【秋映画特集2012】KY男とジャジャ馬娘の恋物語『のぼうの城』


 秋の訪れと逆行するかのような熱い“体育会系”映画をMOVIE ENTER編集部が厳選してご紹介する「秋映画特集2012 –燃える!体育会系映画-」特集。残す所あと2回となった第6回目に“映画は芸術”ハラが選んだのは、175万部を突破した和田竜のベストセラーを、犬童一心と樋口真嗣のW監督により映画化した『のぼうの城』。エンドロールで流れるエレファントカシマシの主題歌「ズレてる方がいい」をバックに、この秋を熱く盛り上げる。

『のぼうの城』

 戦国時代末期。豊臣秀吉は天下統一の最終決戦として、小田原城に兵を送る。難攻不落で知られる小田原城の支城、忍城との戦いには石田三成を抜擢。三成は2万の兵と共に忍城を包囲するが、思わぬ劣勢を強いられる。(作品情報へ

8年の歳月を費やした日本映画史上最大級の超大作

 犬童監督が本作のシナリオを最初に読んだのが2004年。その規模の大きさのあまり、企画が動き出してから2010年の8月15日のクランクインまで、実に7年の準備期間を要した。総勢2万の豊臣軍を相手に“のぼう”こと成田長親(a.k.a. でくのぼう)がわずか500騎で迎え撃つ忍城(おしじょう)を再現すべく、1年近く日本中を探した結果、日本映画史上最大級となる東京ドーム20個分の広さの巨大オープンセットが北海道・苫小牧に組まれた。工事に使用された土は11トントラックで5,000台分、合戦シーンには延べ4,000人のエキストラが集結。見所となる日本映画史上初の“水攻め戦術”ンーンでは総計約3,000トンの水が使用されたが、東日本大震災の津波被害に配慮して、当初予定していた昨年9月の公開が延期され、遂に今年11月2日に待望の公開初日を迎えた。

リーダーはズレてる方がいい

 現代の日本では、この8年間で名前を覚える暇もないほど頻繁な首相交代劇が繰り広げられ、野田内閣は発足後最低の支持率を記録する中、東京都知事を辞職した石原慎太郎氏や、日本維新の会代表・橋本徹大阪市長ら“第3極”の動向に注目が集まっている。本作で、武将に求められる智も仁も勇もないが“人気”だけはある不思議な男・成田長親を演じた野村萬斎は「“日本には今、リーダーがいない”と言われる中、“ズレてる”やつがリーダーとなって立ち上がり、困難に立ち向かうこの映画から、何か希望を見出せるのではないかと思います。」とコメント。民衆と同じ目線に立ち、共に泥にまみれる長親の姿に、いつの時代も変わらない、リーダーに求められる資質を感じさせる。

 そんな長親を支える忍城軍の猛者たちは、彼の幼馴染みで漆黒魔人の異名を持つ歴戦の強者・丹波(佐藤浩市)、その丹波をライバル視して力自慢の武功一等を豪語する豪傑・豪腕の和泉(山口智充)、戦の経験は無いが“軍略の天才”を自称する火攻めの大将・靭負(成宮寛)と少数ながらも個性溢れる一騎当千の精鋭たち。男勝りな城主の娘・甲斐姫(榮倉奈々)と、その美貌と気の強さで精神的支柱となる継母・珠(鈴木保奈美)の存在も見逃せない。対する豊臣軍は、天下統一の野望に燃える関白・豊臣秀吉(市村正親)の指示により、理知に富んだ武将・石田三成(上地雄輔)が、三成と厚い友情で結ばれ冷静沈着な大谷吉継(山田孝之)らと共に2万の大群を率いるが、戦前の予想に反して苦戦を強いられる。各員が自らの役割を果たし、一丸となって勝利へと向かう忍城軍の姿に、現代社会における組織作りについて学ぶことは多い。

一番熱い、カロリー消費ポイントはココ!

 馬に股がり剣を手に戦う迫力の合戦シーンや、怒濤の水攻め戦術、敵すらも魅了する湖上での田楽踊りなどに目を奪われがちだが、ラストまで見逃せないのは、400年前の戦国時代に生きた長親と彼に密かに想いを寄せる甲斐姫との淡い恋の行方。豊臣軍に降伏する筋書きを覆し、勝ち目のないケンカを決意したのぼうの真意や、戦いの果てに彼が下した苦渋の決断は、エンドロール後も消えることなく、切なくも爽やかな余韻を残すことだろう。公開から3日間で40万人を動員し、週末興行ランキング1位を獲得した本作、あなたも時代の目撃者となれ。

『のぼうの城』公式サイト


映画は芸術ハラの所見評価

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