【世界のモバイル】海外の市場の強さは″中古ケータイ市場″! 日本は、もう追いつけないのか?
海外と日本の間には、決定的に大きな違い「中古端末市場」がある。海外では携帯電話の中古売買は、あたりまえのものであり、特にアジア圏では街中至るところで"中古携帯"の販売を見ることができる。日本からみれば使い古し端末の売買と考えられがちな中古市場だが、実は携帯電話市場を活性化させる大きな役割を担っているのだ。
では、新機種に買い換えた場合、今まで使っていた端末を海外のユーザーはどうしているのだろうか?
自動車、家電、パソコン、高級腕時計など、"中古売買"はどこの国でも盛んなように、携帯電話も海外では中古マーケットがあたりまえに存在している。このため海外では新機種に買い換えたユーザーが古い端末を家族や友人などに譲渡したり、中古販売店などに買い取ってもらうことが可能なのだ。
海外の携帯販売店などを回ってみると、新品の携帯電話が陳列されているショーケースの隅に「Second Hand」「二手」などと表示された中古端末が売られていることは、普通の光景になっている。中古車専門店のように"中古携帯専門店"というものも多く存在しているのだ。中古といってもその種類は様々であり、大昔の古い機種ばかりが販売されているのではなく、最近の新しい端末も売られている。新品端末を買ったもののすぐに飽きてしまったユーザーが手放したものや、プレゼントや抽選などでもらった未開封の新品がそのまま転売されることもよくあるため、「中古」といいながらも「新品同様」のものも多く流通しているのだ。
中古市場の存在は、端末を安く買いたいユーザーには大きなメリットがある。新品では手が届かない高機能端末も中古ならば格安で買えるからだ。また手持ちの端末が壊れてしまい修理不能になった場合や、端末を紛失してしまったときなど、急場をしのぐために中古機を安く買うといったことも手軽にできるわけだ。さらに携帯電話にお金をかけたくない利用者などは中古携帯だけしか買わない、ということもめずらしくない。
もちろん国や通信キャリアによっては、日本のように新規契約で格安で端末が買えることもあるが、その分、固定契約期間などの制約を受けてしまう。ヨーロッパで主力のSIMロック端末の新品格安販売にしても、SIMカードを入れ替えるユーザーには使いにくい。もちろん中古端末には保証が無いなどのデメリットもあるが、買い替えの制約もなく自由に使えるというメリットを重視する利用者にとっては、値段以上のプラスアルファな魅力があるわけだ。
一方、新機種を買うユーザーにとっても中古市場の存在意義は、日本で想像する以上に大きい。手持ちの端末を下取りにだせば新機種を買うときの予算の足しになるからだ。ハイエンド端末ならば半年程度で処分すれば定価の半分程度の値段がつくこともある。
これは自動車で新車を買うときのことを考えてみれば理解しやすいだろう。現在所有している車をスクラップ工場に持っていく人はまずいない。通常は中古として下取りに出すことが普通のはずだ。携帯電話も手持ちの端末を下取りしてもらうことが一般的であれば、新機種の買い換えも、大幅に敷居は低くなる。すなわち中古市場の存在は、新品の買い替え需要を陰から支えているものでもあるわけだ。
写真:アジアのショッピングセンター内に列なる携帯専門店。多くの店が中古端末も取り扱っている
写真:店のショーケースに並ぶ中古端末。店によって客層も異なるため取り扱う商品も様々。古めのモデルは価格が安く、来訪客も多い
また、さらに一歩進み、通信キャリア自体が中古端末を販売しているところもあるのだ。これは正確には中古ではなく「工場再生品」であるが、店頭展示品などをメーカーが工場で調整、清掃、外装を新品交換などしたものであり、キャリアの専用パッケージで売られている。この再生品は、新品同様に品を安くユーザーに提供するだけではなく、中古品を再利用するということで資源の有効活用を図ったものとも言えるだろう。なお再生品はプリペイド向けなど、主に低価格端末として販売されていることが多い。
写真:「refurbish」「reconditioned」等と記載された端末が再生品だ
写真:このようにキャリアの専用パッケージとして販売される
インターネット上のオークションサイトでは、多数の中古端末が取引されているが、誰もが簡単に利用できるものではないし、また海外のように街中に買い取りショップや中古販売店が一般的に存在しているわけでもない。もちろん日本はインセンティブ制度のおかげで最新機種を格安で入手することができるため、あえて中古で古い機種を安く買う必要はないと、ユーザーの多数が思っているのだろう。
また、通信キャリアはメーカーから端末を一括買い取りして販売するシステム上、キャリアとしては新製品のみを販売に注力せざるを得ないから、中古市場が日本で一般的になることは今後も難しそうである。
しかし、最近の日本の端末は価格が上がってきており、新製品の投入サイクルも以前よりも早くなっている。海外のように端末買い換え時に適価で下取りができれば新機種をより買いやすくなるし、新製品に手の出ないユーザーでも中古で新機種に簡単に乗り換えできるとすれば、結果として通信キャリアもより広いユーザーに最新の技術を利用してもらうことが可能になるのではないだろうか。
もちろん、現状では日本で中古市場を広げることは難しいと思われるが、通信キャリアが端末の発売時期から下取り価格を設定するなどして自ら下取りを行えば、新機種への買い換えは、現在よりスムーズな移行により活性化されるかもしれない。さらに古くなった機種の資源回収率も上げられるはずだ。
日本も携帯電話普及率が100%に近づくことで、今後は既存客の買い換え需要をより効率よく掘り起こす必要がより重要となってくるだろう。そのためには魅力ある新製品の開発のみならず、新製品に買い替えしやすい市場構造を構築しなければ、海外の新機種・新サービスへの展開速度の格差が開くことも憂慮されてくるのではないだろうか。
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山根康宏
香港在住の海外携帯電話マニア&研究家
Copyright 2007 livedoor. All rights reserved.
■中古市場こそが、新品市場を盛り上げ、支えている
SIMカード方式のGSM/W-CDMA(一部CDMA)端末であれば、SIMカードさえ入れ替えれば携帯電話は自由に使いまわしができる。新しく端末を買った時は、今まで使っていた端末からSIMカードを抜いて差し替えるだけでいいわけだ。では、新機種に買い換えた場合、今まで使っていた端末を海外のユーザーはどうしているのだろうか?
自動車、家電、パソコン、高級腕時計など、"中古売買"はどこの国でも盛んなように、携帯電話も海外では中古マーケットがあたりまえに存在している。このため海外では新機種に買い換えたユーザーが古い端末を家族や友人などに譲渡したり、中古販売店などに買い取ってもらうことが可能なのだ。
海外の携帯販売店などを回ってみると、新品の携帯電話が陳列されているショーケースの隅に「Second Hand」「二手」などと表示された中古端末が売られていることは、普通の光景になっている。中古車専門店のように"中古携帯専門店"というものも多く存在しているのだ。中古といってもその種類は様々であり、大昔の古い機種ばかりが販売されているのではなく、最近の新しい端末も売られている。新品端末を買ったもののすぐに飽きてしまったユーザーが手放したものや、プレゼントや抽選などでもらった未開封の新品がそのまま転売されることもよくあるため、「中古」といいながらも「新品同様」のものも多く流通しているのだ。
中古市場の存在は、端末を安く買いたいユーザーには大きなメリットがある。新品では手が届かない高機能端末も中古ならば格安で買えるからだ。また手持ちの端末が壊れてしまい修理不能になった場合や、端末を紛失してしまったときなど、急場をしのぐために中古機を安く買うといったことも手軽にできるわけだ。さらに携帯電話にお金をかけたくない利用者などは中古携帯だけしか買わない、ということもめずらしくない。
もちろん国や通信キャリアによっては、日本のように新規契約で格安で端末が買えることもあるが、その分、固定契約期間などの制約を受けてしまう。ヨーロッパで主力のSIMロック端末の新品格安販売にしても、SIMカードを入れ替えるユーザーには使いにくい。もちろん中古端末には保証が無いなどのデメリットもあるが、買い替えの制約もなく自由に使えるというメリットを重視する利用者にとっては、値段以上のプラスアルファな魅力があるわけだ。
一方、新機種を買うユーザーにとっても中古市場の存在意義は、日本で想像する以上に大きい。手持ちの端末を下取りにだせば新機種を買うときの予算の足しになるからだ。ハイエンド端末ならば半年程度で処分すれば定価の半分程度の値段がつくこともある。
これは自動車で新車を買うときのことを考えてみれば理解しやすいだろう。現在所有している車をスクラップ工場に持っていく人はまずいない。通常は中古として下取りに出すことが普通のはずだ。携帯電話も手持ちの端末を下取りしてもらうことが一般的であれば、新機種の買い換えも、大幅に敷居は低くなる。すなわち中古市場の存在は、新品の買い替え需要を陰から支えているものでもあるわけだ。
写真:アジアのショッピングセンター内に列なる携帯専門店。多くの店が中古端末も取り扱っている
写真:店のショーケースに並ぶ中古端末。店によって客層も異なるため取り扱う商品も様々。古めのモデルは価格が安く、来訪客も多い
■通信キャリアやメーカーも中古端末を下取りする
国によっては通信キャリアやメーカーの直営店などでも、積極的に端末の下取りを行っているところもある。新機種を買うならその場で下取りしてくれる店のほうがユーザーには便利この上ないからだ。旧機種の持ち込み&MNP利用で料金を割り引くなど、端末販売だけではなく新規契約に結び付けようとする通信キャリアもあるようだ。また、さらに一歩進み、通信キャリア自体が中古端末を販売しているところもあるのだ。これは正確には中古ではなく「工場再生品」であるが、店頭展示品などをメーカーが工場で調整、清掃、外装を新品交換などしたものであり、キャリアの専用パッケージで売られている。この再生品は、新品同様に品を安くユーザーに提供するだけではなく、中古品を再利用するということで資源の有効活用を図ったものとも言えるだろう。なお再生品はプリペイド向けなど、主に低価格端末として販売されていることが多い。
写真:「refurbish」「reconditioned」等と記載された端末が再生品だ
写真:このようにキャリアの専用パッケージとして販売される
■日本に中古市場が生まれる可能性はあるか?
海外の中古端末市場の自由な競争に比べると、日本での携帯電話市場では"中古端末"という概念自体が存在していない。インターネット上のオークションサイトでは、多数の中古端末が取引されているが、誰もが簡単に利用できるものではないし、また海外のように街中に買い取りショップや中古販売店が一般的に存在しているわけでもない。もちろん日本はインセンティブ制度のおかげで最新機種を格安で入手することができるため、あえて中古で古い機種を安く買う必要はないと、ユーザーの多数が思っているのだろう。
また、通信キャリアはメーカーから端末を一括買い取りして販売するシステム上、キャリアとしては新製品のみを販売に注力せざるを得ないから、中古市場が日本で一般的になることは今後も難しそうである。
しかし、最近の日本の端末は価格が上がってきており、新製品の投入サイクルも以前よりも早くなっている。海外のように端末買い換え時に適価で下取りができれば新機種をより買いやすくなるし、新製品に手の出ないユーザーでも中古で新機種に簡単に乗り換えできるとすれば、結果として通信キャリアもより広いユーザーに最新の技術を利用してもらうことが可能になるのではないだろうか。
もちろん、現状では日本で中古市場を広げることは難しいと思われるが、通信キャリアが端末の発売時期から下取り価格を設定するなどして自ら下取りを行えば、新機種への買い換えは、現在よりスムーズな移行により活性化されるかもしれない。さらに古くなった機種の資源回収率も上げられるはずだ。
日本も携帯電話普及率が100%に近づくことで、今後は既存客の買い換え需要をより効率よく掘り起こす必要がより重要となってくるだろう。そのためには魅力ある新製品の開発のみならず、新製品に買い替えしやすい市場構造を構築しなければ、海外の新機種・新サービスへの展開速度の格差が開くことも憂慮されてくるのではないだろうか。
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山根康宏
香港在住の海外携帯電話マニア&研究家
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