【カオス通信】「テレビがつまらなくなった」は本当か?


最近のテレビはつまらないという話をよく聞きます。確かにどのチャンネルを見ても、似たようなクイズ番組やグルメ特集ばかり。ドラマもBGMで強引に盛り上げようとする学芸会的な内容のものが多いように思えます。ニュースも報道規制なのか自主規制なのかはわかりませんが、日本国民が本当に知りたいネタ(情報)は黙殺されているという体たらく。これでテレビに興味を持てという方が無理でしょう。

いわゆる“テレビ離れ”に関してはネットの普及やライフスタイルの多様化など様々な要因が考えられますが、真の問題は「絶対に見たい!」と思わせる番組の本数が、年々少なくなっているところにあるような気がします。とはいえ思いこみだけで判断するのはよくありませんので、今回はそのあたりを調査してみたいと思います。

■調査方法
今回の調査は、テレビ誌として最も長い歴史を持つ「週刊TVガイド」の番組表を活用してみました。調査対象年は「1977年」「1989年」「1998年」「2008年」の4つ。その中で最も面白そうな地上波番組を2つずつ選んで比較してみます。古書店で入手してきたバックナンバーは、おおよそ10年間隔になるようにしました。番組は私の個人的な主観で選んでます(異論もあるかと思いますが、あくまで参考として見ていただければと思います)。ちなみに、関東ローカルであるTV東京は調査の対象外としました。概要をまとめると以下のようになります。

※調査方法の概要まとめ
●「週刊TVガイド」の番組表を元にテレビ番組を調査
●調査対象年は「1977年」「1989年」「1998年」「2008年」の4つ
●各曜日ごとに最も面白そうな地上波番組を2つ選択

--- 月曜日の面白そうな番組 ---
●1977年(昭和52年・11/19〜11/25)
『ルパン三世』(日本テレビ・19時)
 ※サブタイトル:「ベネチア超特急」
『紅白歌のベストテン』(日本テレビ・20時)
 ※予定出演者:ピンクレディー、山口百恵、野口五郎、西城秀樹 ほか

●1989年(平成元年・2/18〜2/24)
『美味しんぼ』(日本テレビ・19時30分)
 ※サブタイトル「もてなしの心」
『ファミリージャーナル』(NHK教育・21時40分)
 ※サブタイトル「コンピューター熱中少年たち」

●1998年(平成10年・7/25〜7/31)
『美味しんぼ(再放送)』(日本テレビ・17時)
 ※サブタイトル「うどんの腰」
『超アジア流』(日本テレビ・25時45分)
  ※番組内容:"秋葉原のおたくスポット"

●2008年(平成20年・5/3〜5/9)
『ヤッターマン限定版今夜限りのドロンボーVSみのもんた!』(日本テレビ・19時)
 ※番組内容:“アナタも一緒に脳力対決!ガッチャマンもマッハ号も登場スペシャル だコロン!”
『24 -TWENTY FOUR- シーズン?(再放送)』(フジテレビ・26時40分)
 ※出演:キーファー・サザーランド ほか
(補足解説)
1977年『紅白歌のベストテン』出演スターの豪華さは異常。1998年『美味しんぼ(再放送)』は、他に面白そうな番組が見あたらなかったので選んでます。先日放映された『ヤッターマン限定版』は、みのもんた本人がキャラとして出演(声も本人が担当)し、セルフパロディを展開するというもの凄い内容でした。

----- 火曜日の面白そうな番組 -----
●1977年(昭和52年・11/19〜11/25)
『速報!日本レコード大賞』(TBS・19時)
 ※大賞候補:八代亜紀、松崎しげる、さだまさし、沢田研二、山口百恵 ほか
『大都会・PART?』(日本テレビ・21時)
 ※出演:石原裕次郎、渡哲也、松田優作 ほか

●1989年(平成元年・2/18〜2/24)
『徹子の部屋』(テレビ朝日・13時15分)
 ※番組内容:"手塚治虫さんをしのんで"
『エスパー魔美』(テレビ朝日・18時50分)
 ※サブタイトル「リアリズム殺人事件!?」

●1998年(平成10年・7/25〜7/31)
『美味しんぼ(再放送)』(日本テレビ・17時)
 ※サブタイトル「鮎のふるさと」
『金髪先生』(テレビ朝日・26時40分)
 ※テーマ:「ナット・キング・コール」

●2008年(平成20年・5/3〜5/9)
『草野☆キッド』(テレビ朝日・24時45分)
 ※番組内容:“寺門ジモンと春のチャンピオン牛を食らう”
『RD潜脳調査室』(日本テレビ・24時59分)
 ※出演声優:森功至、沖佳苗 ほか

(補足解説)
1977年『速報!日本レコード大賞』は、大晦日の『日本レコード大賞』の決戦に挑む候補者を発表する番組。1998年『金髪先生』は、講師役のドリアン助川が英語圏のアーティストとその代表曲を例題にして英語を学ぶという内容でした。

----- 水曜日の面白そうな番組 -----
●1977年(昭和52年・11/19〜11/25分)
『特捜最前線』(テレビ朝日・22時)
 ※出演:二谷英明、大滝秀治、藤岡弘、西田敏行 ほか
『しのびよる衝撃 高齢化社会とサラリーマン』(NHK総合・22時15分)
 ※番組内容:近未来ドキュメントドラマ"最後の常務会・退職金倒産前夜" ほか

●1989年(平成元年・2/18〜2/24)
『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ・21時)
 ※番組内容:“一世風靡セピアの白熱のステージを!!” ほか
『PRE★STAGE』(テレビ朝日・25時)
※サブタイトル:「ベンチャービジネス最前線(抜け道マップ ほか)」

●1998年(平成10年・7/25〜7/31)
『美味しんぼ(再放送)』(日本テレビ・17時)
 ※サブタイトル「ハンバーガーの要素」
『パパパパPUFFY』(テレビ朝日・23時45分)
 ※番組内容:“レニー・クラヴィッツに日本を満喫してもらおう!”
 
●2008年(平成20年・5/3〜5/9)
『ニュースJAPAN』(フジテレビ・23時30分)
 ※出演:松本方哉、滝川クリステル ほか
『あらびき団』(TBS・23時55分)
 ※番組内容:“次世代の若手エンターテイナーを徹底紹介”
(補足解説)
1977年は、社会派な内容の番組が結構多く見受けられました。1998年『美味しんぼ(再放送)』の「ハンバーガーの要素」は至高のツンデレエピソード。2008年『ニュースJAPAN』は報道番組の良心であります。

----- 木曜日の面白そうな番組 -----
●1977年(昭和52年・11/19〜11/25分)
『アローエンブレム・グランプリの鷹』(フジテレビ・19時)
 ※出演声優:富山敬、野沢雅子 ほか
『同心部屋御用帳・江戸の旋風』(フジテレビ・21時)
 ※出演:加山雄三、ひし美ゆり子 ほか

●1989年(平成元年・2/18〜2/24)
『とんねるずのみなさんのおかげです』(フジテレビ・21時)
 ※番組内容:“仮面ノリダー VS 恐怖月の輪グマ男” ほか
『ザ・ベストテン』(TBS・21時)
 ※予定出演者:工藤静香、近藤真彦、ウィンク、田原俊彦 ほか

●1998年(平成10年・7/25〜7/31)
『強力!木スペ120分』(フジテレビ・19時)
 ※サブタイトル:「緊急報告!矢追純一UFO最新極秘情報」
『人間大学』(NHK教育・22時45分)
 ※サブタイトル:「宇宙を空想してきた人々・SF史に見るイメージの変遷」
 
●2008年(平成20年・5/3〜5/9)
『スーパーチャンプル』(日本テレビ・25時29分)
 ※番組内容:"チャンプルダンサーランキング" ほか
『FNS地球特捜隊ダイバスター』(フジテレビ・26時15分)
 ※番組内容:“来るべき知的地球外生命体からの質問にそなえ、あらゆる謎を調査・解明”
(補足解説)
1977年『同心部屋御用帳・江戸の旋風』は、ウルトラセブンのアンヌ隊員役のひし美ゆり子が加山雄三と共演しているという点を評価。2008年『FNS地球特捜隊ダイバスター』は声優・銀河万丈がサイコー!

----- 金曜日の面白そうな番組 -----
●1977年(昭和52年・11/19〜11/25分)
『無敵超人ザンボット3』(テレビ朝日・18時)
 ※サブタイトル:「廃虚に誓う戦士」
『ワールドプロレスリング』(テレビ朝日・20時)
 ※出場予定:アントニオ猪木、坂口征二、ウィレム・ルスカ ほか

●1989年(平成元年・2/18〜2/24)
『あの時この時・テレビが見た昭和・名場面集』(TBS・20時)
 ※紹介名場面:皇太子御成婚、東京五輪、ウルトラマン、東大紛争事件 ほか
『タモリ倶楽部』(テレビ朝日・24時)
 ※サブタイトル:「7年の歴史を振り返る こんなコーナーがあったんですね」

●1998年(平成10年・7/25〜7/31)
『金曜テレビの星!』(TBS・19時)
 ※サブタイトル:「サザン20周年緊急特番・バカさわぎの腰つき!!」
『驚きももの木20世紀』(テレビ朝日・21時)
 ※番組内容:"スパルタの海・戸塚ヨットスクールの2000日"

●2008年(平成20年・5/3〜5/9)
『タモリ倶楽部』(テレビ朝日・24時15分)
 ※番組内容:“地元弁当コンペ・大田区編”
『マクロスF』(TBS・25時55分)
 ※サブタイトル:「バイバイ・シェリル」
(補足解説)
1989年2月24日(金)は、昭和天皇ご葬儀(大喪の礼)が執り行なわれた日だったので「昭和が終わった」という趣旨の特番が多くなってました。

----- 土曜日の面白そうな番組 -----
●1977年(昭和52年・11/19〜11/25)
『8時だヨ!全員集合』(TBS・20時)
 ※ゲスト:沢田研二、浅野ゆう子、アグネス・ラム ほか
『全日本プロレス中継』(日本テレビ・20時)
 ※対戦カード:ジャイアント馬場 VS ボボ・ブラジル

●1989年(平成元年・2/18〜2/24)
『オレたちひょうきん族』(フジテレビ・20時)
 ※番組内容:ビデオショップ・笑霊界(丹波哲郎ネタ)
『ベストヒットUSA』(テレビ朝日・23時30分)
 ※番組内容:デュラン・デュラン スペシャル

●1998年(平成10年・7/25〜7/31)
『土曜サスペンス 「怪人食いしんぼ」(再放送)』(テレビ朝日・12時)
 ※出演:佐藤B作、加藤茶、鷲尾真知子 ほか
『頭文字D』(フジテレビ・28時5分)
 ※サブタイトル:「FR殺しのデスマッチ」

●2008年(平成20年・5/3〜5/9)
『ROOKIES』(TBS・20時)
 ※出演:佐藤隆太、市原隼人、小出恵介、城田優 ほか
『ハチワンダイバー』(フジテレビ・23時10分)
 ※出演:溝端淳平、仲里依紗、伊達みきお、富沢たけし ほか
(補足解説)
1977年『8時だヨ!全員集合』、1989年『オレたちひょうきん族』などは一時代を作った番組なので文句なしに選択。2008年『ROOKIES』『ハチワンダイバー』は、久々に面白いと思えるドラマです。

----- 日曜日の面白そうな番組 -----
●1977年(昭和52年・11/19〜11/25)
『JNN総力特別番組 アフリカの硝煙・死の商人を追え!』(TBS・20時)
 ※番組内容:"ライフル"を追って、9大国際都市に潜む死の商人の実体を探る
『すばらしい世界旅行』(日本テレビ・19時30分)
 ※サブタイトル:「私は鳥葬を目撃した!! 秘境ムスタン探検」

●1989年(平成元年・2/18〜2/24)
『仮面ライダーブラック』(TBS・10時)
 ※サブタイトル「奇跡の谷の姫君」
『天才・たけしの元気が出るテレビ』(日本テレビ・20時)
 ※番組内容:"小学生の間で友だちんこがはやってる" ほか

●1998年(平成10年・7/25〜7/31)
『知ってるつもり!?』(日本テレビ・21時)
 ※番組内容:"「前田光世」世界最強の柔道家"
『新日本探訪』(NHK総合・23時)
 ※番組内容:"マンガでよみがえれ・宮城・石巻"

●2008年(平成20年・5/3〜5/9)
『黒バラ』(日本テレビ・22時30分)
 ※番組内容:"スーパーマリオ リターンズ" ほか
『サラリーマンNEO』(NHK総合・23時)
 ※番組内容:"犯人のいる風景" ほか
(補足解説)
1977年『JNN総力特別番組 アフリカの硝煙・死の商人を追え!』の骨太すぎる企画に脱帽。秘境の鳥葬を取材する『すばらしい世界旅行』もかなりキテます。


■まとめ
調査前は、20年前・30年前のテレビは今よりも相当面白かったんだろうなと思ってまいしたが、番組表を見る限りはそうでもありませんでした。確かに昔のテレビには、目を見張るパワフルな番組も見受けられたのですが、全部が全部面白そうというわけでもなかったのです。

おそらく「テレビがつまらなくなった」というのは、「テレビ番組」というよりも「テレビそのもの」がつまらなくなったというのが正しい解釈なのだと思います。テレビが“娯楽の王様”だった時代は、テレビが常に話題の中心でしたが今は違います。娯楽も情報もテレビ以外の方法で入手できますし、テレビがなくても正直それほど困りません。

テレビに興味がないから見ない>視聴率が下がる>スポンサーが離れる>予算が減る>面白い番組が作りにくくなる>つまらない番組が多くなる>つまらないテレビは見なくなる…という負のスパイラルに陥ってしまっているのだと思われます。

もはやテレビに明るい未来はないのかも知れません。加えて、視聴者が本当に求めているかわからない地デジとか、ダビング10とか、業界も迷走を続けている始末。このまま視聴者ニーズを無視し続ければ、ますますテレビ離れは加速してしまうでしょう。そのうち売り上げ不振で倒産するテレビ局も出てくる恐れもあります。そうならないためにもテレビ業界の皆様には正しい選択をしていただきたいと切に願う次第であります。

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レッド中尉(れっど・ちゅうい)
プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。

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