どうなる? ブラジルやインド 世界的マネーの変調が本格化【ビジネス塾】
これまでも何回か述べてきたが、5月末以来の世界的なマネーの変調が本格化しそうな雰囲気だ。
ブラジル、インドの、インドネシアなどの新興国通貨が次々と下落、波乱の様相となっている。先行きは不透明だが、何が起きているのだろうか。
■おさらい、先進国の金融緩和が背景
マネーの変調のきっかけは、5月22日のバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長による議会証言とその後の議事録公開である。
2008年のリーマン・ショック後、米国をはじめとする先進諸国は、パニックを抑えるために金融緩和を行った。米国が実施した国債や不動産担保証券(MBS)の買い取りだけでも3兆ドルに達し、それ以外の公的資金投入額を加えれば、世界で20兆ドルを優に超えるとされるマネーがつぎ込まれてきた。
供給された資金は、株式や国債、商品市場などに流れ込み、価格を押し上げる効果を生んだ。これにより、米国などでは個人消費が伸びる効果を生んだ。また、資金は経済成長を続け、金利が比較的高かった新興国にも流れ込んだ。インフレやバブルなどの副作用も見られたが、成長が続いている限り、大きな問題ではなかった。
問題は、米国の実体経済が回復基調を示したことで、FRBが金融緩和の「出口」を探し始めたことである。いつまでも金融緩和を続ければ、それは新たなバブルを生んでしまうので、いずれ「出口」に進むことは避けがたかった。
■資金流出国も選別される?
「出口」とはすなわち、FRBが国債やMBSの買い取りを減らすということであり、ゆくゆくは逆に、市場で売却するということである。景気も回復しつつあるので、当然、金利は上がる。すると、従来は新興国の高金利を魅力的だと感じていた投資家が「米国の方が良い」と思うようになる。こうなると、新興国から米国への資金の逆流が始まる。新興国の通貨は売られ(通貨安)、米ドルが買われる(ドル高)。新興国の株価は下がり、米国では上がる。
現在起きているのはこれだ。インドのルピー、ブラジルのレアル、インドネシアのルピア、南アフリカのランドなどが下落し、市場最安値をつけたところもある。これらの国々では、通貨安で輸入物価が上がり、対外的な支払いが増える。資金が引き上げれば、流入資金を当て込んで進められていた投資計画は軒並み止まり、経済は停滞する。
ここで、新興国の経常収支が問題になる。日本や中国のように貿易などで黒字をため込んでいれば、その資金(外貨準備)で当面の支払いに対応できる。だが、経常収支が赤字の国は、遠からず外貨準備が尽きてしまう可能性がある。そうなると、対外的な債務を支払えなくなり、債務不履行(デフォルト)に追い込まれる。国家の破たんである。
これと同じことが、1990年代末に「アジア通貨危機」として起きた。対外債務を払えなくなったタイ、インドネシア、韓国などが国際通貨基金(IMF)の支援を受けることになった。インドネシアでは政治的混乱も起きた。
現在、資金流出で通貨が下落している国々は、アジア通貨危機のときと同様、大部分が経常収支赤字国である。
■当面は慎重な投資が必要か
通貨安に陥っている国々への投資は、当面「様子見」が望ましい。「安いので買い時」と考えがちだが、先々が見えない状況ではリスクが高い。万が一、通貨切り下げやデフォルトとなれば、投資分も打撃を受けてしまう。
ただ、新興国がIMFの支援を支援を仰ぐようなことになる可能性は薄いと思う。各国とも外貨準備は十分だし、米国経済も不透明感を完全にぬぐえたわけではなく、一気に「出口」とはいかないからだ。
基本は楽観しつつ、ここ当面は、海外への投資に際しては十分な検討が必要だろう。
(編集部)
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