【大人の物欲】手のひらの熱で動く?スターリングエンジン
今回は、風に代わる別のクリーンエネルギーのひとつとして注目されている温度差をエネルギーに変換する「スターリングエンジン」を紹介しよう。大人の科学「スターリングエンジン」は簡単に組み立てられて、排ガスゼロのエコエンジンの仕組みを学ぶことができる。
■スコットランドの牧師が作った
18世紀から19世紀にかけてイギリスで起こった「産業革命」は社会に急速な工業化をもたらした。その主役となったのはジェームズ・ワットが1782年に開発した「蒸気機関」だ。蒸気機関は工場の動力源として活躍したが、大きな力を得ようとすると蒸気の圧力を高める必要があり、そのために事故が多発した。その後、産業革命からおよそ30年を経た1816年に、空気を利用する画期的なエンジン「スターリングエンジン※」が発明された。
※当時は「熱空気エンジン」と呼ばれていた
「スターリングエンジン」は名前から推測できるように、スコットランドの牧師 ロバート・スターリングが開発したエンジンで、シリンダー内の空気もしくはガスを外部から加熱(または冷却)してエネルギーを得るエンジン。現存する熱機関の中ではもっとも高い効率で熱エネルギーを運動エネルギーに変換できる。蒸気機関に比べて安全で振動が少なく燃料も選ばないことから19世紀には蒸気機関とならび使用されていたが、その後に登場したガソリンエンジンに取って代わられることになる。
スターリングエンジンの構造はガソリンエンジンに代表される内燃機関によく似ているが本質的に異なる。内燃機関は燃料と空気の混合気体をシリンダー内に送り、爆発させてエネルギーを得る。それに対してスターリングエンジンは空気やガスがエンジンの内部に封じ込められ、その中での移動によりエネルギーを得ている。
この仕組みは中学校の理科で空気や水の温度による体積変化で習った読者も多いのではないだろうか。ストローを通したペットボトルに水を入れ、そのペットボトルをお湯の中に入れるとペットボトルの水が膨張し、噴水のようにストローから勢いよく飛び出してくる。この熱による膨張こそスターリングエンジンの基本原理だ。
■ハンドパワーで円盤を回す?
大人の科学「スターリングエンジン」は、温度差を利用して円盤を回す工作キットだ。部品点数が少なく、イラスト入りの詳細な組み立てマニュアルが用意されているので、1時間もあれば製作できるだろう。プラスドライバー1本で組み立てられる。付録のスターリングエンジンは、低温度差で動くスターリングエンジンだ。20度くらいの温度差があればよいので、気温が低ければ手のひらの熱で動かせる。どんな仕組みで動くのかを簡単に説明しておこう。
「スターリングエンジン」の中身 | 大人の科学「スターリングエンジン」 |
ディスプレーサー※とダイアフラム(ピストン)は、位相差90度を保ちながら上下するようになっている。位相差とは、タイミングのずれのことだ。空気はディスプレーサーの横を通り抜けることができる。ディスプレーサーが上に移動すると、空気は下に追いやられ下面で温められて膨張する。膨張した空気は大ダイアフラムを持ち上げ、その力がリンク棒に伝わってフライングホイール(はずみ車)を回転させる。ディスプレーサーが下に移動すると、空気は上面で冷やされて収縮する。その力でダイアフラムが押し下げられる。このようにしてダイアフラムの上下運動がリンク棒によって回転運動に変換されている訳だ。
※空気の力で上下に動く装置
土台にダイアフラムを取り付ける | 土台とシリンダーをネジ留めする |
スターリングエンジンは、構造が単純なので工夫次第でいろいろな改造も楽しめる。大人の科学「スターリングエンジン」の本誌には、車体を自作した「氷で動くエコモーション・カー」や、注射器と試験管を使った「2ピストン形スターリングエンジン・カー」およびラジコンカーへの改造が掲載されている。工作の腕に自信がある人は挑戦してみるとよいだろう。
「スターリングエンジン」が完成 | カップラーメンの上で動く「スターリングエンジン」 |
製品名:大人の科学「スターリングエンジン」
価 格:2,100円(税込み)
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■大人の科学「スターリングエンジン」
■学研
編集部:関口哲司
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