カメラを片手に散策する、東京リラックスゾーン vol.6


vol.6:都電が走る懐かしの風景に出会える、雑司ヶ谷〜早稲田
Camera;POLAROID SX-70、SLR680/Film;PX 70 COLOR SHADE、PX 600 SILVER SHADE UV+



専用の線路を走る場所がほとんどではあるが、東京には都電荒川線と東急世田谷線の2つの路面電車が走っている。路面電車のある風景は、とてものどか。実際にそんな風景を見て育ったわけではないのに、心の原風景のような錯覚に陥る。今回は、そんな郷愁に浸りたくなり、都電荒川線が走る雑司ヶ谷〜早稲田を散策してみた。

使用するカメラは、多くのアーティストに愛されたインスタントカメラの名機「SX-70」。ポラロイド社の純正フィルムは製造中止となっているが、Impossible Projectが製造工場を買い取り、新たに「Impossibleフィルム」を製造・販売している。往年のポラロイドフィルムとは異なる優しい描写が雰囲気いっぱい。都電の走る風景を印象的に切り取ってくれた。


散策のスタート地点はJR目白駅。目白通りを山手線の内側方向へと歩いて行くと、早稲田方向から学習院大学横の坂道に沿って走る都電荒川線と交差。荒川線が明治通りの街路樹の中を通り抜けてくる様はとても絵になるものの、至近の荒川線雑司ヶ谷駅周辺はこれといって何の特徴もない。ところが、雑司ヶ谷駅を、目白通りを背に左に折れると、そこには鬼子母神堂が姿を現し、コンクリートの町から一変、昭和の面影を色濃く残した区域が出現する。

この日は、折しも毎年10月16、17、18日に開催されている「御会式(おえしき)」の真っ最中。参道には露天が立ち並ぶ光景は、まるでタイムスリップしたかのようで、先ほどまでの雑居ビルが並ぶ風景とのあまりの大きなギャップに言葉を失ってしまう。地元の方でない限り、明治通りのすぐ奥にこのような世界が広がっているとは想像できないだろう。

今回は御会式のために賑わっていたが、いつもの鬼子母神は池袋のすぐ裏手とは思えないほど静かな一画、参道には古い家屋をリフォームしたオフィスやカフェもあり、外回りの最中などにホッとひと息つくには絶好の場所だ。ちなみに、鬼子母神堂の由来であるが、室町時代に清められたご尊像を安土桃山時代の1578年に納められたものとされ、現在の本殿は1664年に建立されたそうだ。安産・子育の神様として知られている。


【左】目白通りから見下ろす都電荒川線。(Camera:POLAROID SX-70/Film;PX 70 COLOR SHADE)【右】雑司ヶ谷駅のすぐ奥に現れる、鬼子母神堂への参道入り口。(Camera:POLAROID SLR680/Film;PX 600 SILVER SHADE UV+)

【左】御会式で賑わう鬼子母神堂境内。(Camera:POLAROID SX-70/Film;PX 70 COLOR SHADE)【右】境内には昔懐かしい駄菓子屋さん、甘味処などがある。(Camera:POLAROID SX-70/Film;PX 70 COLOR SHADE)




【左】鳥居が立ち並ぶ武芳稲荷堂。(Camera:POLAROID SX-70/Film;PX 70 COLOR SHADE)【右】スーパーボールすくい。「失敗しても、おじちゃん見てないから、好きなだけやりなあ」と、粋なことを言っていた。(Camera:POLAROID SX-70/Film;PX 70 COLOR SHADE)

境内の大公孫樹。東京都指定天然記念物、樹齢700年の大いちょう。(Camera:POLAROID SX-70/Film;PX 70 COLOR SHADE)



素敵な名前の「面影橋」、都電荒川線の出発点・早稲田へ

出店で焼きそば、焼き鳥、お焼きを食べて腹ごしらえは万全。再び目白通りへと戻り、学習院大学横の坂を下り、都電荒川線の始発駅である早稲田方向へと歩を進めた。明治通りを下ると、荒川線は新目白通りへと直角に左折して入っていく。ここは都電の信号待ちもあり、「路面電車らしさ」を満喫できるスポットだ。

新目白通りを早稲田方向に進むと、「面影橋駅」が見えてくる。なんともロマンチックな名前。調べてみると、江戸時代から存在しており、田山花袋の小説などにも登場するそう。映画『神田川』では、主人公が暮らすアパートが面影橋のほとりという設定だという。面影橋は神田川にかかっており、川の両岸は桜並木。水面に向かって伸びる木々の枝が美しい。

面影橋の次は、荒川線の始発駅である早稲田。当たり前だが、他の駅と異なり線路が途切れていて、それもまた写真に収めたくなる風景。そういえば、編集している雑誌「snap!」の撮影イベントで、都電荒川線貸し切りというものを催したことがある。珍しい復刻版の電車を予約し、35名ほどでワイワイと早稲田から三ノ輪橋まで行き、三ノ輪橋の商店街で買い食いし、再び荒川線に乗って荒川遊園へ。貸し切りはしなくても、とても楽しいルートなので、こちらもオススメしたい。

さて、ご覧いただくとわかる通り、Impossible Projectのポラロイド用フィルムは、とても雰囲気のある描写をする。写真店、雑貨店などで販売されているので、ぜひ家にポラロイドがある方は使っていただきたい。今回使用したPX 70 COLOR SHADEはSX-70シリーズ向けフィルム、PX 600 SILVER SHADE UV+はSLR680、690SLR、600シリーズなど向けだ。撮影した時の気象条件などにより、一期一会の描写をするポラロイドは、出会いを楽しむ散策にはとてもマッチするカメラだと思う。


【左】新目白通りへの左折する荒川線。(Camera:POLAROID SX-70/Film;PX 70 COLOR SHADE)【右】面影橋のひとつ手前の曙橋からの風景。(Camera:POLAROID SX-70/Film;PX 70 COLOR SHADE)

【左】面影橋から神田川を望む。(Camera:POLAROID SX-70/Film;PX 70 COLOR SHADE)【右】都電荒川線早稲田駅。ここから三ノ輪橋までの小旅行もおすすめ。(Camera:POLAROID SX-70/Film;PX 70 COLOR SHADE)

どうでもいい情報をひとつ。ビックカメラ本社は面影橋そばにある。(Camera:POLAROID SLR680/Film;PX 600 SILVER SHADE UV+)




使用カメラ、使用フィルム

POLAROID SX-70
アンディ・ウォーホルなどを愛した伝説のインスタントカメラ。現在は中古店で購入できる。今回使用したのは、オートフォーカス付きのモデル。畳むとぺったんこになる。
※協力on and on
http://on-and-on.ocnk.net/







POLAROID SLR680
600フィルムに対応した進化版のSX-70。SX-70同様に一眼レフモデル。オートフォーカスだけでなくマニュアルフォーカスでの撮影もできる。こちらも中古商品のみ。
※協力on and on
http://on-and-on.ocnk.net/








PX 70 COLOR SHADE
SX-70用フィルム。20〜30分で発色が安定する。低温時、高温時、直射日光などにより色味は変化。撮影後はすみやかに暗所に保存するのがコツ。8枚入りで2499円。
※協力Impossible Project
http://shop.the-impossible-project.com/








PX 600 SILVER SHADE UV+
600シリーズ用フィルム。どことなくセピアがかった白黒で人気。露出量を抑えめに撮影をすると、セピアが弱まり白黒寄りの発色になる。8枚入りで2499円。
※協力Impossible Project
http://shop.the-impossible-project.com/








写真・文 鈴木文彦・矢實祐理(snap!)
エディター。フィルム写真関連の書籍・ムックの企画・執筆・撮影をメインに、イベントやカメラアイテムのプロデュースを手掛ける。主な出版物は、アナログカメラ専門誌「snap!」(インフォレスト)や「SNAPSHOT magazine」(エイ出版社)、「トイデジLOVERS」(インフォレスト)、「トイデジのアイデア」(技術評論社)など。その他,編集を担当した出版物は,「MEDICOM TOY MANUAL 2」(ホビージャパン)、「play set products all works」(朝日新聞出版)など。
snap!ブログ http://snapmag.exblog.jp/

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