カメラを片手に散策する、東京リラックスゾーン vol.2
Diana Multi Pinhole Operator
神田川にかかるアーチ状の聖橋から望む美しい東京風景
東京らしい風景は? と聞かれたとき、自然が豊かで、坂道があり、川が流れていて、という東京の特徴にとてもよくマッチする場所がある。それは、御茶ノ水駅周辺の景色。神田川が流れ、切り立った崖の上には大きな街路樹が美しく並び、その奥には格式高い建築様式の病院などがそびえる。JR・御茶ノ水駅のホームに立つと、心が少しウキウキする、という方も多いのではないだろうか。特にシンボリックなのは、神田川にかかるコンクリートアーチ状の聖橋と、緑色の鉄骨が目を引く御茶ノ水橋。駅のホームから望むのも美しいが、下車し、橋の上からの眺望は絶景だ。遠くに見える秋葉原の街並みと、総武線と丸の内線が交差する様。この風景は、小津安二郎の名作『東京物語』にオマージュを捧げたホウ・シャオシェン監督作『珈琲時候』(一青窈、浅野忠信主演)の中で、幾度となく東京を象徴するシーンとして登場しており、それを目にして以来、「東京らしさ」を感じさせる景色として心に残っている。
そんなスポットを、今回はピンホールカメラで収めてみた。カメラにはレンズがなく、針穴が開いているだけ。晴れている日であっても、1秒弱くらいシャッターを開かないといけないため、三脚を使ったり、堅い所に置いて使う必要がある。そんなゆったりとした使い方も、御茶ノ水の風景にはとても良く似合うのだ。
御茶ノ水橋から聖橋を撮影。ピンホール写真ならではの軟らかさと暖かみがある。(Camera:Diana Multi Pinhole Operator)
深い街路樹に中に見える地下鉄駅。この地形も御茶ノ水の大きな魅力。とても自然豊かな場所だ。(Camera:Diana Multi Pinhole Operator)
聖橋から秋葉原方面を撮影。わずかな距離だけ地上に顔を覗かせる丸ノ内線がJR線と交差する。(Camera:Diana Multi Pinhole Operator)
歴史的な建築物を眺めつつ、神田神保町古書店街へ
御茶ノ水駅から湯島聖堂などのある神田川対岸へと渡り、そのまま歩いて行くと、文京区方面へと抜けられる。また、神田川沿いに坂を下ると秋葉原へ。散策ルートはたくさん見つけられる地域だが、今回はニコライ堂に立ち寄りつつ、山の上ホテルを抜けて神田神保町へと向かってみた。ニコライ堂は、御茶ノ水駅から緑青をしたドーム屋根が見えるので、迷わずに行けるスポット。日本で初めてのビザンティン様式の教会建築で、1962年には重要文化財にも指定されている。教会内は撮影禁止となっているが、聖堂内は拝観することができるので、建築物に興味のある方は足を運んでいただきたい。
山の上ホテルも同様に歴史的価値が高い。今でこそホテルだが、元々は「佐藤新興生活館」という建物。GHQに接収された後、米軍が愛称として使っていた「Hilltop」から「山の上ホテル」として開業したそうだ。立地は文字通り高台の上にあり、少し息が切れるかもしれない。
さて、最終目的地の神田神保町は、言わずと知れた古書の町。現在でも100点以上の古書店があり、レトロな店舗と古書が並ぶ様は雰囲気いっぱいだし、路地も多く被写体には困らない。また、50年以上も続く喫茶店「さぼうる」、スマトラカレーで有名な「共栄堂」など、立ち寄りたい店が多いのも嬉しい。
ニコライ堂にて撮影。聖堂以外の建物もとてもクラシカルでかわいらしい。(Camera:Diana Multi Pinhole Operator)
神田神保町の路地裏にある古いゲームセンター。昭和の香りが残った風景もたくさん見つかる。(Camera:Diana Multi Pinhole Operator)
歴史ある喫茶店「さぼうる」にあるトーテムポール。(Camera:Diana Multi Pinhole Operator)
Diana Multi Pinhole Operatorには3つの針穴があり、そこにカラーフィルターを付けると、このように奇抜なピンホール写真を撮ることができる。色の付いた3つの微妙にずれた像が1枚の写真に。針穴写真も進化しているのだ。(Camera:Diana Multi Pinhole Operator)
歩くだけでなく、寄り道も楽しいのが御茶ノ水〜神田神保町
今回の散策ルートは直線距離にするととても短い。ただ、建築物や古書店など立ち寄りスポットは豊富で、お気に入りの古書店と出会ってしまうと、時間はどんどんと過ぎていく。特に、歴史、写真、アート、映画など、趣味がはっきりとしている方は要注意。それらは専門の古書店があり、思わず長居をしてしまうはずだ。使用カメラ)
Diana Multi Pinhole Operatorロモグラフィーが開発した現代版の針穴カメラ。通常の針穴写真も撮れるが、カラーフィルターを使ったストリート感あふれる斬新な針穴写真を撮ることもできる。
写真・文 鈴木文彦・利恵(snap!)
エディター。フィルム写真関連の書籍・ムックの企画・執筆・撮影をメインに、イベントやカメラアイテムのプロデュースを手掛ける。主な出版物は、アナログカメラ専門誌「snap!」(インフォレスト)や「SNAPSHOT magazine」(エイ出版社)、「トイデジLOVERS」(インフォレスト)、「トイデジのアイデア」(技術評論社)など。その他,編集を担当した出版物は,「MEDICOM TOY MANUAL 2」(ホビージャパン)、「play set products all works」(朝日新聞出版)など。
snap!ブログ http://snapmag.exblog.jp/
■関連リンク
・東京リラックスゾーン vol.1:丸ノ内線茗荷谷駅周辺の文教地区と小石川植物園