【IT革命児】生きている天才の第1位 インターネットの仕組みを考案した「ティム・バーナーズ=リー」


今やインターネットは世界中の人が利用する人類全体の財産となった。インターネットでは、調べたい事柄があれば、ブラウザの検索欄に調べたい言葉を入力して検索するだけで、たちどころに知りたい情報を得ることができる。

このように便利なインターネットの仕組み(WWWの仕組み)は、英国のコンピューター技術者 ティム・バーナーズ=リー氏※とベルギーのコンピューター技術者 ロバート・カイリュー氏の2人によって開発された。もはや存在するのが当たり前のようなWEBページだが、彼らは何もないところからどのような経緯で、WWWの仕組みを考案したのだろうか。
※Sir Timothy John Berners-Lee

ティム・バーナーズ=リー氏が歩んだ道のりとともにWWWが誕生した歴史をみてみよう。


■物理学学者からコンピューター技術者になるまで
ティム・バーナーズ=リー氏は1955年、イギリスのロンドンに生まれた。父はコンウェイ・バーナーズ=リー氏、母はメアリー・リー・ウッズさん。両親はともに数学者で、黎明期の電子計算機「Manchester Mark I」の開発に参加していた。

●ハッキングでコンピューターが使用禁止に
ティム・バーナーズ=リー氏は、1973年にロンドンのエマニュエル高等学校を卒業後、オックスフォード大学クイーンズ・カレッジに進学し、物理学を専攻する。彼のコンピューターへの素質は、この頃に開花したのであろう。

ティム・バーナーズ=リー氏は在籍時からコンピューターにのめりこみ、M6800プロセッサや中古のテレビなどを組み合わせ、自力でコンピューターを組み立てたというから驚きだ。大学のコンピューターを使用したハッキング行為でコンピューターの使用を禁止されたというエピソードまである。


●電話会社から個人事業者へ
1976年、オックスフォード大学を卒業したバーナー=リーズ氏は英国のプレッセイ電信電話会社に入社。分散トランザクションシステムやメッセージ転送、バーコード技術などに関連した仕事を担当した。2年後の1978年には英D・G・ナッシュ社に転職、インテリジェントプリンター向けのソフトウェアやマルチタスクOSなどを開発している。

その後、英 D・G・ナッシュ社を退職したティム・バーナーズ=リー氏は個人でコンサルタント業をはじめる。1980年6月、スイス・ジュネーブの欧州原子核研究機構(CERN)にソフトウェア技術のコンサルタント担当者として6か月間在籍する。

この頃、数千人にのぼる研究者やその関係者が効率よく情報を共有できるシステムの開発を依頼され、ティム・バーナーズ=リー氏は開発作業のひとつとしてランダムにほかの文書と連結できる仕組みを持った「ENQUIRE」を開発した。「ENQUIRE」は一般には公表されなかったが、WWWの概念の基礎となるものであった。


■WWWの誕生と社会への貢献度
WWWの仕組みが誕生した歴史と技術を見てみよう。

●WWWシステムの誕生
1981年から4年間、ティム・バーナーズ=リー氏は英イメージ・コンピュータ・システムズ社の技術デザインの責任者を務める。1984年、CERNに復帰すると科学に関するデーターを閲覧するための分散リアルタイムシステムに関する業績でフェローシップの栄誉を受けた。

1989年3月、ティム・バーナーズ=リー氏はCERN内の情報にアクセスするためのグローバルハイパーテキストプロジェクトを提案。上司のマイク・センダル氏や同僚のロバート・カイリュー氏の支援により、1990年11月にWWWの仕組みをより具体化した企画書※を作り上げる。
※WorldWideWeb: Proposal for a HyperText Project

同年12月、NEXTSTEP上で世界初のWebサーバー環境とウェブブラウザ、およびエディタの環境を構築する。これが事実上、世界初のWWWシステムの誕生となる。


●WWWは世界へ
1991年8月6日、ティム・バーナーズ=リー氏はalt.hypertext ニュースグループにWWWプロジェクトに関する要約を投稿する。これがWWWがインターネット上で利用可能なサービスとしてのデビューとなり、同日、世界最初のウェブサイト「info.cern.ch」が設立された。


●利益よりも社会への貢献
ティム・バーナーズ=リー氏の特筆すべき点は、WWWに関連した特許を一切取得せず、使用料も徴収しなかったことだ。これは社会への貢献を第一に考えたためで、開発元となるCERNは1993年4月30日、WWWを無償で開放することを発表している。


●W3Cを設立
1994年、ティム・バーナーズ=リー氏はマサチューセッツ工科大学に着任し、WWWの仕様や指針、標準技術を策定・開発することでWWWの可能性を最大限に導くことを目的とした、World Wide Web Consortium(W3C)を設立する。1999年、MITコンピュータ科学研究所内の3Com創業者会会長に就任。2004年12月にはサウサンプトン大学電子コンピュータ科学部の学部長兼教授に就任し、次世代のWeb技術となるSemantic Web技術の標準化を進めている。

2007年、マサチューセッツ州レキシントンでW3CのディレクターとしてWWWに使用される各種技術の標準化を進めている。またMITコンピュータ科学・人工知能研究所の上級研究科学者を兼務し、分散情報グループ「Decentralized Information Group, DIG」を指揮している。


●世界の100人の生きている天才に
コンサルタント企業のSynecticsは、2007年 世界の100人の生きている天才のランキングを発表した。同ランキングは、一般からの投稿、知的影響力、文化的な重要性などが選考に考慮される。

ティム・バーナーズ=リー氏はLSDを開発したスイスの科学者アルバート・ホフマン氏とともに、世界の100人の生きている天才のランキング1位となっている。

The Synectics Survey of Contemporary living Genius 2007(PDF形式) - Synectics


世界の100人の生きている天才で第1位に選ばれ、英国からナイトに叙任されたティム・バーナーズ=リー氏は、自分の業績についてどのように思っているのだろうか。自分のブログの中で彼は、「ほかの人の仕事をまとめあげただけに過ぎない(I just played my part. I built on the work of others)」と語っている。

Thank you for all the comments - ティム・バーナーズ=リー氏のブログ

このような謙虚な姿勢を持った人物だからこそ、多くの人からその業績を認められたのであろう。


参考:
ティム・バーナーズ=リー | World Wide Web | WorldWideWeb - ウィキペディア
ティム・バーナーズ・リー - コンピュータ偉人伝
timbl's blog - ティム・バーナーズ=リー氏のブログ
Tim Berners-Lee(英文) - World Wide Web Consortium (W3C)
Tim Berners-Lee / Great British Design Quest(英文) - Design/Designer Information
The original proposal of the WWW, HTMLized(英文) - World Wide Web Consortium (W3C)


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