4×4MIMOは都心部の方が有効!UQがモバイル環境で100Mbpsを達成できた真実【ITフラッシュバック】


UQコミュニケーションズは、WiMAX 2方式のフィールドテストで、バスで走行しながら100Mbps以上でデータ通信を行った。
WiMAX 2は、2010年10月のCEATEC会場において有線接続環境で動態デモをしていた。そこでは、40MHz帯域幅を利用し、下り速度300Mbpsを超えるデータ通信を実現していたが、今回のデモは20MHz幅で行われていた。CEATECはクローズ環境だったが、フィールドテストではWiMAXで電波が使っている環境で行うため、40MHz幅で実験を行うと、実サービスに影響が出てしまうからだ。空いている周波数帯を使うしかないため、2.6GHz帯20MHz幅のシステムとなっているのだ。

今回のITフラッシュバックではUQコミュニケーションズが行ったフィールドテストの様子を振り返ってみよう。

デモで端末側として使用していたバス

KDDI大手町ビルには基地局として屋内にベースバンド、VODのサーバーなどの装置、鉄塔には4×4MIMOを実現する4本のアンテナという構成となっている。端末となるバスには、車内に移動局側の端末装置、天井には4本のアンテナを接続している。これが実験システム全体だ。フィールドテストでは、VODとして4つの映像をQOS制御しながらストリーミングで流していた。
バスの天井に取り付けられていたアンテナ

まずは、バスが止まっている静止環境での通信実験だ。今回の環境では、最大スループットが物理層で165Mbpsとなっている。実験ではIT層で評価しているが、オーバーヘッドが1割ぐらいあるため150Mbps程度となる。そのため今回のフィールドテストでは、静止状態で150Mbpsにどれだけ近付けるかが評価のポイントとなる。
150Mbpsは、エラーが全くない場合にしか実現できないため、めったに出るものではない。そのため、実際の通信速度は140Mbps程度が目安となるそうだ。今回のデモでは、150Mbpsを超えることも、たびたびあった。通信環境はいいようだ。

次は移動中のテストだ。こちらも、どのくらい150Mbpsに近い値が出るかが評価のポイントとなる。
デモのコースの中には、スループットが落ちるポイントを用意したとのこと。通信速度が落ちるのは、技術的な理由があって、それが分かるようなコースにしているのだ。その一つが皇居横の内堀通りあたりだ。ここでは、スループットが半分以下に落ちる予想されるとした。

さすがに走り始めると100Mbpsあたりまで落ちてきた。都市環境では、基地局からの電波は端末に到達するまでに、いろんなビルに反射する。その反射する電波が多いほど演算によって、電波を有効活用できる。つまり、4×4MIMOは4本のアンテナでそのような電波をうまく捕まえないと、急激にスループットが下がることになる。
周りにビルが多いと、基地局の電波は建物に反射してバスまで届く。そのときは安定して100Mbps程度の速度が出る。しかし、皇居・内堀通りでは横が皇居のため、皇居側は高い建物がない。基地局からの電波が、片側では反射しないことでスループットが落ちるとのことだった。80Mbps程度までは2×2MIMOの効果で、それ以上だと4×4MIMOの効果が出ていると考えていいとしていた。

実際、内堀通りに入るとそれまで100Mbps程度だった速度は見る見るうちに低下し、50Mbps程度まで下がってきた。4×4MIMOの効果が薄れたことを確認できたのだ。
ただし、その時点でVODを見ても、映像の乱れは確認できなかった。これはQOS制御が有効に働いているからだ。内堀通りから離れて、両側に建物がある道に戻ると、100Mbps程度まで復活した。
静止状態では150Mbpsを超えることも

フィールドテストでは、WiMAX 2の計算上の速度が実環境でも実際に出せる、移動中でも100Mbps程度の通信速度を実現できる、都市部の通信システムでは4×4MIMOの効果が非常に高いことが分かったのだ。
今回のフィールドテストでは基地局から500m範囲で実験をしている。500m程度であれば100Mbps程度の速度を維持できる場所が多いことが実験から分かってきている。そう、4×4MIMOが有効なエリアは結構広いのだ。実際の基地局は、東京などの都心部では基地局は200〜300m程度の間隔となっている。そのためWiMAXと同じように基地局を設計すれば、都心部は100Mbps程度のスループットを実現できるとした。

今後に向けた課題も残されている。実サービスを展開しているWiMAX(基地局のサイズは20リットル程度)に比べると、WiMAX2の実験で使用している基地局の設備はかなり大きい。小型化して消費電力もコストも下げなければいけない。WiMAXとWiMAX 2でインタラクティブに運用できる技術を確立しないと実サービスへ展開できない。現在はバスの速度での実験だが、時速350kmを超えるような高速移動環境での検証を進めないといけない。
これから2012年の実用化に向け、今後は、これらの課題をクリアしていかなければならないのだ。

UQコミュニケーションズ

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