【年末年始オススメ映画】 日本よ、これが真のスーパースターだ!製作費150億円の荒唐無稽マサラムービー 『ボス その男シヴァージ』


 クリスマスに忘年会や大掃除、年越し・お正月と、イベントが多い季節、それが年末年始。こんな時にこそ観ておくべき映画を、MOVIE ENTER編集部が厳選してご紹介する「ゆく年来る年、コレだけは見ておけ!映画」特集がスタート。第1回にカルト映画のフジモトが選んだのは、ハリウッド大作以上の巨額の制作費で作られたインド映画『ボス その男シヴァージ』。年末年始にふさわしく、特別プレゼントもご用意したので、最後まで見てね。※プレゼント募集は終了いたしました。

『ボス その男シヴァージ』

 アメリカで大成功を収めた実業家シヴァージがインドに帰ってきた。彼は貧しい人々のために、無料の病院や学校を建設する。先にそのビジネスに投資していた悪徳企業家アーディセーシャンは裏金を使って彼の事業を妨害し、やがて破滅に追い込む。シヴァージは同じく裏取引を繰り返して彼に対抗するが、私腹を肥やす事はせず、美女タミルと結婚しシヴァージ基金を設立、慈善事業を続ける。そんな時、シヴァージは逮捕されてしまう…。 (作品情報へ

これはボリウッドムービーではない、ラジニカーントであるッ!

 皆さんはラジニカーントという人物をご存知だろうか。日本では『ムトゥ 踊るマハラジャ』で一大ボリウッド(ハリウッド+ボンベイの造語)ブームを巻き起こした、インドの大スター俳優である。本国インドでも彼の出演する作品では、オープニングに必ず「スーパースター ラジニカーント」のクレジットが流れるという(本作でも登場)。そんなスーパースターは、現在なんと御年64歳。本作は、彼を主人公としたボリウッドムービー…ではない。何百人のダンサーが一糸乱れぬ舞踊シーンを披露したり、荒唐無稽なストーリーが展開するのはいかにもボリウッド的である。だが本作の一番の魅力はボリウッド的要素ではなく、ラジニの異様な存在感だ。30歳程度の扮装で登場、アメリカ帰りの実業家という設定にも関わらず、マトリックスばりのワイヤー&カンフーアクションをこなすぶっとびぶり。彼が拳を振るうだけで、数十人の屈強な男が吹き飛び、ムチムチボディの美女もその魅力にイチコロ。ダンスシーンでは当然の如くキレキレのダンスを披露し、ラップまでこなす活躍ぶりである。スターならではのオレオレな設定だが、これが単なるプロモーションビデオ的な映像で終わらないのが本作の、いやラジニの凄さ。例えるなら“10倍速の動きとキレで、マツケンサンバを踊り狂う松平健”といったところ。とんでもない超老人なのである。ときおりバックダンサーと動きがズレたり、走り方がちょっとおじいちゃんだったりするラジニだが、それもご愛嬌。VFX技術やスタントの力を借りているとはいえ、年齢を超越する彼のパワーに圧倒されないものはいないハズ。もはや本作はボリウッドムービーの枠を越えた、ラジニカーントという新しい映画のジャンルである。

製作費150億円(物価換算)は伊達じゃない。世界レベルの破格のスケール!

 本作の製作費は78カロール(当時約21.8億円)、ラジニカーントのギャラ20カロール(約5.6億円)、興行収入が160カロール(約44.8億円)。物価換算すれば製作費は約150億円となり、ハリウッド大作以上の破格の規模である。そのスケール感は伊達ではない。度々登場するダンスシーンでは、豪華絢爛なセットや衣装に目を奪われ、カーチェイスシーンでは、何十台もの本物の車がクラッシュする。ただ、本作のスケール感の源泉になっているのは、そういった分かりやすい部分の凝り方ではない。実は同じシャンカール監督、ラジニカーント主演の『ロボット』の方が制作費は上なのである。例えば、ラジニが白人に変身(!)するシーン。出来るだけ自然な色に見せるため、白人女性の白い肌を1フレームづつCGで移植、なんとその完成に1年の歳月をかけたという。また、ラジニが数百人を相手に戦う場面では、ワイヤーアクションが自然に見えるよう、極めて細かい処理がなされている。後に作られた『ロボット』が文字通り、ラジニロボットの超現実的な活躍を見せるために“ゴリゴリのCG”にエネルギーを注いだのに対し、本作は、あくまでラジニカーントの“生の素材”としての魅力を活かすために、制作費と労力が使われているのである。
 
 また、『ロボット』では、ミス・ワールドに輝き“世界一の美女”と謳われるアイシュワリヤ・ライがヒロインを演じていたが、本作はさらに若く、肉感ボディを持つ美女が登場。美貌とダンスの能力を認められて抜擢された本作のヒロイン、シュリヤー・サランは、世界レベルの“パフォーマンス”によってラジニの魅力を引き立てるのである。

シヴァージのマサラパワーで、この年末を乗り切れ!

 さて、本作がこれまでの日本で知られるボリウッド映画と一線を画す理由はもう一つある。それは、主人公シヴァージがダークヒーローであるということ。あらすじにもあるように、彼は人助けの為の事業を妨害され、非常に残酷な暴力や、裏取引で反撃に打って出るのである。その“毒をもって毒を制す”やり方に反感を覚え、感情移入できない方もいるだろう。しかし、これはキレイ事では済まされない、インドの現実を反映した描写なのである。劇中にも、カースト制度や肌の色による差別、庶民と富裕層の経済格差などが当然のように登場する。スーパースターであるラジニカーントも、元来あったインドのスター像“色白、イケメン、富裕層、コネあり”からかけ離れた“色黒、おっさん顔、貧困層、コネなし”という状態から実力で成功を掴んだ人物である。実は本作は、ラジニカーントからインド国民にたいする「何事もなさねば成らぬ」というメッセージなのである。自分の夢の実現であれ、女性へのアプローチの仕方であれ、(ややご都合主義に見えるが)強引にやり遂げるのが、本作の主人公・シヴァージだ。それを明確にあらわしたメッセージが、エンドロール冒頭に現れた瞬間、それまで引っかかっていた様々な違和感が解消されるので、是非エンドロールまで席を立たないで欲しい。

 思いのほかシリアスなテーマを含んだ本作であるが、それが気にならないほどに荒唐無稽な表現で楽しませてくれることは確か。特に、色白になったり、なんの脈絡もなく映画『デスペラード』の一場面を再現してみたり、挙句の果てにるつるスキンヘッドで登場する、ラジニカーント七変化は必見。上映中に歓声や指笛、踊りや拍手をしてもいい“マサラシステム”を楽しめる劇場もあるらしいので、これは是非劇場で楽しんで欲しい。何かとバタバタするこの時期、くじけそうな時はラジニカーントのメッセージを是非思い出そう。シヴァージが注入するマサラパワーで、年末進行を乗り切れ!

『ボス、その男シヴァージ』は2012年12月1日より、シネマート新宿ほか全国順次公開



『ボス、その男シヴァージ』 - 公式サイト

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カルト映画のフジモトの所見評価

【スーパースター・ラジ二カーン度】★★★★★

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