標準画面ではなく、よりケータイに近づけた画面にしております。加えて内線の電話機ですので電話が圧倒的に掛けやすいテンキーを採用しました。
画面1 F1100独自の待受画面画面2 F1100独自のメニュー画面
画面1 F1100独自の待受画面画面2 F1100独自のメニュー画面

あとは「いかにコンパクトにするか」に注力しました。実際に端末を持っていただけるとおわかりになるかと思いますが、けっこう本体の幅が狭くて持ちやすいデザインとなっております。これも普通に電話として使っていただくための工夫となっております。

編集部:N900iLとN902iLは両端末とも二つ折りのタイプですが、F1100はスライドタイプなんですね。御社の富士通製端末としても、スライドタイプの端末としては初めての端末になると記憶しておりましたが……。
鍋谷氏:そうですね。内線電話の場合、なるべく素早く電話に出る必要がありますが、二つ折りのタイプに比べて外に出ている画面が大きい為、誰から電話が掛かってきたのかがわかりやすいです。。また、クレードルに置いておくと、本体を素早く充電もできますし、電話がかかってきた場合、本体を持ち上げるだけで通話を始めることができます。

編集部:ほかにもF1100の特徴的なポイントはありますか。
鍋谷氏:そうですね。もうひとつの特徴ですが、十字キーの上に4つの「ワンタッチキー」を備え、アプリケーションの起動や電話の発信などを割り当てることができます。オフィスで使用される電話機では、保留や転送の機能が備わっていると思いますが、F1100ではワンタッチキーと画面の表示を組み合わせて保留や転送の機能を使っていただくことができます。

内線電話でのアクションを考えると、電話に出るときにはクレードルからF1100を持ち上げていただき、電話に出ないときにはワンタッチキーを押していただくということから、スライド(キーボード)が一番ベストの形状ではないかと思います。
写真1 十字キーの上に4つの「ワンタッチキー」を備える
写真1 十字キーの上に4つの「ワンタッチキー」を備える

編集部:4つのワンタッチキーは、とても便利なキーですね。
鍋谷氏:ワンタッチキーは内線以外の機能も入れることができまして、最大3パターンまで対応できます。たとえば電話帳に入っている個別のデータを割り当てることができますので、弊社の「らくらくホン」で用意された3つのワンプッシュボタンのようにワンプッシュで電話を掛けることができます。

そのほかにも端末内のアプリケーションも割り当てることができまして、一発でアプリケーションを起動したりすることが可能です。自宅ではスケジュールやメール、会社では保留や転送、外出先では会社や仲間の携帯電話などといったように、自分の生活スタイルにあわせて機能をカスタマイズできます。F1100は法人向け(を想定した)端末だと申しましたが、このワンタッチキーはコンシューマーにも受け入れられる機能だと思っております。

編集部:F1100の特徴的なソフトウェアはございますか。
鍋谷氏:そうですね。富士通製の端末ということもあり、F1100は指紋認証の機能を備えております。まず端末を持ち替えることなく、指紋認証が行えます。指紋認証は数字を入れるよりも簡単ですし、セキュリティも高められます。

指紋認証と関連した機能ですが、インターネットではブラウザの中でパスワードを入力しばければならない場面があります。F1100には、パスワード管理に便利な「パスワードマネージャ」が備わっており、あらかじめパスワードを登録しておけば、パスワードボタンを押してから指紋認証を行うだけで、ブラウザ内でパスワードを自動入力できます。

編集部:開発にあたり一番苦労された点はどこにありますか。
鍋谷氏:F1100は富士通製の端末ですので、海外のメーカーとは違い日本のカルチャーを理解していただくという障壁は低かったのですが、ケータイらしい待受画面ですとか、ケータイらしい使い勝手を実現することでした。今となっては良い思い出かもしれませんが、富士通さんやマイクロソフトさんと3社での調整にけっこう時間が掛かったことですね。
写真2 右側面には、PASSWORDボタンが用意されている写真3 PASSWORDボタンを押してから指紋認証を行うと、自動的にパスワードが入る
写真2 右側面には、PASSWORDボタンが用意されている写真3 PASSWORDボタンを押してから指紋認証を行うと、自動的にパスワードが入る


■スマートフォン戦略とHTC1100との差別化
編集部:ほかのキャリアさんもスマートフォンを提供されてますが、サービス面でのドコモ独自のサービスはありますが。
鍋谷氏:そうですね。ひとつはパケット料金が定額になる「Biz・ホーダイ」を提供している点と、ネットワークを含めた使い勝手が他社よりは優れているのではないかと考えております。通信エリアも広いですし、HSDPAによる高速通信もサポートしております。

またFOMA専用のプロバイダサービス「mopera U」を利用していただければ、Web圧縮やパケットフィルタリングなど、モバイルで使うと嬉しい機能もあらかじめ用意されております。ウィルスチェックや有害サイトのブロックなどの機能も利用できるセキュリティパック、公衆無線LANと組み合わせたプランもありますので、F1100と組み合わせていただくことでより便利に使うことができます。
写真4 スマートフォン戦略について語る、鍋谷大介氏
写真4 スマートフォン戦略について語る、鍋谷大介氏

編集部:ところで、こらから発売予定のHT1100とは、どのように差別化されているのですか。
鍋谷氏:先ほど申し上げたようにF1100はオフィス内の内線電話の代わりに使用したり、無線LAN機能を利用できます。HTC1100のほうはジェスチャーでケータイを操作できる「TouchFLO」などの面白い機能があり、新しい使い勝手に興味を持っておられる人にも魅力を感じていただける端末となっておりますので、同じWindowsケータイでも使い方はまるで違うかと思います。

編集部:本日はお忙しい中、取材に応じていただきましてありがとうございました。

F1100は、ほかのキャリアが出荷しているスマートフォンに比べて、よりケータイらしさを追求したスマートフォンに仕上がっている。「Windowsケータイ」という呼称からも、Windowsパソコンを使いなれている人であれば、自分の好みにカスタマイズして利用できる。また。、iモード以外のパケット通信が定額になる独自サービス「Biz・ホーダイ」も用意されているのも同社の大きな強みといえるだろう。

F1100製品情報
株式会社NTTドコモ


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編集部:関口哲司
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