『HEROES/ヒーローズ』最大の主人公が発狂「心を打つ、悲しげな役を演じたくなかった」


 5月21日、地球と月と太陽が一直線に並び、リング上に光り輝く天文ショーを披露した「金環日食」。日食と言えば、ダイヤモンドリングを模したロゴで、2006年から2010年まで放送され全米で社会現象を巻き起こし、日本を含む世界各地でメガヒットを成し遂げた人気海外ドラマ『HEROES/ヒーローズ』を覚えているだろうか。日食時に予期せず特殊能力に目覚めた“ヒーロー”たちが、現代社会の中でその力に翻弄されながらも、自ら進むべき道を切り拓いていく姿は、観る者に深い感動と興奮を与えた。

 時空間移動や時間を止める能力を持ち、「ヤッター!!」の決め台詞が全米で大流行した日本人俳優マシ・オカ演じるヒロ・ナカムラなど、様々な能力者たちが同作には登場したが、中でも最大の主人公と言えるのがマイロ・ヴィンティミリア演じるピーター・ペトレリだ。議員候補の兄とは対照的に、愛情深く温和な青年看護師だった彼が、最強の共感能力“エンパス”で殺人鬼サイラーを倒し、ファイナルシーズンでは“カーニバル”のリーダーであるサミュエルをも倒し、まさに世界の救世主たる“ヒーロー”になった。

 “愛情深く温和な”ピーターを4年間に渡り演じたマイロ・ヴィンティミリアが、今までに見せたことのない新境地を切り拓いたのが、6月9日(土)よりシアターN渋谷ほかで全国ロードショーとなる映画『ディヴァイド』だ。未曾有の爆撃により壊滅したニューヨークを舞台に、地下シェルターに逃げ込んだ男女9人が、暗闇の中で怯え、徐々に精神を崩壊していく姿は、人間の中に潜む欲望や本性を痛感させられる。

 食料が尽きていくにつれ、他人への不信感が芽生え、次第に疑心暗鬼になっていく生存者たち。マイロ・ヴィンティミリア演じるジョシュは、序盤では重傷を負った義弟エイドリアンを心配する優しい態度を見せていたが、親友のボビーと共に別行動をとるにつれ狂気に犯されていく。瞳は赤く血走り、髪の毛を剃り落とした姿は、もはや愛情深く温和な青年ピーターの面影は見当たらない…。

  

 実は、マイロは当初ジョシュ役ではなく、義弟エイドリアン役でザヴィエ監督から出演依頼を受けていた。エイドリアン役からジョシュ役に交代した経緯について、マイロは「エイドリアン役は『HEROES/ヒーローズ』の役ととても似ていたんだ。心を打つ、悲しげなキャラクターを4年間演じたあとで、もう一度別の作品で心を打つ、悲しげなキャラクターを繰り返し演じたくなかったんだ。監督は僕に、ジョシュのような完全に暗闇に入って行き、恐ろしいことができる男を感じなかったから、僕は初めて役を獲得するために頑張ったよ。この役のためなら、どんなことでもしようと思ったし、実際に監督を心底怖がらせた。監督は『君のこれからの2カ月を見てみたい。君は素晴らしい』と言ってくれて、それで決まりさ。」と明かしている。

 そして、役作りの苦労について「食べてないから、飢えている。12時間仕事をした後でジムに行って、とにかくトレーニングをすると、次第に慣れてくるんだ。次に、僕はイヴァン(サム役)と“この仕事が終わってから食べたいものリスト”作りに取り掛かった。それはすごく楽しくて、リストはものすごく長くなったよ。僕のイタリア人の血がパスタを欲しがっているけど、もう5週間も食べてない。糖分が抜けて、奇妙にも僕は研ぎ澄まされ、より集中しているんだ。極端な脂肪抜きダイエットが心を曇らせるんだろう。」と振り返った。

 愛情深く温和な青年のイメージを打ち破り、理性を失い狂気に犯されていくジョシュを見事なまでに演じ切ったマイロ。迫り来る世界終焉の余波を描く、次世代型リアル・シチュエーション・スリラー『ディヴァイド』。あなたはもう傍観者でいられない。

映画「ディヴァイド」公式サイト

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