【編集部的映画批評】10日間で興行収入13億円超え!“猿”はどこまで行くのか


 『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』が公開2週目を迎えて、2位以下に大差をつけて興行収入ランキング2週連続第1位に輝いた。興行収益は10日間で13億円突破。観客動員数も100万人を超えている。「猿が支配する惑星の正体は地球だった」という衝撃的なラスト・シーンで名作となった『猿の惑星』の“起源”となる物語とは言え、なぜこの様なヒットとなったのだろうか。今回はその秘密に迫ってみる。

『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』

 現代のサンフランシスコ。若き科学者ウィルは、ある研究所でアルツハイマー病の治療薬の実験に没頭し、シーザーと名付けたチンパンジーを可愛がっていた。やがて知能が劇的に発達したシーザーは、地球を支配する人類を脅かす存在へと成長していき――。(詳しい作品情報へ

余計な要素もなく、飽きがこない展開

 この映画を観た後に最初に思ったことは「実にスムーズな映画だったな」ということ。猿が遺伝子実験で知性を持ってしまい、その知能がどんどん発達する。発達していくと人間と猿との違いに耐えられなくなっていき――とてもわかりやすい内容である。それに、一本の筋が通っていてブレがない。映画には、主人公を中心としたメインストーリーと脇役を中心としたサブストーリーが、混在している。この二つがほどよく絡むことで、話に複雑さと味が出てくる。しかし、あまりにもサブストーリーに力を入れ過ぎて、メインストーリーを逸脱したり、メイン以上に目立ってしまうという作品がある。他にも、観客に興味関心を引かせるために、シリアスな展開の話に無理やり“笑い”の要素を入れてしまい、興がそがれてしまうという作品もある。そういった脱線作品と異なり、この作品は、全てがシーサーという人物(猿)に関連して話がつくられているので、すっきりと楽しむことができる。それに、冒頭から俊敏な猿の動きのシーンがあったり、途中で定期的に目を見張るアクションを見せてくれたりするので、飽きることもない。どんなに美談を語った映画でも、単調なシーンの連続では眠気を誘ってしまう。

「この猿、こっちを見ていないか?」というほどリアル


 この作品の魅力の一つに猿のリアルさがあげられる。一つ一つの表情に感情が詰まっていて、スクリーンの中から猿に見つめられているような気分になる。この猿のCGを手掛けたのは『アバター』や『ロード・オブ・ザ・リング』に携わったWETA社。パフォーマンス・キャプチャーのスーツとヘッドギアを使用し、俳優の動きをCGの猿に融合させた。また、今回は、ファンタジー世界とは異なり、より現実感を出さなければいけない。そこで、猿のリアルさやロケ場所についてもこだわったらしい。そして、そんな最新技術を使って猿に魂を吹き込んだ俳優は『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラム役を演じたアンディ・サーキス。彼の動きの素晴らしさは説明するまでもないだろう。本作の監督であるルパート・ワイアットは「チャーリー・チャップリンのような存在」と彼を称えている。最高の技術と最高の演者でつくられた“猿”は、一見の価値がある。自分を育ててくれた青年ウィルを見つめるシーザーの表情には、ついつい感情移入をしてしまう。

猿と人が一緒に映像を観る上映会などユニークな宣伝活動も

 超大作ということもあり、宣伝活動にも力を入れていたようである。大手企業8社とタイアップした電車広告のジャック企画や節電効果に優れた屋外広告など、様々な展開をしていたようである。中でも一番ユニークだったものは、大分県大分市高崎山自然動物園にて実施された「猿と人の合同上映会」だろう。いくら猿に支配された惑星の物語とは言え、猿と人が一緒に特別映像を観る上映会をするなんて、前代未聞だろう。会場の最前列には、約800頭の猿の群れのボス猿専用のVIPシートを用意するなど、やり過ぎなところも面白い。猿たちも自分と同じ姿したシーザーたちの映像が映ったモニターを不思議そうに見つめていたようだ。この様なユニークの宣伝で、第一作の『猿の惑星』を知らない世代にも認知が高まったのではないだろうか。

 とにかくこの映画は“リアルさ”に尽きる。猿のCGが全く違和感なく溶け込んでいて、ファンタジーやSFと言った空想の世界と一線を画している。本当に現実でもありそうな気持ちになる。だからこそ、シーザーにも、彼を育てたウィルにも、感情移入できる。第一作を観た人は勿論、観ていない人も、このリアルに近い世界観は楽しめるだろう。そして、これはぜひ劇場で3Dで観て欲しい。クライマックスのゴールデン・ゲート・ブリッジを舞台にした猿と人間の戦いの迫力を余すことなく体感できる、

ヒーロー妄想のカンタの所見評価

現実にあり得るように思えてしまう度:★★★★★

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