鉄とアルミを溶接する新技術で、 自動車の軽量化が進む【サイエンスニュース】




2012年にオバマ政権が発表した新燃費基準では、2025年までに乗用車と小型トラックの平均走行距離を54.5マイル/ガロン(23.2km/リットル)に引き上げることが自動車メーカーに義務づけられた。
自動車メーカーは燃費性能を上げるためにさまざまな技術開発を行っているが、中でも焦点になってくるのが車体の軽量化である。車体重量が軽ければ軽いほど、必要な燃料は少なくて済む。炭素繊維複合材料などの新素材のほか、金属材料でも軽量化の取り組みが進んでいる。

ブリガムヤング大学 Michael Miles教授らの研究チームが開発したのは、高強度の鋼鉄と軽量なアルミの接合技術、Friction Bit Joining(摩擦ビット接合)だ。これまでにも鉄とアルミを接合する技術としては、摩擦攪拌(まさつかくはん)スポット接合などがあった。ただし、摩擦攪拌(まさつかくはん)スポット接合は曲線部分の接合が難しく、またコストも高くなってしまうという欠点がある。その他の方法も、高強度鋼鉄に対応できない、溶接すると脆くなるといった問題があったが、Friction Bit Joiningは、こうした問題を解決できる可能性があるという。特徴は、接合の工具に小さなビット(刃先)を使う点だ。ビットの頭はネジ頭になっており、下部が掘削用の刃先になっている。実験では、鋼鉄の薄いシートを挟んだアルミと鋳鉄の板を用意。鋼鉄製のビットを500〜600rpm程度のスピードで回転させて徐々にアルミに穴を空け、回転速度を2000rpmに上げると摩擦熱によって鋼鉄のシートが溶け、鋳鉄とアルミが溶接されるのだ。

鉄とアルミを高い強度で溶接できるようになると、アルミのルーフを鋼鉄のピラー(窓柱)と一体化することも可能になる。車体を軽量化しつつ、デザインの自由度を高められそうだ。

Michael Miles教授によれば、Friction Bit Joiningは非常に硬い素材を柔らかい素材と接合するのに適しており、チタニウムとアルミを接合することもできるという。将来的には、自動車だけでなく、航空宇宙産業などの分野への応用も期待されている。


(文/山路達也)

記事提供:テレスコープマガジン

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