スマホ時代突入の今が最後のチャンス!パナソニックの海外進出が期待できる理由【世界のモバイル】


パナソニック モバイルコミュニケーションズは2012年から海外市場へ本格的に展開すると発表した。まずはヨーロッパ市場に参入し、機種を増やしながら販売数を引き上げていく予定だという。日本メーカーの海外進出はこれまでもほぼ"全滅"状態が続いていたが、果たしてパナソニックに勝算はあるのだろうか?

パナソニックが掲げた目標の販売台数は2012年中にヨーロッパで150万台。仮にヨーロッパ四カ国で販売するのであれば、各国で1日あたりざっくりと計算して約4000台だ。そして2015年には海外で900万台、国内で600万台の合計1500万台を目標にしているという。

調査会社Gartnerの報告によると、スマートフォン市場は右肩上がりの成長が続いており、2011年には4億7000万台、2015年には11億台に販売数が拡大すると見られている。そのうちAndroid OSは2015年には5億4000万台でマーケットシェアのほぼ半分を占めるだろうとのこと。パナソニックの数字は2015年にスマートフォン全体で約1.4%、Android OSの中でも約2.8%と、かなり低いシェアを目指している。だが十分実現できると筆者は見ている。

携帯電話のメーカーシェアは、ここ数年10位以下の「その他」が数を伸ばしている。2012年第3四半期には、その他メーカーの販売台数は約1億5000万台で、シェアは33.8%(Gartner調査)。2年前の2009年同期は約7500万台、24.6%(同)であったことと比較すると、この2年で台数は2倍、シェアは1.4倍も拡大している。これはそれだけ多くのメーカーが市場に参入しやすくなったということであり、消費者の製品選択枝も広がりを見せているのである。ここ数年はDELL、Acer、ASUSなどPC系メーカーのスマートフォン参入も目立っている。
異業種からのスマートフォン参入も目立っている

とはいえこれまで日本メーカーの製品は海外で評価を受けた製品は少なく、結果として参入と撤退を繰り返してきた。その最大の理由が「日本の製品はハイエンド、海外はハイエンドを要求していない」という意見が多くあげられてきた。しかし海外でもハイエンド製品を好む消費者は多く、海外で売れなかった理由は、日本のハイエンド製品がターゲット層を明確にできなかったからだろう。

海外市場では、メーカーはエントリーモデルからハイエンドまで、ターゲット別に様々な製品を作り分けて市場に投入される。一方、日本では全てがハイエンドという特殊な市場となっており、日本製品は高スペックでありながらもターゲットは一般消費者なのだ。しかしそのような製品を海外の一般消費者層は購入しない。ましてや若者が毎月数万円を携帯料金につぎ込み、それを親が払うという課金システムも海外には無い。海外の利用者から見れば、若年層を狙った製品なのに価格が高い、そんなバランスの悪さだけが日本製品で目立っていたのだ。

その一例が富士通がこの夏に中国市場に投入した「F-022」だ。ファッションブランド「Folli Follie」とコラボ、人工ダイヤを埋め込むなど20-40代の女性を狙った製品だった。販売価格は約5万円。しかし中国のニュースサイトを見ても、この製品の評判はほとんど見られない。なぜなら中国でも女性たちの興味はフルタッチスマートフォンに移っており、同じ値段を出すならiPhoneやGalaxyなどを買っているのだ。しかも折りたたみスタイルの端末はLG電子や中国メーカーがデザインがよく、価格も1-2万円台で若い女性でも十分手の届くレンジの製品を多数出しているのである。

すなわち日本で売れた製品だからといって、同じ感覚で海外市場に製品を出しても成功するわけではない。ましてや女性向け製品となれば、ブランドの力も重要になる。LG電子や中国の女性向け端末メーカーは自社のブランド力を上げることに注力を続けてきているのだ。

一方、海外の有名ファッションブランドの製品が提供されたとしても、そのメーカーが携帯電話メーカーとして"無名"であれば消費者は購入に二の足を踏んでしまうだろう。海外で日本メーカーの製品が売れないのは「海外市場が遅れている」「海外市場がハイエンドを要求していない」という、定説のような理由ではないのだ。

では、パナソニックに勝機は、どこにあるのだろうか。

まず日本の端末市場が大きく変わったことにより、グローバル視点の製品開発が日本メーカーにも求められるようになったことだ。日本でヒットしているiPhoneやGalaxyシリーズは「海外でも日本でも通用する」製品であり、日本人向けに開発された製品ではない。これまでのfeature^Phoneでは、日本の消費者は日本メーカーの製品が最高と感じていた。だがスマートフォンでは、海外メーカー製品より性能・操作感で劣る日本メーカー製品も多くあるのが現状だ。

「全部入り」で差別化をしている製品もあるが、このタイプの製品は日本国内では通用しても海外では売れないだろう。今の日本市場が、ライバルであり優れた手本でもある製品が海外メーカー品となったことで変わったことは、海外メーカー製品に打ち勝つ製品を作れば、それはそのまま海外市場でも十分勝負することができる製品となることだ。

さらに、これまで日本メーカーが次々と搭載してきた機能や性能が、海外メーカーには無いものとして差別化を図る切り札にもできるだろう。たとえば防水機能は海外メーカーはほとんど搭載されておらず、スポーティーな外見の製品など一部に採用は留まっている。海外の消費者が防水機能をあまり必要としていないのも実情だが、雨季の長い国などではスマートフォンに必須の機能として売り込むこともできるだろう。製品のデザインも日本メーカーの特徴をうまく盛り込めば、これまでにはない差別化として大きな要素となる。
スマートフォンシェア1位のSamusng電子。常に10モデル前後を販売している

後は端末メーカーとしての認知度をどれだけ上げられるかがポイントだ。家電メーカーとしてのパナソニックのブランド力は、今では韓国や中国メーカーに押されて厳しい状況にある。そのためスマートフォンを1-2機種出しただけではマイナーメーカーとして認知されて、そのまま終わってしまうだろう。そのため毎月は無理としても、2-3か月に1-2機種の新製品を投入して認知度を上げることが必要だ。

日本市場のようにハイエンドだけを出し続ける必要は無く、ミッドレンジやデザインモデルなど製品を縦横に展開していけば製品ラインの拡充は十分実現可能だろう。

ブランドのコラボレーションやカラバリなどは、日本メーカーのもっとも得意とするところだろうから、毎月のように新色モデルを投入する、といった遊び心のある製品展開も効果はあるだろう。こうしたことからパナソニックの海外展開には大きな期待が持てそうである。

山根康宏
著者サイト「山根康宏WEBサイト」

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