【Shine! Vol.03】店頭で商品が売れているのを見ると、やっぱり感無量なんですよ(株式会社バンダイ 長谷川歩さん)
――ではまず、長谷川さんのお仕事内容を教えてください。
長谷川さん:男の子向けのおもちゃ全般を扱うボーイズトイ事業部というところで、「VooV(=ブーブ)」というミニカーの企画開発を担当しています。――ミニカーというと、どうしても「トミカ」を思い浮かべてしまいますが。
長谷川さん:弊社は元来、変身して悪と戦うカッコイイヒーローものの玩具等を得意としてたくさんの商品を出してきたのですが、男の子が「ヒーロー」と同じくらい好きな「乗り物」というジャンルで、ウチらしい商品をやりたいね、というのは以前からあったんです。すでに市場がある中にバンダイが参入するならと、試行錯誤のすえに生まれたのが、変身という弊社の得意とするギミックをプラスした、変身するミニカー「VooV」だったというわけで。――その「VooV」には企画立案から?
長谷川さん:最初の企画段階では別の担当者がいたので、車種を考えたり、どうやって変身させるかという具体的な開発業務を、私が引き継いだという感じですね。もちろん私ひとりの知識では限界があるので、他の商品と同様、社内の設計チームや協力会社の方々とブレストを重ねながら作っていますが。1Fにあるショーケースにならぶ「VooV」シリーズ。パトカーから新幹線までラインナップも豊富。
新基軸が業界でも異例の大ヒット
――なんでも昨年3月の発売からわずか1年半で累計150万個も出荷されているとか。これはおもちゃ業界でも異例のことなのでは?
長谷川さん:おかげさまで、新しい要素を取り入れてヒットを飛ばしたという部分では、各方面からも評価をいただいています。私たちも当初は「定番商品としてジワジワ売れればいいね」ぐらいの気持ちだったので、正直、こんなに短期間で結果が出たのは想定外だったりもするんですけどね。2倍楽しめるとはいえ、価格もミニカーとしては高めでしたので。――企画から発売までには、具体的にどれくらいの準備期間が?
長谷川さん:約1年くらいですね。プラスチック製のおもちゃは、カードのような印刷物と違ってまず金型を作らなければいけないので、早くても8カ月ぐらいはかかるんです。しかも、品質基準も厳しく、かなり多くの検査もクリアしなくてはならないので、そこも大変でした。今回のこの「VooV」でも、危険な壊れかたをしないよう、電車は可動部がすぐに外れるような仕様にしたりと、安全面には相当気を遣いましたしね。――だとしたら、モニターテストのようなことも当然必要になってきますよね?
長谷川さん:本社の隣に保育園があるので、そこの子どもたちに試作品で遊んでもらったり、あとは子どもをもつ社員に協力してもらったり……。実際遊んでもらうと、できると思っていたことができなかったりもして、その都度たくさん発見があるんです。――そんな苦労を重ねた商品が、予想以上の大成功。喜びもひとしおなのでは?
長谷川さん:そりゃもう、感無量ですよ(笑)社内の会議室で、「VooV」をまえにインタビューに答えてくれた長谷川さん。
<3つのアイテム>
必須アイテムは、もはや定番なAppleの『iPhone』と、無印良品の『こすって消せるボールペン』。それに、新しいアイデアを考えるときに重宝する各種おもちゃカタログの3つ。過去の自社製品や他社のヒット商品はもちろん、「いま売れている商品がたくさん載っている」量販店の折りこみチラシなども逐一チェック。日々の開発業務に大いに役立てているという。子どものための「物作り」がしたくて
――そもそも就職先として「バンダイ」を選ばれた理由は?
長谷川さん:もともと子どもが好きだったっていうのと、物づくりをしているメーカーに行きたいっていうのがあったんで、その2つを同時に叶えられるところが「バンダイ」だったという感じですね。昔は、保育園の先生に憧れたりもしましたけど(笑)――実際入社されてみていかがでした?
長谷川さん:入社するまでは、最初の2〜3年はお茶くみとかしかできないのかなって勝手に思ってたんですけど、いざ入ってみると経験の有無を問わない局面もたくさんあって、出てきた発想がよければ、若くてもどんどんやれっていってもらえる。その点はありがたかったな、と思います。――部署は当初からボーイズトイ事業部に?
長谷川さん:弊社には1人の先輩について仕事を覚える「ブラザーシスター制度」というのがあるんですが、1年目はそこでブラザーである先輩の企画していた「スペースワープ」という大人向けのおもちゃを一緒に担当していました。で、2年目からは、アンパンマンなどの未就学児向けの商品を作るチームに移って、4年目からが現在のボーイズトイ。そこから1年ちょっとして担当するようになったのが「VooV」ですね。――やはりそれまでには企画が通らなくてつらい時期もありました?
長谷川さん:新人のときはチームの課題で1日1アイデア出そうっていうのがあって、“アイデア1000本ノック”みたいなこともしてたんですけど、たとえ1000個のアイデアをひねり出しても、通るのは1個あるかないか。やっぱり企画が通らないのは精神的にもつらいですよね。――逆にうれしいときはどんなときですか?
長谷川さん:新商品発売のタイミングには、お店に行って実際に売り場に立ったりもするんですけど、そこで買ってもらった子どもたちが喜んでる姿を見るのがやっぱりいちばんうれしいですね。これまでやってきたことが「返ってきたなぁ」っていう感じがして。それに、直接反応を見ることができるし、お母さんたちの意見もじかに聞くことができて、自分にとっても勉強になりますし。社内のカフェテリアは、スカイツリーをはじめとする東京の下町が一望できる絶景スポットでもある。
<イチオシ商品>
VooVシリーズ。車が別の車に変身してしまう驚きのミニカーシリーズです。車がパトカー等に変身するVSシリーズ、建機(工事現場の車両等)が別の建機に変身してしまうVMシリーズ、電車が特急や新幹線に変身するVLシリーズ等、さまざまなシリーズ展開があります。2011年10月で全69種をラインナップ! 豊富な種類も魅力のひとつです。今年の年末にはハンドルひとつで目の前でVooVが変身してしまう驚きのプレイセットも発売予定です!写真は、VooV(ブーブ)の【VM06】日立建機 クローラキャリア(EG70R-3)〜アスタコ。写真上のクローラキャリアから、ショベルが2つ付いたアスタコ(写真下)に変形する。2011年11月19日発売予定。
・バンダイ「ブーブステーション」特設サイト
やりたいことだからストレスは溜まらない
――ところで、自分なりのストレス発散方法なんかはありますか?
長谷川さん:私、あんまりストレスがないみたいなんですよね。会社でストレスチェックをしても、いつも全然ありませんって判定で(笑)。しいて挙げれば、仲のいい同期とご飯を食べに行ったり、クルマに乗って遠出したりするくらいで。――もしかして、ミニカーを作っているだけあってクルマの運転が好きだったり?
長谷川さん:いえいえ、もっぱら乗ってるだけですよ。ただ、いまの担当になってからは、高速を走ったりするとついつい「あ、いまのクルマはまだ商品化してないな」とかは考えちゃいますけどね。――となると、特にオン・オフの切りかえを意識することもない?
長谷川さん:そうですね。やりたいことをやらせてもらえてる以上は、わざわざ切り離して考える必要もないのかなと。まぁ、「今日は家でも仕事をしよう」と思って資料を持ち帰っても、かなり切羽つまっていないと、結局やらないんですけどね(笑)通りに面した敷地内にならぶアンパンマンをはじめとした人気キャラクターたちをバックに。
当面の目標は「VooV」を定番化させること
――最後に、今後の目標を聞かせてください。
長谷川さん:短期的には、今月末からクリスマスにかけて新たに発売する、専用の「VooV」がハンドルをくるくるまわすと180度回転して目の前で変身するというプレイセット「変身!!くるくるジャンクション」を成功させること。長期的には、カテゴリーとして大きくして「VooV」をちゃんと定番化させることですね。――将来的に作りたいおもちゃなんかも、すでに思い描いていたりしますか?
長谷川さん:ゆくゆくは、子どもだけではなく、お母さんたちもうれしいおもちゃを作りたい、っていうのはありますね。――お母さんもうれしい、といいますと?
長谷川さん:親御さんのなかには「子どもにキャラクターものを持たせたくない」というような方もいると思うので、そういう方でもお部屋に置いておきたくなるような、インテリアにもマッチする、それでいて「バンダイらしい」おもちゃができたらいいな、と。――その夢の実現のためにも、「VooV」には、「VooV博」ができるぐらいがんばってもらわないといけないわけですね。
長谷川さん:いいですね、「VooV博」。そうできるよう、私自身もがんばりたいと思います。――今日はお忙しいところ、ありがとうございました!
老舗メーカーならではの確かな技術力と、若さあふれる斬新な発想力で、新基軸「VooV」を見事に大ヒット商品へと導いた長谷川さん。ミニカーの分野で「VooV」を長く愛される定番商品に育てられるか。彼女の飽くなき挑戦は、まだ始まったばかりだ……。
<プロファイル>
●Shine!ナンバー:003●名前:長谷川 歩(はせがわ あゆみ)
●会社名:株式会社バンダイ
●所属部署:ボーイズトイ事業部 ホビー第2チーム
●特徴:しゃべるスピードが遅い。
●得意技:麺類。
●弱点:あずき。
・[連載記事企画] Shine! バックナンバー
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