オンライン海賊行為防止法(SOPA)はすでに実施されている!【デジ通】


ウィキペディア(Wikipedia)やGoogleによる、オンライン海賊行為防止法(SOPA:Stop Online Piracy Act)への抗議が強まる中、ストレージサービスの大手「Megaupload」に米司法省と連邦捜査局(FBI)の捜査が入った。これは何を意味するのだろうか。

■「札付き」の捜索なのか?
米司法省と米連邦捜査局(FBI)は1月19日、オンラインストレージサービス会社「Megaupload」を捜索、関係者7人と企業2社を、著作権侵害などの疑いで起訴した。創業者など3人はニュージーランドで逮捕され、現在、Megauploadには接続できない状態になっている。

同社は香港に登記された企業だが、往々にして、著作権付きコンテンツの無断アップロード先として悪用されてきた。訴状によると、Megauploadは有料会員から1億5000万ドル(約116億円)、広告などで2500万ドル(約19億円)、合計1億7500万ドル(約135億円)以上の利益を、著作権法違反のコンテンツのアップロードを放置することで上げていたとのこと。

この意味では、米当局の行動は当然のことだと思える。

■十分な警告はあったのか?
問題の第一は、この捜索がMegauploadへの十分な警告措置を前提として行われたかどうかである。著作権違反コンテンツに対しては、著作権保有者から掲示当事者(サイト運営企業など)への通告と削除申請に基づき、運営者が削除する限りにおいては法的措置は取られないのがふつうである。SOPAが施行されれば、これらは政府の専管事項となるが、現在は、著作権保有者の申請が優先されるのが建て前のはずだ。

Megauploadがどのような対応を取ってきたのか、著作権保有者がどの程度の態度をとってきたのかは、各種報道を見る限り、まったく明らかではない。もしかすると、Megauploadは「知らぬ存ぜぬ」の態度を続け、著作権保有者と米当局は業を煮やしていたのかもしれない。

それにしても、今回の捜索のタイミングは「できすぎている」。これが第二の問題である。

■ストライキへの報復?
今回の捜索は、ネット関連企業・団体による大規模な抗議行動の翌日という、あまりにできすぎたタイミングであった。

この抗議行動では、Wikipedia英語版がサービスを停止しただけではない。GoogleはトップページにSOPA反対サイトへのリンクを追加、Twitpicロゴには「ストップ検閲」と表示された。Firefoxなどを開発するMozillaも、サイトで意思表示を行った。FacebookやTwitterも、「反対」の意思を表明している。

米当局の行動は、さながら、ネットに広まった抗議行動への「反撃」と言えるものであった。米国の、SOPAに対する断固たる決意を示すものとも言える。むしろ、政府当局が著作権法違反を理由に一サイトの閉鎖に踏み切ったという意味で、SOPAはすでに「実質化されている」と言えないこともない。

■ミッキーマウス法の呪縛
Googleなど、米国経済を支える名だたる企業が「反対」しているにもかかわらず、なぜ、米当局はSOPAを先取りしたような態度を取るのか。

米国は膨大な著作権を有しており、これを保護し、世界からライセンス料を取っている。以前は、著作権は著作者の死後50年間であった。だが、米国で1998年に制定された著作権延長法によって、1978年以降に発表された作品については70年間、法人著作の場合は95年間にわたって保護されることになった。日本などはこれに追随し、50年であった期限を70年に延長した。延長の背景は、1928年に発表された「ミッキーマウス」の著作権切れを前に、ディズニーが延長のためのロビー(議会への働きかけ)活動を行ったためであるとされている。

このため、延長された著作権法は、「ミッキーマウス法」とも呼ばれている。

■米国の収益源
著作権(知的財産権)は、米国の重要な収益源である。

日本の場合、知的財産権の使用サービスに伴うライセンス料に該当する、著作権等使用量と類似の工業権・鉱業権使用量は、年間2兆円を超える規模である(2009年)が、米国はこれをはるかに超え、4兆円を超えている。この金額は、年間の米国の貿易赤字額である5〜6兆円には及ばないが、相当な額であることは間違いない。この収入が減れば、米国経済は、現在以上の苦境に陥らざるを得なくなる。

結論を言おう。SOPAが法律として制定されるかどうかは分からない。仮に制定されないにしても、SOPAの「実質化」は進む。それなしには、米国経済が成り立たないからである。さらに前回の記事で述べた通り、否応なしに、日本はそれに巻き込まれるのである。

大島克彦@katsuosh[digi2(デジ通)]

digi2は「デジタル通」の略です。現在のデジタル機器は使いこなしが難しくなっています。
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