【編集部的映画批評】本物のカップルが恋愛し、地球外生命体もアレをする“愛”が詰まったモンスター映画


 地球外生命体が出てくる映画というと、地球人との交戦や友好について話が進んでいくものである。しかし、映画『モンスターズ/地球外生命体』は、なんと“愛”が詰まった映画のようである。総製作費130万円といわれる超低予算でつくられたが、規格外の内容の持つこのモンスター映画について分析をしてみよう。

『モンスターズ/地球外生命体』

 地球外生物が大量に繁殖したメキシコを訪れたカメラマン、コールダーが、上司から社長令嬢サマンサをアメリカに連れ戻すよう命じられる。しかしパスポートを紛失したふたりは、陸路でアメリカへの国境をめざすことになり、次々と危うい事態に直面していく。

映画でも実生活でも“愛”が詰まっている

 男女が危機的な状況で125キロメートルもの距離を旅したら…吊り橋効果ではないが愛が生まれるもの。まあ、映画の定番だろう。この映画も、話が進んでいくにつれて二人の関係は深まっていく。しかし、この主人公たちの愛は、作品の中だけの話ではない。実は、主演のスクート・マクナリーとホイットニー・エイブルは実生活でもカップルだった。監督のエドワーズは、リアリティを出すために、本物のカップルをキャスティングしたのだ。そして、撮影後、二人は入籍。エイブルは、「この体験をクリアしたら何でも一緒にできることがわかっていたから、撮影数ヶ月後に彼にプロポーズされたの。だから“私”のファンタジー世界では、私たちが続編なのよ!」と語っている。二人の今後の“続編”の動向も気になるところだ。また、蛇足ではあるが、この映画には他にも“愛”があることを付け加えておこう。地球外生命体が巣食う地域で、繁殖期であるということは…。地球外生命体もね…。それは、映画を観て確認しよう。

主演以外は“素人”たち。しかも、現地調達!?

 この映画、軍隊の人間やら現地人やらたくさんのキャストたちが出てくるが、実はこの人たちは、撮影の地にいた地元民で、プロの俳優ではない。しかも撮影20分前までは何も知らなかったようだ。周到な準備や計画をせずに、都度ロケ地を見つけて、その場で魅力のある物語をつくっていくという手法で、この映画は撮影を進めていったようである。主演二人に関しても、アドリブの演技が中心。現実に即したものにするために、各ステージ間でキャラクターがどう進展しているべきかのガイドラインは示されたものの、それ以外は俳優たちに任せたそうだ。時には40分もアドリブが続いたこともあったらしい。だが、そんなアドリブだらけということは、この映画を観た時に微塵も感じないのが不思議である。通常の作品だと、何となくわざとらしさを感じて、「あー、ここアドリブだな」と気付いてしまうことがある。しかし、この映画は、「木を隠すなら森の中」ではないが、ほとんどアドリブだからなのか、自然な感じである。

 大作のような派手さはないが、様々な“巧さ”がある映画。130万円の低予算の割には、軍隊や地球外生物とかが、ばんばん出てきてそこまで安っぽさはない。それに、ただの宇宙人映画とは違って、風刺も入っている。地球外生物が暴れているニュースを見てもまるで他人事の様に関心を示さない姿、地球外生物をせん滅するために空爆をする米軍の被害を市民が受けてしまって“空爆反対”のデモを起こしている姿、様々な人間模様を見ることができるのも魅力である。新しくメンズデーが始まったシアターN渋谷でも上映しているので、ぜひ観てみよう。

ヒーロー妄想のカンタの所見評価

クリーチャーの精巧度:★★

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