インタビュー:又吉直樹(ピース)「自分に対する女心は、自意識が邪魔をしてわからないんです」


 読書好き、考えすぎ、女の子苦手……。数々の内向的な要素を併せ持ち、内向き芸人界のカリスマとして知られる又吉直樹が、映画初主演を果たした。人の心が読めるタバコを手に入れた青年の役を演じた彼も、私生活では女心がわからなくて大いに悩んでいた!?

――初めて映画の主演に抜擢されたお気持ちはいかがでしたか?

又吉:僕はあんまり芝居とか得意な方ではないので「大丈夫なのかな?」というのが最初の印象でしたね。不安の方が大きくて、監督さんとかプロデューサーの方にも「僕、演技めっちゃ下手ですよ。やめた方がいいんじゃないですか?」って相談したんですけど「又吉くんみたいな役だから大丈夫だよ」って言われて。

――素の又吉さんに近い役だったわけですね。

又吉:そうですね。「たどたどしくていい」って言われましたから。ただ、実際に撮影が始まってみるとさすがに、「もうちょっとテンション上げてほしい」と言われましたけど(笑)。

――テンションが低すぎた、と。

又吉:はい。ほんまの自然体で行ったら「もうちょっと大きい声出るかな?」と言われました(笑)。でも、本当に監督さんがすごく良い空気を作ってくれたので、現場の雰囲気は抜群に良かったです。

――実際に演じてみて、主人公の宮内正と又吉さんに共通するところはありましたか?

又吉:女性の気持ちがわからないっていうところは似てると思いましたね。宮内くんほどではないですけど、昔から女の子が何を考えているのかわからないですし。あと、めったにないことですけど、自分が女性から告白めいたことをされたときに「気付いてると思うけど、ずっと好きだった」と言われたことがあるんです。でも、僕は全然気付いてなくて(笑)。

――その予感はなかったんですか?

又吉:めっちゃ仲良い子ではあったんですけど、全然気付かなかったですね。ただ、気付いてなかったと言うのはまずいと思って「うすうす気付いてたけど」という雰囲気にしてごまかしたことはあります。女の子って「実はあのとき好きだった」とか、あとになって言ったりするじゃないですか。僕、そんな可能性は微塵も感じてないですからね。そのときに言ってくれてたら、絶対好きになってたのに、って。

――今も女性の気持ちはわからないですか?

又吉:わかんないです。コンパとかも苦手で。ずっと行ってなかったんですけど、2〜3年前に後輩とコンパらしきものをやってみたことがあるんです。そしたら、そこでずっと僕にケンカを売ってくる女性がいて。大学4年生で、就職活動をしているらしいんですけど、その試験で出た問題を僕に振ってくるんですよ。ちょっと大喜利みたいな内容で「これ、又吉さんだったらどう答えますか?」って。めんどくさいと思いながらも答えていたら、「それ、私も考えてました!」とか言われて。「こいつ、めっちゃ嫌なやつやん」と思ってたんですけど、あとから実は僕に好意を持っていたと聞かされて……。僕は「いや、なんで好意を持ってる相手にそんなことするん?」と思うんですけど、一緒にコンパに行ってた後輩からは「あの感じは一目瞭然でしょう!」って言われました。僕はもう、ほんまにケンカ売られてると思ってたんです。

――又吉さんは小説をよくお読みになると思うんですが、そこでは人間の心の機微が描かれているわけじゃないですか。そういう読書経験を積むことで、女心がわかるようになったりはしないですか?

又吉:みんなで飲んでるとき、誰が何を考えてるかっていうのはすぐに頭に入ってくるんですよ。「こいつ、退屈してるな」とか、「あの人、ずっとしゃべってないな」とか。子供の頃から、嫌われないように人の顔色ばかりうかがってきたので、それはわかるんです。でも、自分に対する女心は、自意識が邪魔してわからないんです。

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