『ドラゴン・タトゥーの女』主演ルーニー・マーラが来日「誤解されていると感じる経験は、誰にでもある」


 全世界で6,500万部を売り上げた大ヒットミステリー小説を、『セブン』のデヴィッド・フィンチャー監督が映画化し、本年度アカデミー賞では主演女優賞をはじめ5部門でノミネートされた注目作『ドラゴン・タトゥーの女』。2月10日の公開に先駆けて、30日にはジャパンプレミアが行われ、翌31日にはデヴィッド・フィンチャー監督と主演ルーニー・マーラの来日記者会見が行われた。

――まずは一言ご挨拶を。

デヴィッド・フィンチャー:今日はお越しいただきありがとう。昨日はジャパンプレミアで、客席から舞台まで、長いランウェイを歩いてモデルのような気分でした。モデルは久しぶりなので、少し緊張しました(笑)。

ルーニー・マーラ:初めての来日になります。まだあまり見れていないですが、東京はとっても好きです。午後少し時間があるので、街に出てみようと思います。日本に来れたことだけで嬉しいです。

――大ベストセラー、さらに一度映画化されている作品を取り上げた理由は? スウェーデン版との違いは?

デヴィッド・フィンチャー:スウェーデン版は一度しか観ていません。特に入念に観た訳ではないのですが、、強いて言うならば脚本がだいぶ違うと聞いています。何よりも自分が実際に原作を読んだときに感じたことを忠実に描くように心がけました。あえてスウェーデン版との違いをつくろうとして作った訳ではないんです。

――リスベット役を引き受けた理由は? 彼女のどこに共感しましたか?

ルーニー・マーラ:原作を読んで好きになりました。読まれた方は皆さん彼女に共感を覚え好きになると思います。彼女をどのように演じたらいいかよく考えて、私はリスベットを演じことができる・理解できている、と思ったんです。彼女には色んなかたちで共感しました。人生の中で、自分が誤解されている、除け者にされている、と感じる経験は誰にでもあることだと思います。特にその点で共感することができました。引き受けた理由は、若い女優にとってこのような役に巡り合えるのはめったにないことですし、これは大きなチャンスだと思ったからです。

  

――リスベットのキャラクター造形について、原作より魅力的に感じました。どのように独自性を出しましたか?

デヴィッド・フィンチャー:特に足したことはありません。原作の中でかなり入念に描かれています。なので2作目、3作目も読んで創っていきました。映画ではキャラクターが何を考えているかを表現することが大事だと考えています。ただし原作すべてを映像にするのは難しいので、シチュエーションをいくつか選んで、その中でリスベットだったらどのように振舞うかを見せることで、観客にはそこから感じてもらえるようにしました。足したというよりも、引いて、排除していく作業でしたね。まるで砂金をふるいにかけてを金だけを残すように、彼女の光り輝く部分を残すようにしました。このようにヒントを提示していくのは、クリエイトというよりも解釈した、という方が近いかもしれませんね。

ルーニー・マーラ:今回のキャラクターづくりはすべてコラボレーションでした。監督、衣装デザイナー、プロデューサー、全員と話をさせてもらって、衣装からアイテムまですべて決めていきました。原作からのイメージが基本です。

――スウェーデンにこだわったのは、原作のどの部分に印象を受けて? またスウェーデンでの長期撮影の苦労は?

デヴィッド・フィンチャー:他の街はまったく考えられませんでした。原作で描かれているように街がキャラクターにもたらすものはあまりにも大きい。それにとてもスウェーデンっぽい物語です。さらにはなんといっても原作がスウェーデン舞台にしていて、あれだけヒットされているんだから、映画も見習おうと思いました。ストックホルムというのは独特のデザインをもった街です。街のもつ雰囲気を作品に取り込むことができたと思っています。電車のシーンもそうですし、ラストシーンのミカエルのアパートの下にある石畳の道はとても美しいショットが撮れました。あとはなんといっても寒さですね。皆さんには作品を観ていても、スウェーデンの凍てつくような寒さを感じていただけるかと思います。

――今回はレッド・ツェッペリンの「移民の曲」、『ソーシャル・ネットワーク』ではビートルズの「Baby You're a Rich Man」を使われていました。世界的に有名な曲を起用する理由は?

デヴィッド・フィンチャー:これまで世界的に無名の曲もたくさん使ったこともありますが(笑)、今回はたまたまスウェーデンをロケハンをしているときにレッド・ツェッペリンのアルバムがかかっていたんです。ふと思ったのがあの曲を女性のボーカルで歌ったら面白いんじゃないかというインスピレーションが沸いたんです。『ソーシャル・ネットワーク』の「Baby You're a Rich Man」は相談しながら、あの場面ではパーフェクトだと考え決めました。インスピレーションなのでなんと答えるのは難しいですが…今回の作品ではエンヤの歌も使用していますが、それは殺人のトーンを創りあげるのに良い曲じゃないかと思ったからです。少なくともABBAよりは合っているかと(笑)

――『ソーシャル・ネットワーク』のときは冒頭シーンを100テイクくらい撮ったと伺いました。今回は?

ルーニー・マーラ:監督はすべてのシーンでなんども撮り直す手法をとられるので、いちいち数えていません(笑)。

デヴィッド・フィンチャー:54テイクがあったよ。

ルーニー・マーラ:そもそも数えていないし、それが当たり前だと思って演技をしていたから。『ソーシャル・ネットワーク』の100回テイクは9ページくらいある長いシーンだったので、特別なことではありません。

デヴィッド・フィンチャー:今回テイクを重ねたのは、特に天候によるところが大きいんです。たとえば夜橋に向かっていむかってリスベットがバイクを飛ばすスタント・シーンでは、道路が凍りつかないように火を使って溶かしながら撮影したり。何回撮ったか数えてられないし、とにかく1週間くらい撮っているような気分で撮っていましたよ。

――ダニエル・クレイグの起用についてや、共演してみてのエピソードは?

デヴィッド・フィンチャー:ダニエルは一番最初にキャスティングした男優。彼こそミカエルだと思いました。ボンド以前から彼のことを知っていて、いろんな役を演じられる才能豊かな俳優であることはもちろん知っていました。ミカエルの男らしさ、いろんな女性と友情関係を築けること、うまい聞き手であること、そしてウィットに富んでいることを重視して、それらを全部網羅しているのはダニエルしかいないと思い起用したわけです。

ルーニー・マーラ:彼と一緒の仕事はアメイジングな経験でした。素晴らしい才能豊かな俳優であることは間違いないですが、それに忍耐強い人で、俳優としていろいろ教えてくれました。初めてのことにトライするのに、彼に勝る人はいません。ユーモアのセンスもあって、一緒にいて楽しい方でした。

――ファッション・アイコンとしても注目されている今の気持ちは?

ルーニー・マーラ:世間からそのように見られていることはあまり考えないようにしています。そのようなことに注意を払うことなく、自分なりの生き方を続けています。

――印象的なオープニングロールでしたが、どういうインスピレーションで?

デヴィッド・フィンチャー:前提として良い曲があったので、これをタイトルシークエンスに使おうと決めました。その後ティム・ミラーに、リスベットの悪夢を映像化してほしいと依頼しました。それは抽象的でも、滑稽でもいい。体からいろんなものが出てくるようなもの。黒い漆がにじみ出てくるようなもの。とお願いしました。彼からは75個くらいのアイディアを出してもらったのですが、そこから25個選び、8週間で創ってもらいました。もっと時間をかけたかったですね。

――次回作もフィンチャー監督が?

デヴィッド・フィンチャー:まずはたくさんの人に観てもらわなければ2作品3作品と続けられません。すごく大勢の人に観てもらわないとね!

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